2.新生活
家と家族を失った俺には、王家からの援助が与えられた。具体的には金貨十枚と家だ。
金貨十枚と言えば俺が背負っている借金のほんの百分の一になるわけだがまあ正直有り難い。そして我が新しき城は日本でいう一般家庭の二階建て住宅サイズ。立地は王城から一番遠い第三壁と第四壁の間の区画の北側で外壁に近く日照時間が短いなどの理由から一番地価が安い地域だ。王国貴族としてこれで良いのかと問いかけたくなるが、与えてくれるだけ有り難いと思えということだろう。
今日からここにユキノと二人きりの新生活が始まるわけだ。他の使用人はどこへ行ったかって?セルジュ以外の全員がお暇を頂きたく存じますとご丁寧に申し出てくれたので合計で金貨八枚分の退職金を支払ってやったわけよ。
残高金貨二枚。ここから生活費とセルジュの給金を支払って、さて何カ月持つだろうか。
「セルジュ。俺に仕えてくれること、感謝する。給金だがひと月銀貨三十枚だ。それで良いな?」
本来なら貴族に直接接するような使用人は最低でも銀貨七十枚はもらえるだろう。それを三十枚。さて反応は。
「十分でございます。誠心誠意お仕えさせていただきます」
不満を一切感じさせない表情と声色に俺は不気味さを感じた。