表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/2

1.冒険者になりました。








「セナ、リン、そしてラナ。お父さんな、冒険者として食っていこうと思うんだ」

「えっと、お父さん……?」

「ねぇ、それって何の冗談なの?」

「セナお姉ちゃん、リンお姉ちゃん、冒険者ってなぁに?」



 俺は帰宅するとすぐに、三人の娘に事の次第を報告した。

 湖の女神様から聖なる斧を授かったこと。世界最強の男になれば秘薬が手に入る、ということ。そして、そのためにまず冒険者になるときめたことを。

 だが、反応は以上の通り。

 特に末っ子のラナに至っては、話についてこられていないようだ。



「えーっと、うん。ひとまず、お父さんは深呼吸をして?」

「すーすー、はーっ」

「うん、それで冷静に考えてみて?」

「うーん……?」



 次女のリンに言われて、しばし考える。

 だが、話をした以上の解決策は浮かんでこなかった。



「でも、冒険者になれば今の生活より楽にもなるぞ?」

「そうじゃなくてぇ……」



 うな垂れるリン。

 そんな彼女の後を受けて、長女のセナが言った。



「あの、お父さん。一つお訊きしたいのですが、戦闘経験は?」



 戦闘経験、というと。

 つまるところ、魔物と戦ったことがあるか、ということか。

 俺はセナの言葉に対して、自信満々に胸を張りながらこう答えた。



「皆無だな! 自慢ではないが、スライムからでも逃げてきたぞ!!」

「本当に自慢じゃないわね……」



 すると、リンが呆れたように言う。

 しかしながら、このままでは話も平行線だと分かっているのだろう。娘たちは顔を見合わせて、大きなため息をつくのだった。

 そして、後方のベッドに眠る俺の母――彼女たちにとっての祖母――を見る。

 母は優しく微笑みながら、こう言うのだった。



「うん……。テクトの好きにすれば、良いんじゃないかい?」――と。



 それで、決着。

 果たして俺は病の母を救う第一歩として、冒険者となるのだった。







 ――辺境の町、オリーブ。


 その冒険者ギルドには、王都から流れた者が多く在籍していた。

 腕に覚えがある者が集っているが、一癖も二癖もあるのだ。なのでオリーブの人間からはみな、どうにも敬遠され気味、というのが正直なところ。

 俺はそんなギルドの中に足を踏み入れ、一直線に受付へ向かった。



「すまない。冒険者登録をしたい」

「ん、ルメーナのとこの坊主じゃねぇか。どういう風の吹き回しだ?」

「いやー、うん。話せば長くなるんだが――」



 受付の男性に、俺は事情を事細かに話した。

 すると――。



「あー、そうか。うん、なるほどな」

「…………ん?」



 何故だろう。

 物凄く微妙な顔をされてしまった。

 俺が意味を理解できずに首を傾げていると、男性は一枚のカードを寄越す。



「まぁ、最低ランクからだけど頑張りな」



 それは冒険者カードというらしい。

 どうやら俺は先ほどの話で、冒険者として認められたようだった。

 これで後は、依頼を受けてこなせば良いらしい。そうとなれば、早速――。



「ん……?」



 と、思った矢先だった。




「ふざけんな、俺様を誰だと思っていやがる!?」




 そんな、どこか喧嘩腰な声が聞こえてきたのは。

 声のした方を見ると、そこには――。



「ご、ごめんなさい! でも、これは確かにボクの集めた素材で……」

「うるせぇな! てめぇ如きが、こんなに集められるわけないだろ!」

「本当です! 信じてください!!」



 継ぎ接ぎだらけの服を着た少年を足蹴に、大声で怒鳴り散らす男性の姿。

 周囲の人々はどこか呆れたように。そして、興味なさそうに見ていた。

 どういうことだろう。だが、俺には気になって仕方ないことがある。


 だから――。



「おらぁ……って、なんだお前は?」

「あの、すまない。一つ、良いだろうか?」



 彼らの間に、割って入った。

 そして、首を傾げながら男性にこう注意する。






「大人が、子供に暴力を振るうのは駄目だぞ?」――と。






 周囲が一気に静まり返った。




「…………は?」

「どう考えても体格差がある。子供相手に本気で殴る蹴るをしては、大怪我に繋がる場合だってあるだろう? それに、仮に間違いを犯したのが子供でも、暴力で解決するのは駄目だ。どこが駄目だったのか、ちゃんと話し合わないと……」




 どうやら、何故に自分が注意されたのか分かっていないらしい。

 俺はそれを察して、懇切丁寧に語って聞かせた。

 すると、




「ぶっ……あっははははははははははははははははは!!」

「む……?」




 男性は、野太い声で大笑いを始めたのだった。

 俺はその様子を見て、また首を傾げる。そうしていると、



「とんだ間抜けがいたもんだな! いいか、ここでは俺様がルールなんだ!」

「自分がルール? いや、それはおかしくないか」

「うるせぇな、そうなっているんだよ!」

「ふむ……?」



 男性が言うので、俺は後方に控える少年に訊ねた。



「……と、言っているが?」

「違います! この人は、ボクの手柄を横取りしようとしてるんです!」



 こちらの問いに、涙目ながらも少年はそう答える。

 彼の様子を見る限り、嘘をついているのは大男の方だ、と感じた。



「やっぱり、そちらの言い分が通らないようだが……?」

「ふん……! だったら、どうするってんだ?」

「そうだなぁ……」



 男性がどこか試すように言うので、俺は真剣に考える。

 その結果、出てきたのは――。



「あー、そうだな。これがいい」

「あん……?」



 俺は背負っていた斧を手に取り、構えた。

 そして、男性にこう告げる。



「地域の子供を守るのは、大人の役目だ。だったら――」



 努めて、大真面目に。





「俺がお前を、撃退する!」――と。





 


面白かった

続きが気になる

更新がんばれ!



もしそう思っていただけましたらブックマーク、下記のフォームより評価など。

創作の励みとなります。



応援よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