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はじめまして。

初投稿となります。

拙い文章ではありますが読んでいただければ幸いです。

当然ですがフィクションです、参考にはさせてもらっている部分はありますが登場する人物、場所、事柄は実在のものとは一切関係ございません、ご承知おきください。

 ――痛ッ、あたま痛った、昨夜飲み過ぎたか・・・。

 目覚めから後頭部に激しい痛みを覚え、瞼の裏はチカチカと輝いている。それが頭痛によるものか、あるいはそれを堪える為に瞼を力いっぱい閉じていることによるかは分からない。

 頭痛から二日酔いなのだろうと察した――というかそれ以外考えられなかったが、その割に意識はスッキリとしている。寝ぼけ等も感じられず、毎日のように感じている「まだ寝ていたい」という様な欲求も湧いてこない、実のところ前日の飲酒は朝を爽快にさせてくれる作用でもあるのだろうか、そうならば今後大事な仕事の前にはむしろ酒を飲むようにしようか・・・。

 ――止めておこう、また課長にどやされるのがオチだな。

 期待交じりの自問はやはり自らによってすぐに否定される、何故ならすでに経験済だったからだ。

 入社後初めての課内でのプレゼンの前日、資料はよく出来たと自賛していたが、その意図、熱意をうまく伝えられるかという不安が募りすぎて全く眠りにつくことが出来なかった。起きる時間まであと3時間を切ったという辺りで焦りがピークに達し、今日はさすがにやめておこうと思っていた酒に手を出してしまった、がそれでも眠ることはできず結局一睡もできないままに出がけにシャワーだけ浴び出社。途中通勤電車で気絶するように寝落ちただけの睡眠で臨んだプレゼンは当然ボロボロで、さらに課長からは「酒臭い状況でプレゼンに出てくるなんて・・・」と呆れられてしまった。それから風当たりが強くなったのは言うまでもない。

 ――思い出したくもない事なのに、朝から思い出すなんて。

 自分の中で反省はしつつも嫌な出来事としてある種封印してきたような事柄、酒を飲んでも思い出さないくらいになっていたのに、なんでよりにもよって起き抜けに・・・。

 ――今日は一日テンション上げられないな・・・。

 先ほど力を籠め過ぎた影響かまだ瞼は開けられずにいた。


 ふいに花のような香りが鼻をつく、嗅いだことのない香りだ。

 自信は持てないがおそらくは・・・。

 家で使っている柔軟剤や芳香剤なんかとは違うだろうし、なにより作られた香りというよりは生花のそれに感じられた。部屋に花瓶などなければ、アパートの敷地内に花壇があるようなところでは無かった。生花の香りがする環境ではないのだが・・・。

 香りを運ぶ風が頬を伝い抜けていくのを感じる。エアコンのそれかと思うが、もっと柔らかな自然な風に思えた。

 ――昨夜窓閉め忘れたか?

 思考を巡らせながら瞼に意識をよせ開こうと試るがまだ全開にするほどの力は入らない。それでもかすかにこじ開けることが出来た隙間から強い光が目を襲い再び瞼を強く閉じる。

 ――ッ!電気も付けっぱなしか、これだから酔っ払いは・・・

 やれやれ、とおもわず自虐モードに入ってしまう、目覚めに嫌なことを思い出し自己否定的になっていたのかもしれない。冷静になって考えれば、窓が開いているために風でカーテンが揺れその隙間から入ってきた太陽光とも考えることも出来たのだろうに。

 

 ジャリッ

 ――まさか、やってしまったのか・・・

 身体を起こそうとした際に土か砂かが擦れた様な音や感触がしていままでの思考が覆され嫌な想像が過る。

 意識して周囲を弄ってみると自分の横たわっていた寝床はベッドなどではなく未舗装の地面で、少し手を延ばすと花と思われる茎や花びらのような感触、それも1輪や2輪ではなくかなり多数の。目を開けられない状態でも間違うことはなく、ここは屋外である。

