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私を取り巻く環境の変化 3

 

「まず、我々竜人族はリセの知る通り人の姿と竜……ドラゴンの姿を持つ。先程俺が見せたのはその一部の姿を解放したものだ」


 あの翼で宙を浮いた、あの姿……!

 一部の姿を解放することもできるんですね……すごい!


「そして、我ら竜人族は……強い女を妻とする……!」

「…………」

「リセは俺を跪かせ、倒した。リセこそ俺の妻に相応しい。いや、俺は負けた。俺を君の夫にしてくれまいか!」

「え! い、いえあの! あれはたまたま、偶然で……! わざとではなくて!」


 話が大きくなってません!?

 全力で手と首を振るけれど、藍子殿下は「そんなことはわかっている!」と言う。

 わ、わかってるんですかー!


「しかし、俺はあれ以上のダメージを知らない。この先もあれ以上のダメージを受けることはないだろう。今思い出しても全身から脂汗が流れ出てくる……」

「…………」


 ほ、本当に申し訳ありませんでした……。


「そしてその痛みの記憶により、俺は完全に君に屈服したのだ。わかりやすく言うと『心が折れた』というやつだ」

「お、おおぉぉぉ……そ、そんな……」


 そんなとんでもないことに!?

 聞いたことしかないけれど、金的って、そ、そこまでのダメージが……。


「偶然とはいえ、この思いは君でなければダメだ。俺にこのダメージを与えたのは他ならぬ君。同じダメージ、あれ以上のダメージを、今後別な女性から受けたとしても俺の心を折ったのは君だからだ」


 わ、私には到底理解できない理屈——!

 これが種族の差。

 文明文化の違い……!


「一度折れた心はその相手と添い遂げることでしか保てない。つまり俺には君がどうしても必要なんだ」

「え、ええええっ!?」

「うん! 竜人族が生涯たった一人しか番を選ばないというのはそういう理由だな!」

「えええええっ!?」


 育多様が笑顔で補足するけれど、それかなりとんでもないことをおっしゃっておりませんか?

 生涯でたった一人しか番を選ばない?

 番いって、伴侶……パートナーという意味よね?

 えーっ!?


「俺の妻になってくれ。そして、俺を君の夫にしてくれ」

「……そ、そんなことを、言われましても……」


 藍子殿下は、『亜人国』の王太子。

 だから『藍子』という敬称で呼ばれているのでしょう?

 汗がダラダラと流れる。

 ……つまり、この方の妻になるということは……!


「わ、私などに王太子の妻など無理です!」

「君が妻になってくれないなら俺は死ぬ!」

「な、なんでそうなるんですか!」

「それもまた竜人族の生態っす。番に拒まれたり先立たれると死ぬっす」

「軽く言うことじゃないですよねー!?」


 采様、言い方が雑ですがとんでもないこと言ってます!


「この国の国王には許可はもらっている!」

「ええええーっ!?」


 ……今日何回「えええーっ」て驚いてるんでしょうか、私。

 そのくらい怒涛の展開すぎて頭がついていきません。


「で、でも、あ、あの、私、その……お、お世話をしている方々がおりまして……その方々にお話して許可を……」

「それを含めて、国王は『リセの判断に任せる』と言っていた」

「っ——!」


 藍子様の言葉に背筋が凍るようでした。

 多分、本当に()()()()()()()

 いえ、国の立場的にも、竜人族に逆らえないというのも、あるのかもしれません。

 しかしそれでも私のことを切り捨てる、という意味は同じ。

『彼女たち』は、なんて言うのでしょうか?

 怒り狂う?

 それとも嘲笑う?

 私というおもちゃを失うと知っても、彼女たちは平然としている?

 私が必死に守ってきた矜持など、国王陛下は知る由もない。

 知ったところで「くだらない」と一蹴するでしょう。


「……直接……お世話している方々にお話をしてきてもよいでしょうか」

「構わん。我々は明日国に戻る。その時についてきてくれれば。……それに、嫌だと言ってもいずれ必ず手に入れる」

「っ……」


 藍子殿下は本気だ。

 こんな私を、妻にするという。

 ああ、なんでこんなことに……。


「で、では、失礼いたします」


 退出してから、使用人の詰所に戻る。

 けれど、彼女たちに会わされることなく執事長の命令で荷物をまとめさせられた。

『彼女たち』はもう、私が『亜人国』に行くことを了承しているのだという。

 直接会って話したいと言っても、聞く耳を持ってくれません。


「……いいか、役に立たない無能のお前に唯一できることを教えてやる。竜人族の王子を殺すことだ」

「!?」

「まあ、役立たずで無能なお前にそれができるとは思えないがな。私がこう言っていたことを奴らに伝えても構わんぞ。我ら誇り高いエルフ族は、いつでも侵略者に備えているからな」

「そ、そんなこと……」


 ただ、彼女たちと最後に話したいと言ってるのに……どうしてそんな話になってしまうのでしょう。

 執事長や、メイドの仲間だった人たちも、すっかり私を『敵』を見るような目で見ている。

 当然部屋から出ることも許されず、私は翌日、藍子殿下たちと共にこの国を出ました。


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