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悪徳の町③

ざあざあざあ。雨が降る。

私の心も雨が降る。


お父さんのリボンをネリーに上げると約束した。幸福な思い出がたっぷり詰まったリボン。

本当は誰にも触られたくなかったのに。

1つを半分にわけては?と一瞬思ったりもした。

でもそれではだめだ。ネリーはすぐに気付く。騙されたと思って更に警戒するだろうし文字も教えて貰えない。


ざあざあざあ。外はどしゃ降り。

私の顔もどしゃ降りだった。

お父さんごめんね。一生懸命選んだ誕生日プレゼントだったのに。

大人の男の人が女性しかいない売り場で小物買いに行くなんて恥ずかしかったと思う。

休みもほとんどない疲れている中、わざわざ時間を割いてくれたのが本当に嬉しい。

その時間少しでも寝ていたかったはずなのに。


優しくて照れ屋で娘スキーなお父さん。

私がいなくなってどんなに嘆き悲しんだことだろう。

子供が先立たれるのは身を切るより辛いってお酒を飲みながら泣いてたの知ってました。

私がまだ小学生の頃、妹か弟が亡くなったんだよね。

お母さんのお腹にいた私の小さなきょうだいたち。

双子だったんだって。

後で知りました。


情の深いお父さん。

今も声をからして探していませんか。


大好きなお父さん。ごめんなさい。

大事なリボンは人に譲ることにしました。

リボンなくても嫌いにならないよね。

必ず帰るから、その為に必要だったから許してくれるよね?


帰ったら絶対親孝行します。

だからあまり泣かないで待ってて下さいね。


泣くのは今だけ。明日には笑顔になろう。

思い出は誰にも奪われないのだから。




















リボンと交換でネリーに約束したこと。

文字を教わる。この町の事を教わる。そしてこの世界の事を教わる。

本当に知りたかった事をきけるようになった。

ここはどんなところでどんな常識があるのか。

それが一番知りたいことだった。


だけどがっつくと足下を見られて情報をくれない可能性があった。

だからそう言えばそれも教えてほしいなって軽い感じで云ったら、じゃあきくかい?って機嫌よく云ってくれた。


せっかく大切なリボンを犠牲にしたんだもの。犠牲は有効的に使うべきだ。


ネリーはリボンを見て興奮していた。品質や長さや縫製を見て満足したようだった。

もし惜しくて切っていたらと思うとぞっとした。

「上物じゃないか!本当にいいのかい。」

鼻を膨らませネリーは興奮を抑えきれないように声を詰まらせた。

この町ではお貴族さましか持っていないような、上品で上質な手触りの布地。

みたこともない美しい色のたっぷり布地を使った幅広のリボン。

このリボン1本だけでかなりのお金が動くはずだ。

「私よりネリーの方が似合うわ。喜んで貰えて嬉しい。」

笑え。嬉しげに笑え。

何の気なしに云うふうを装おう。

握りしめた拳と裏腹にふんわり笑う。


「ご領主さまも持ってないよ。嬉しいねえ。そうだ、服はいるかい?予備に1枚やったけど足りないだろ?お古だけどさ、貰われた子の分があるんだよ。お金もちのお嬢様になるんだ、みっともないドレスは捨てろって云われたのさ。」

浮かれてそのような事を話しだす。

領主も持ってないの?

それってやばいくない?

だけど手ぶらなのに他のもの出しちゃうほうがもっとまずいよね?