 ただ酔っぱらっての二日酔いというだけではなく、路上睡眠というおまけつき。飲酒で失敗したエピソードが頭に流れてきたのも頷ける気がする。いまだ目を開けられぬまま起こした上体は力なく項垂れてしまい、顎が胸を突く。胸が二重の意味で痛い。

 ただ上体の力が抜けたのが良い方に作用したのか、強張った顔の筋肉も緩んだらしく自然と目を開くことが出来た。

 開かれた視界に飛び込んできたのは、一面に咲く青い花、その花で覆い尽くされた丘陵、丘陵の麓にある茅葺?の屋根の古民家が3棟と瓦?の屋根の古民家が1棟、菜の花群と紫のような色の花や草木の数々・・・。

 「・・・・・・ここ、どこぉぉぉぉぉぉぉっ!!!???」

 予想に反してテンションが一時的にとはいえ急上昇した。決して望んだような形では無かったが。


 思わず取り乱したがすぐに冷静さを取り戻そうとする、まずは現状の把握からだ。

 腕時計で時間を確認しようとするが・・・していない、飲んでる途中で外してしまっただろうか。ならばスマホをと上着やズボンのポケットを弄るが・・・どこにもない、これも落とした、あるいは店に忘れてきたのだろうか。時間の確認もGPSによる現在地の確認も出来ない。

 いや、なによりも鞄が無いではないか、これも落としてきたのか?

 そもそも昨日は何処で誰とどれくらい飲んだ?それをいくら考えても全く思い出せない。どんなに深酒をして帰宅時に酩酊状態だったとしても飲み始めの記憶くらいはあるはずだ。、それすらも覚えてないとか・・・。

 それにそこまで記憶をなくすほど酩酊していたのにも関わらず寝起きでこれだけすっきりしているのが不可思議だ。頭痛は今もなお続いているが、それが本当に二日酔いに寄るものだと確証は持てずにいた。

 第一ここは何処だろうか、全く知らない場所である、少なくとも近所にこんなところはない――はずである。というかこれだけの綺麗な花畑、近所にあればさすがに何か情報が入ってくるはずだ。少なくとも自分の生活圏には無いと自信をもって言える。

 そんな場所に、昨夜仕事終わりにしこたま飲んで、我を忘れて、持ち物全部落として辿り着いた?見える範囲に駅はおろか道路らしい道路もないのに?そんなことありえるだろうか?・・・いやぁ、ないない。

 ――はっは~ん、さては、夢だな!

 右手をピストルのような形にして顎に当て、キラーンッ!とポーズを決めキメ顔までしてみる、誰にも見られていないのは幸か不幸か・・・。恥ずかしくなるからツッコミが欲しいところである。

 ともあれ夢と分かればこっちのもの、やりたい放題である。ここでは二日酔いも遅刻も怖くない。朝ちゃんと目覚めるまでここを遊び倒してやろう。そして現実でも遅刻回避だ。まずは上になにかオブジェ?が見える青い花の綺麗な丘陵を登ってみることにしよう。

 その道中で夢ならではの急激なハプニングをどこか期待している自分もが居ることには目を瞑っておくことにする。


 どこかに追いやろうとした淡い期待とは裏腹に特に何が起こるでもなく、中腹を超えた辺りの少し足場の開けた場所まで来た。足場以外は全て花で埋まっているので圧巻である。自然の群生、にしては整いすぎているので人の手が加えられているのだろうか。また麓よりもこの辺りの方が舗装されていたのも驚きである。麓から見えたオブジェ――鐘があるのがその一因なのかもしれないが。

 ――それにしてもちゃんとしてるな、夢なのに

 夢と考えるとどうしても何か特異なことが起こりそうだと考えてしまう。例えば学校に向かう道を歩いていたはずが気が付くと全く知らない施設に居たり、買い物をするのにレジに並んでいるが財布を持っておらずさらには下半身に何も穿いていなかったり、敵と戦っていて武器を持っている認識なのにどこにも無かったり、そのような真っ直ぐに進めないようなことが多い気がしているが、スムーズに目的地に辿り着き少し物足りなさも覚える。くねくねとした坂道だったのでカーブを折り返した瞬間に景色が全く変わってしまっている、なんてことがあってもむしろ不思議ではない気もするのだが。


