3話 ミークア・ユーリア
(変な子だな)
徐々に女性にマッチ棒を近づけるとついに殴られた。
〈ボキ!〉
マッチ棒が折れてしまったのだ。
「おおいいい! 唯一の武器なんだぞおおおお」
折れたマッチ棒を手にし赤い部分と持ち手を繋げようとするがくっつく様子はない。
「マッチくんこれからどうしたらいい?」
そうマッチ棒とお話をしていると明らかに変人を見る目つきでこちらを見ていた。
「えっと、申し訳ない、それとお礼がしたい」
少女の後ろから何人もの護衛が出てきた。
「ほんとありがとう」
頭をあげてその場を後にしようとする、一度はその後ろ姿を眺めたが、すぐに止めた。
「待ってください」
折れたマッチ棒をポケットに入れた。
「俺もついて行っていいですか?」
即答だった。
「すまんが、無理だ」
そういいその場を後にした。
「なんでやねん! おかしいやろほんま!」
アニメなら一緒に連れて行ってもらいその人と世界を救うって感じのシナリオのはずが、置いてけぼりなんてありえない。
「なにもかもあのポメのせいや!」
ポメは後で来ると言っていたが来る気配はない。
「どうなるか覚えとけよ!」
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陽がドンドン落ちていきあたりわ真っ暗になっていた。
「ご飯も食べてないし、あっちでお母さん心配してるだろうな」
そう考えているとどこからか足音が聞こえた。
〈トン〉
それに気づき音が聞こえた方を見つめる。
〈トントン〉
もしも敵だった場合俺は俺たマッチ棒で戦うしかないのだ。
「敵だったらどうしたらいいんだ」
音がもうすぐそこまで来ている。
「あー終わったわ俺の異世界人生はい、じーじ」
目を閉じるとなにやら可愛い声が聞こえた。
「えっと? 大丈夫ですか?」
その時の俺は敵だと思い込んでお命乞いをする。
「あーほんとすみません、殺さないでください、お願いします」
さぞかしその姿はなんと無様だっただろう、すると再び声がする。
「変な人大丈夫ですか?」
俺は我に返った。
「あれ敵じゃない?」
すると手を引かれた。
「なに言ってるんですか?」
顔を見るとなんと美少女が立っていた。
(めっちゃ可愛いやん)
とても小さくて目が赤色で髪型はお団子ツインで黄色。
「あっどうも」
すると失神しそうなくらい可愛い笑顔を向けて来た。
「こんばんわ! あたしの名前はミークア・ユーリア、あなたは?」
こんな美少女に挨拶されると緊張してしまう。
俺をここに転生したポメより何倍も可愛いあいつ忘れてこの子と旅出ようかな?
「俺の名前は」
かっこよく言おうと思ったがどこからか俺の名前を言う。
「この人は扇原 廉」
(おい! まて!)
そう心の中でいうとどこからか声が聞こえる。
(ちゃんとした名前を言わなきゃあかんよ!)
俺は周りを見渡すが誰もいない。
(僕のことは気にしないで! 君にしか聞こえてないから)
(ポメか、テレパシーっていうやつか? てかお前さっきまでどこにいたんだよ!)
変な行動に彼女が心配そうに聞いて来た。
「大丈夫ですか? 何かあったのですか?」
前を見るが可愛すぎて直視できない。
「えっとごめん、とりあえず聞きたいことあるんだけどいいかな?」
どうぞと言わんばかりに座り出す。
「ここから近い街ってどこにある?」
周りを見渡し指を指す。
「あそこかな?」
彼女が指を指してる方向を見る。
「どこだ?」
その方向を見ても見えるのはボロボロになっている街並みだ。
「ここから歩いて数ヶ月」
そんなもん歩けるか! と思ったが歩くしかない。
「遠いが歩くしかないか、ありがと」
俺は指をさした方に歩き出す。
すると腕を掴んで来た。
「待って私が連れて行く」
なにやら体から翼が生えた、左翼が赤、右翼が黒。
「なにこれ?」
それは綺麗な翼で今日戦った鳥みたいな翼を持っている。
「翼」
「うん知ってる」
「なら聞かないでよ」
俺は謝るしかなかった、すると背中に乗るように指示を出して来た。
「背中に乗って」
そう言われても女性に担がせるなんて俺にはできない、俺を担ぐことなんてできるとも思わない。
「おれ重いぞ?」
無言で首を振り早くと言わんばかりに翼を羽ばたかせる。
「わかったわかった乗るよ」
翼を羽ばたかせて宙に浮く。
「すげええ!」
「暴れないでね変人さん」
「可愛いのにそんなこと言うと台無しやぞ?」
(このロリコンめ!)
「黙れ!」
ポメがいきなり変なことを言って来たせいで言葉に出てしまう。
「あーごめんごめんなんもない」
彼女の背中から下を見てみる。
「すごいな建物何一つ残っていない」
指をさした方を見てみるが同じ風景だ。
「一体この辺りに何があったんだ?」
そう考えていると彼女が話しかけて来た。
「変人さん、戦えるもの何か持ってる?」
そう言われ俺は自慢げにポケットにしまったマッチ棒を取り出し彼女の前に差し出した。
「マッチ棒持ってるぜ!」
彼女はこちらを変な目で見つめて来た。
「マッチ棒は使い道ないかな?」
返答に予想はできたが彼女のような返答は予想できなかった。
「え?」
不思議そうにこちらを見つめる。
「もしかしてマッチ棒が武器になるなんて思ってないよね?」
少しバカにしたような言い方に俺は聞こえた。
「うるせえ! 武器になるんだよ!」