お父さん。あなたがくれたリボンはご領主さますら持ってないものらしいですよ。


「ありがとう。嬉しい。」

貰えるものは全て貰う。これからどこに行こうと服は必要となる。アイテムボックスに入れればかさばることはない。

浮かれたネリーはドレス3着とドロワーズ2着持ってきてくれた。

いずれも継ぎは少なく上等な品物だった。

勉強は夕食後、台所に決まった。



よし、あとはゼップだ。

ゼップの体格を見て密かに図る。うんいけるな。

ゼップを誰にも見つからないように小雨が止んだ井戸に連れ出す。



「何か用かよ、ちびすけ。」

ゼップは腕がいいから独りで仕事を任されている。

稼ぎは自分の手腕で決まるから早く仕事に行きたいのだろう。そわそわしている。威嚇とばかりにギロリと睨まれた。

生憎私は16才。たかが11才の睨みなんて怖くない。

くそう。11才の癖に身長が160越えてるなんてなんて生意気。



「古くて汚い要らない洋服が欲しいの。ただじゃないわ。兎と交換でどうかしら?」

体格のよいゼップはいつもお腹をすかせている。一番の稼ぎ頭なのは食事をたくさん食べたいからだ。

兎1羽まるごと自分のものになるなら、洋服くらいくれるだろう。

ネリーのお気に入りだから他の子よりたくさん衣装を持っているのは調査済み。


「兎だと?おい寄越せよ。」

「だめよ、服と交換じゃないと渡せない。要らないならいいのよ。他の子に頼むから。」

「本当に兎くれるんだろうな。」

「嘘は言わない。他の子にばれたらまずいでしょ?ここで待ってるから早く持って来て。」



さすがに他の子にばれるのはまずいとの理性が働いたのか、大きな図体の割りに俊敏な動きで2着手に持ってきた。

「誰にも見つからなかったでしょうね?」

「ヘマやるわけねえだろ、ちびすけ。さあ俺の兎寄越しやがれ。」


ドレスの下からと見せかけてアイテムボックスから一番小さな茶色の兎を渡してやった。

ゼップが思ったより大きかったようで機嫌がよくなった。

洋服をアイテムボックスにこっそりしまいながら兎をどうするのか見る。私が食べるはずだった兎。

どうするのかくらいみてもいいよね。



「よしっ。よし。」

右腕を引くガッツポーズを2回した。

古びた桶をどこからか持って来ると水を一杯に溜めて、ポケットから取り出した大きな葉っぱを洗った。トイレに使用するあの葉っぱだ。

もう一度水を汲んでから大事そうに抱えた兎と一緒に濡れてない場所に腰を下ろした。

そして兎を葉っぱに乗せたらおもむろに懐刀からナイフを取り出し上手に解体し始めた。


「うまいのね。」

「親父が冒険者だったからな。見てもやんねえぞ。」

あげたものを取り上げる趣味はございませんから。

「要らないわ。解体を見てるだけだから気にしないでちょうだい。」



そうだ、ゼップも計画に巻き込もう。

本人次第だけど解体を教えて貰えるのならこれから先は必要になって来る。

お父さんが冒険者なら冒険者になりたい気持ちもあるかも知れない。


その前にあの子だ。スラムから出てくれてればいいのだけど。



その間にきれいに解体していた。

内臓や骨は溝に捨て毛皮と肉の半分は袋に詰めた。

残りの肉を食べやすい大きさにカット。

ポケットに入っていた何本かの串にそれらを刺して行く。

あまりの手際よさに普段からこうして食べていたのだと知る。

盗んだお金をちょろまかしてお肉でも買っていたのかな?

確かにあれじゃあ足らないものね。

えっ?生のまま食べちゃう訳?



「やんねえからな。」

兎肉を隠すようにしながら睨まれた。

要らないって。


「どうするの、ソレ。」

「決まってるだろ。喰う。」

腰のポケットから小さな袋を取り出して中身をかける。

塩だね。

台所からくすねたのかな?

それから近くの崩れた塀をばりばり剥がして積み上げた。

人様の塀だよ?まずくない?


おもむろに両手を積み上げた木の上にかざし

「全てを燃やし尽くす荒ぶる火よ。俺の命令に従え。いまここに現れよ。」

手のひらから10㎝くらいの火の玉が出てきて薪を燃やしはじめた。

水を含んでるから煙がすごい。

火の魔法使えるなら木を乾燥すればこんなに煙出ないし効率よく燃えるのに。

いやいや、それ、元は他人んちの塀だよね。

勝手に盗んで燃やすの、よくない。



って。それ魔法だよね?

この世界魔法あったんだ!