 鐘に近づき触ってみると見た目以上にしっかりしている、頑丈そうだ。逆U字型のフレームの内側に鐘が釣り下がっていて紐を引くことで鐘自体が揺れ中の棒――(ぜつ)とぶつかることで高い単音の音を鳴らす、まるで路面電車でも走りだしそうな音だった。日本の神社等で見かける鐘というよりは、西洋の教会のベルといったところだろうか、形もそれに近い。


 鐘を後にし丘陵の頂上を目指して歩く、周りを見渡せば何か見つかるかもしれないと思ったからである。道中、夢ならば飛んだり瞬間移動なんかが出来ないだろうかと昔のマンガでそのやり方を指南していた回があったのを思い出しながらうろ覚えで試してみたがどちらも叶わなかった、意識してポーズはマネてみたつもりなのだが・・・間違っていただろうか?

 それとは別に自身の背中に翼が生え、これまた自在に滑空したり出来ないかともイメージしてみたがこれも失敗に終わった。案外夢の世界も自由自在に、とはいかないもののようだ。

 そうこうしているうちにすぐに頂上にはたどり着けた。上から見下ろす青い花の群生は本当に美しく柄にもなく心が洗われるのを感じた。また視線を上げると色々と区分けされながら多くの自然が続いているのが確認できる。ここは公園か何かなのかもしれない。傍らには広く先の見通せない水たまり、潮の匂いもするので海だろうか。

 ついついここが何処なのかと考えてしまう、夢なのだから実体のない虚像空間なのだろうと思いつつも、あまりにリアルな造形、触感、匂い、それらが夢ではなく現実の場所なのでは無いかと思わせた。

 ――そういえば今のような状況、とてもリアルで、その上夢なんだと気付く夢を示す言葉があった気が・・・


 「そういう夢のことを明晰夢と言います」


 そうだ、明晰夢!いままで話だけは聞いたことがあって楽しそうだと思っていたけど、いざ体験してみると思ってたのとは違う感じだな。

 ――ありがとう、教えてくれたかわいい声の人・・・

 心の中で謝意を伝えながら違和感に気が付く。ここに来るまでの道中人影は見ていない。多少陰になるところがあるとはいえ隠れられるような場所もない。何より自問をしただけで疑問を声には出していなかった、それなのに返答が来たことが不思議でならなかった。

 ただ、声は格別に可愛かった。


 「いえいえ、どういたしまして」


 特に気配や足音など感じることもなく、先ほどよりも近い位置から声が聞こえ、身体がビクッと震える。かわいい女性の声でこれだ、渋い低めのおじさまの声とかだったら跳ね上がっていたかもしれない。ただしそういう声優さんは嫌いではない、むしろ好き寄りである。

 驚かされはしたが声のした場所が近かったこともあり今度ははっきり位置を特定できた。

 真後ろからだった。

 意を決して振り返ってみると、そこには・・・確かに人は立っていた、がそれが女性かどうかは見た目だけでは判断できなかった。なぜなら恰好があまりにも異様で尚且つ顔もボディラインも隠れていたからである。声は間違いなくかわいい女性なのだが。

 それにしても

 ――フード付きの黒衣のローブ、まるでファンタジー物の悪役じゃないか、やっと夢らしくなってきただろうか?

 毒リンゴなどを持っていると似合いそうな風貌だったが、深く被られたフードのせいで顔の大半が隠れてしまっていて拝むことは叶わない。かすかに口元が見えるか見えないかだが、たしかにあごのラインなどをじっと見れば女性のそれに見えなくもない。

 というかこれだけ深くフードを被っていてちゃんと前は見えているのだろうか、そんな疑問が浮かんでくる。訝し気に顔をじっと覗き込んでいると、わずかに微笑むように口元が動き、かすかにだが唇が見えた、やはりというか女性のそれだった。


 「ただしこれは明晰夢では・・・ここは夢の世界ではありませんよ、広里海運(ひろさとかいうん)さん。」

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