ほしいものってなんだっけ?side?
冷たい風は頬刺して
右手に握りしめた鉄の固まりは
重苦し、右手が凍るんじゃないかってくらいつめたかった。
いつだってアイツは飄々と何でもなさそーにふらふらして捉えきれなくて
そのくせポテンシャルだけはすげーたかくて
何でもできるくせに何にもしなくて
望めば手に入れられないものなんてないくせに
何も欲しがらない興味すらもたない
それは他人にも同じで
腹が立つ奴なんていっぱいいた
羨む奴もディスるやつらもどっかでさ
興味を引きたかった
アイツの
かく言う俺もその一人で
でもまぁこーなった。
なるべくしてなった。
アイツの在学中同級生。それが俺のポジションでそれだけでしかないんだろう
結婚もした、子供もいる。幸せだった。
でもアイツは俺の視界に帰ってきた。ふらふらっと半年前に。
派遣らしい、独身らしい。YouTubeで動画配信してた。
顔は出してなくても分かる
アイツの声は耳に残るから。
不思議な魅力、カリスマ?言い表せる言葉が上手く見つからないけど、そんな感じな声。
一番最初にその動画の主にきずいたのは嫁だった。
嫁がアイツに高校時代に恋してたのは知ってる
わかってる。アイツの代わり?同じ匂いのタバコ位だそんなもん。。。
真似てふざけて背伸びして吸い始めたタバコ
親父からくすねてきたってアイツは笑いながら
白い煙を吐き出して俺にもすってみる?みたいに箱を差しだしきょとんとした顔をしてたっけ
でもさ、なんで今こんな日本から離れた上海にこいつはいんだよ、あぁどーせいつものぶらりたび気取りか良いよなYouTubeでもうけてんだろ!
やるせない、モドカシイ、積もり積もつった感情は不意に鉄の固まりに向けられた。
目障りだった。
消えてほしかった。
忘れたかった。
引き金は簡単に、銃弾はアイツの胸に
花火みたい血は空をまわなかったけど。
なんでだよ。
なんでなんだよ。
なんで死ぬ間際まで
んなきょとんとした顔で笑ってんだよ?
ちくしょう。。。チクショウ。。。畜生。。。
階段から転がり落ちてくアイツの姿
俺は涙しただ空を覆いだ