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もう一人の私へ
お元気ですか?
私の身体は膨らんでいき最早自分の身体とは思えないです。
ここにもう一つの命があるのかと思うととても不思議。
生活は変わりません。
生きていますが生きていないのです。
夫は私を人間だと思っていません。
父も兄も祖父も母ですらそうでしょう。
でも希望はあります。
夫が私よりうんと年上だということです。
乳母も亡くなりいよいよ私には誰もいなくなりました。
貴方だけです。
私達は互いに何も知りませんが互いにとって生涯の友となったことだけは確かです。
私にとって貴方を夢想することは英雄を考えることに似ています。
自由とはそれほど素晴らしいものなのです。
貴方はもうトウキョウでしょうか?
トウキョウには何でもあると貴方は言いましたね。
私は世界の中心にいるはずなのに何もありません。
空も雲も海もありません。
ただ歳月だけが私を奪っていきます。
でも負けません。
貴方を思うと強くなれます。
遠い星にいる貴方が今日も自由に世界を飛び回っていると思えば、それがどれほど私を慰めてくれるでしょう。
貴方の名を何度も唱えます。
最早呪文です。
袖のない服を着た貴方を思い出します。
私とは異なる肌の色がとても眩しかったことを。
また書きます。
私は貴方に手紙を書かずにはいられないのです。
貴方が幸福の中にいますように。
日光に下で輝いていますように。
愛をこめて。
320年4月1日