Affair____ねえ、愛して____
気づいた時にもう遅かった。引き返すことなど出来なくなっていた。言葉にすれば消えてしまうこの関係は「最悪の結末」に限りなく近い。
私たちは本当に単純な関係。欲を吐き合う、いや吐いて吐かれるただそれだけの単純な関係。そんな単純な関係も今は深海に溺れてしまったくらいに息苦しく思える。
馬鹿な私は、それでも「ねえ、愛して」と願い続けるの。
20時14分
薄暗く誰もいないオフィスで鳴り響くキーボードの音。短く震える携帯。画面を付けてみればもう見慣れてしまった文章。
受信:K・J
本文:21時
一言で返事を済ませ、残った仕事を片付けようと携帯の電源を切る。
21時03分
着崩れてしまったスーツ姿の私はマセた街を少し期待を抱いた重い足取りでいつものところへ向かう。そしてこの沢山の人ごみの中私が選ばれたと言えば聞こえは良いのに、なんて思いながら。いつも通り少し遅れて。
10分も歩けば綺麗で不機嫌な表情の彼が見える。
「おまたせ」
「遅い」
荒々しく手首を掴む貴方に何故安心してしまうのだろう。
彼はドアを開けて、オレンジのぼんやりした照明の下に汚れていない真っ白な大きいベットに抵抗するつもりもない私を押し倒し、勢いよくネクタイを解きながら荒々しく覆いかぶさる。こんなに近いのに、それでもあなたは抱きしめてはくれない。
愛おしい唇で深く酸素を奪われる。それは取り返そうという言い訳で唇を緩めてしまう。その瞬間に私の中に簡単に入ってくる彼はそのまま雑に器用に片手で私の着崩れたスーツを剥がしていく。私の手をきつく縛り付ける左手。深く強引に重ねる唇。獣ようなその瞳。そのくせに私の身体を撫でる貴方の手はどうしてそんなにも優しいの?その手で束縛してもっと必要として。もう泣いて喘ぐ以外分からなくなってしまった。
ああ、罪に濡れても貴方が欲しい。
狂う視界。
苦しい。 だけど気持ちいい。
切ない。 だけど幸せなの。
大嫌い。 嘘。愛してる。
快楽で身体は満たせても、何故心はこんなにも満たされないのだろう。
ベッドの下の彼の携帯から聞こえる短く震える音。きっとその中には甘ったるい言葉がメモリーギリまで詰まってるんでしょ。それじゃなきゃ私の居る意味なんて無いもの。
「なに考えてるの」
その言葉で痛いくらいが丁度良いんだって気づいてしまう。身を焦がすこの綺麗で穢れた感情をヌき合ってまた時間が流れていく。
紫煙が漂う部屋の中。布団にくるまっていると貴方の男らしくて優しい手が今日初めて私の頬に触れた。
ベッドが深く沈むのを感じてゆっくりと起き上がる彼を感じ取る。布が擦れる音でまた夜が明けることなく終わってしまうことを悟ってしまう。瞼は閉じたまま。着替え終えたのか、もう一度ベッドが深く沈む。
「寝てんの?」
やめて。煙草の煙が消えていくように、他人の心を侵すように嫌でも私の中に広がってしまうから。
その感情が溢れぬように瞼を閉じたまま慣れていない寝たふりをする。
本当は寝ていないこと貴方は気付いてるんでしょう?気付いていて彼は私の額に柔らかくて優しいキスをする。「またな」と一言。もう駄目みたい。枯れ果てて痛い心に優しい水なんて与えないで。溢れぬようにと堪えていた感情がどれだけ頑張っても一粒一筋流れ落ちてしまう。
また貴方の背中を見つめながら唇を噛み締める。首筋に噛み付きたいと願うほど貴方が遠く霞んでいく。私がどれだけ「行かないで」「抱きしめて」と願っても貴方は立ち止まってくれさえしないこと。もう遅いと分かっていてものばすこの独占欲の左手は貴方の束縛を嫌う右手とは結ばれることはないこと。
どうせなら自我を失うところまで堕として。
私が愛を語るのならその眼にはどう映るの?
貴方が愛を語るのならそれを答えとするの?
何が正しいのか本当はずっと知っていた。それでも嫌だと嘆く本能が花火のように弾けて消えるまでこの痛みに触れていて。
こんなことまで貴方は知らないでしょう。
私がわざと遅れて行くのは少しでも貴方の記憶に残っていたいから。
私も知りたくない。
溜息を何度しても名前すら呼んでくれないこの関係が変わらない、
変われないことなんて。
もはや小説でも短編でもなく、詩の勢いで短い作品です。
いろんな所の歌詞やら詩やらなんやらから語彙力を引っ張り出して来ました。
物語は(https://youtu.be/x6ecTXy28H8)こちらを参考にさせていただきました。というか、もうこちらの動画のアレンジみたいな感じになってしまいました。何か問題があれば削除させていただきます。
浮気って相手の付き合ってる彼女のことは遊びで、そのうち彼女より自分の方がいいって気づいてくれるって本気で思ってるんですよね。怖い怖い。