2
エスタへ
何だか今も夢を見ていたのかと思うよ。
もうそっちに着いたよね?
貴方が帰ってからすぐお父さんとお母さんも帰って来て私には日常が簡単に戻って来ました。
夏休みも終わり学校が始まったので余計にそうです。
今では貴方がいた証拠が私の記憶だけなので私の妄想ではと思ったりもします。
写真撮っておけば良かったね。
勿体ないことをした。
忘れてしまうには惜しいので貴方とのこと書き留めて置こうと思っているけど、生憎文章を書くのは苦手です。
そもそも本を読むのも苦手だからね。
貴方はお嬢様だから本ばっかり読んでいるのかな?
外にも気楽に出られないんだもんね。
海で泳いだら良かったね。
親が決めた人と結婚させられると言ってたけどそれは辛いね。
私だったら絶対に嫌だからエスタが泣くのも無理ないよ。
何もしてあげられなくてごめんね。
一生匿ってあげようと思ってたんだよ。
どうしていなくなってしまったの?
家は共働きだし、お祖母ちゃんは足悪いから二階には上がってこれないからお盆終わってお父さんとお母さんが岩手から帰ってきても私の部屋の押し入れに隠れて、私が高校卒業したら一緒に東京に行けたらいいのになって思ってたんだよ。
東京だったら広いし、いろんな人がいて外国人もいっぱいいるからエスタのピンク色の髪も赤い目も目立たないだろうから大丈夫だと思うよ。
もしお家を抜け出せるなら来てください。
私が全力で貴方を守るから。
待っています、一緒に東京で暮らしましょう。
私は本気です。
この手紙が貴方に届いたらいいのに。
2006年9月30日
追伸
来年のプロ野球は面白くなりそうです。
高校ナンバーワンピッチャーが地元に来ます。
お父さんが連れてってくれると約束したので生まれて初めて野球場に行く予定です。
エスタにも見せたいな。
大好きです。
堺未可子