ルーズ編 薬草探し
チーム名を決めて数日、二人は依頼達成に精を出していた。
チームを決めてすぐに依頼が来たが、現在のメンバーはたった二人。リリは二人で一緒に依頼に行くことを勧めたが、個人の力を高める為にも、まずは一人ずつで依頼を受けることにした。
「私は、これで行きますね。」
ルーネはゴブリン退治の依頼を受けた。最近街の人や旅人が襲われるらしく、皆困っているらしい。そんな話を聞いたルーネはすぐにこの依頼を受け、外に出ていった。
ルーズが依頼書に目を徹していると、リリが話しかけてきた。
「ねえねえルーズちゃん。本当に一人で行くの?」
「...はい。僕もルーネに負けてられませんから。」
「それなら、簡単な依頼があるわよ!はい!」
「?」
リリから貰った依頼書には、薬草探しの募集が書かれていた。
「さっきルーネちゃんが持っていった依頼に関連した物よ。このところ怪我人が一気に増えちゃってね。それで病院のシスターさんが治療に薬草を結構使うみたいなの。多ければ多いほど報酬も増えるから、早速行ってみて欲しいのよ。」
確かにルーズはまだ戦いの自信はない。まずは地形に慣れてから、魔物討伐に行くべきだと考えた。
「了解です。それじゃ、準備してから向かいますね。」
「気をつけてね。大丈夫だとは思うけど、危ないと思ったらすぐに逃げることよ。それが生き延びる秘訣だから。」
「ありがとうございます。」
ルーズは依頼人であるシスターの元へ行き、準備を進めていた。必要なアイテムは向こうで持ってくれるとのこと。ルーズは魔力の詰まったポーションを鞄に詰め込んだ。
「依頼を引き受けてくれて、ありがとうね。今は貴方しか頼れる人が居ないのよ。」
「こちらこそ、道具の用意までして頂いて、ありがとうございます。しっかり薬草を探してきますね!」
「そうそう、最近森の中で怪しい集団がいるらしいから、気をつけてね!怪我をしないのが一番よ!」
ルーズは森の中に入っていった。シスターが言うには、薬草は森の中の湖に生えているらしい。草をかき分け調べて行くが、なかなか見つからない。
「どうしよう...。何かいい手がないかな...。」
しばらく考えていると、一つ作戦を思いついた。
「そうだ!母さんの力を借りればいいんだ!」
ルーズは地面に右手を置き、魔力を込め始める。すると手を置いた地面から、小さい植物のツルが伸びてきた。
母代わりであるアルラウネ、ラウネから教わった方法である。ルーズは奈落で体を治療してもらった時に、ラウネのツルを体に移している。魔力を込めればそのツルが力を貸してくれるのだ。
「お願い。湖のある場所、分かるなら教えてくれないかな?」
ルーズはツルに優しく話しかける。するとツルは先っぽをくるくると回し、しばらくして勢い良く右に伸びていった。これで湖のだいたいの場所が分かるはずである。
「ありがとう!助かったよ!」
ルーズはツルの伸びた方向に走っていった。しかし、しばらく走り続けていたが、目的の湖はまだ見えない。予想したよりもさらに遠い場所にあるようだった。
まだ時間がかかると考えたルーズは少し休憩をすることにした。側にあった岩の上に乗り休んでいると、森の中から声が聞こえた。
「お前達には薬草探しをしてもらう。薬草の場所はこちらで調べておいたから、そこでノルマを達成するまで探しておけよ!もしノルマを達成出来なかったら、即チームを辞めてもらう。役立たずを置いておけるほど、俺達はお人好しじゃないからな。」
「は...はい!頑張ります!」
「...」
屈強な男達に囲まれながら、少女と少年が大男からの話を聞いていた。少女は魔法使いの白いローブを被っているが、杖は持っていないようだ。少年は右手に剣、左手に盾を装備していた。おそらく騎士なのだろう。やがて話が終わり、その集団はルーズの来た方向に去っていった。
「なるほど。僕の見落としがあったかも知れないから、後でメモしておかないと!...でもあっちはちゃんと調べたはずだけどなぁ。」
「よし!休憩終わり!ここからは少し飛ばして行かないと!」
休憩を終えたルーズは杖を取り出し、魔力の塊を自分にぶつけた。
「補助展開!スピーディア!」
スピード特化の魔法を自身にかけ、一気に走り出した。先ほどとは全く違うスピードで、森の中を駆けていく。
「やっぱり速い!これならすぐに湖に着くぞ!」
それからすぐに、目的の湖が見えてきた。澄んだ水が太陽の光を反射し、光っているのを目の前で確認したルーズはその光景に見とれて、
「あっ!」
足を滑らせ、湖に落ちてしまった。
「よし!目標達成!たくさん取れたぞ!これでシスターさんもリリさんも喜んでくれるといいな!」
薬草は湖の外だけでなく中にも多く生えていたため、ルーズは湖の中を必死に泳いで集め終えた。これで依頼は完了、現在は服を乾かしているところである。
「魔法展開、フレアー!」
目の前に小さな火の玉を出し、そこの側に服を干した。フレアーは攻撃用の魔法だが、ラウネとの修行で覚えたのだ。最も、パワーは全く無いので、現在は補助として使っている。
正座しながら服が乾くのを待っていると、すぐ側の茂みからカサカサと音がした。
「誰かいるの!?いるなら出てきて下さい!」
すぐに杖を構えて立ち上がるルーズ。待ち構えていると、その茂みから予想外の相手が現れた。
「ぷに!」
「...スライム?」
緑色でぷにぷにとした体を持った生き物。スライムだった。