今まで人に会わなかったから魔法があるなんて知らなかった。


「ゼップって魔法使えるの?!」

「おう。親父に教えて貰った。」

「兎焼ける間でいいから教えてくれない?」

逃がすものかと服を掴んでいた。

火が使えたらこれから便利。

扱いの難しい火打石なんて使わなくてもいいんだから。


この時の私は異常に興奮していたようだ。

ゼップは引いた目で私をみていた。

「‥‥いいぜ。」

教えないとこいつヤバイと思ったようで素直に教えてくれた。


「まずは体の中にある魔法を見つける。これが見つからねえと魔法は使えない。見つけてみろ。」

「それだけ?他にやり方ないの?」

「親父から教えて貰ったやり方だ。他なんて知らねえ。」


むう。大雑把過ぎる。

体の中の魔法?もしかして魔力の事なんだろうか?

血液は体内に回るように魔力も回っているのかな?

心臓?脳?それとも他の臓器にあるんだろうか?

人間に魔石はないよね?


魔力、魔力、魔力。

ずっと考えてたら手のひらが少し温かくなってきた気がした。


「手のひらが温かくなって来たみたい。ひょっとしてコレなの?」

どれくらい時間か経っていたのか。肉を食べていたゼップは驚いて振り返る。

「まじかよ、ちびすけ。俺でも2年はかかったんだぜ。」

あんな教え方なら確かに時間はかかりそう。



手のひらの温かい物がどこから出ているのか辿ってみた。体の中心から流れているのだと知る。

心臓でも胃でも肺でもない不思議な場所。

ここが魔力の臓器なのかも。


そこから体中に温かいものを巡らせる。血液が体内を循環するように想像しながら。

2周程して体中がぽかぽか温かくなってきた。冷え性対策にいいね。

もう2周したら体が怠くなってきてやめた。毎日これやってたら魔法のイメージが定着しそうだ。


「それからどうやるの?」

「呪文唱えて火を出すんだよ。」

見てな。そう云って手を焚き火に翳す。

「全てを燃やし尽くす荒ぶる火よ。俺の命令に従え。いまここに現れよ。」

10㎝位の火の玉が飛び出す。


よし。やってみよう。

「全てを燃やし尽くす荒ぶる火よ。私の命令に従え。いまここに現れよ。」

ぶおぉぉ。ごぉぉぉ。

バーナーを着けた時の音が大きく響き、1㎝くらいの大きさの火の玉が飛び出る。

音の割にしょぼい。

音で逃げ腰だったゼップもしょぼい火の玉を見てゲラゲラ笑いだした。

思わず睨みつけたら笑いながら慰めてくれた。

「初めてならそんなもんだよ。しかしすげぇ音の割にはs‥なんでもねえ。まあ頑張れ。」

しょぼいと云いたいんだな。

いいよ、笑ってれば。

いいんだ。なんとなくわかったから。



笑いをごまかすように水を掛けて燃え残った板切れをそのままに孤児院に逃げて行くゼップ。

ここで焚き火したってわかったらまずいよね?

ネリーは目敏いし他の主婦の方経由でネリーの耳に入るともっとまずい。

兎はどうして手に入れたのかとかどこに隠してあったのかとか、手に入れた洋服の使用目的なんてばれるとなおまずい。


燃え残った板切れをアイテムボックスに入れて証拠隠滅した。

ゼップが捨てた内臓をアイテムボックスに入れて兎の骨を井戸できれいに洗う。

内臓は獲物を誘き寄せで使えるし、骨は何かに加工出来そう。

廃棄なんてもったいない。

大切な命を頂いたのだから余すところなく使うべきだ。

水で解体した痕跡を洗い流す。

これゼップの仕事なんだからね。


内臓料理はここにはないのかな。

美味しいのに、内臓。

処理に手間隙かかるけどさ。

今アイテムボックスに入れた内臓は汚いから食べないよ。

飢えても細菌だらけだろうから食べるつもりないけど。



人のしゃべる声が聞こえて慌てて骨をアイテムボックスに仕舞った。

誰か来る前に逃げないとね。

これからあの男の子を探して見つかったら冒険者ギルドに一緒に行こう。

一人ではちょっと行きにくいもの。



しばらくしてスラムの入り口に見える場所に着いた。

スラムの入り口で待つ勇気なんてないし。

本当に酷い匂い。

早く立ち去りたいのだけど早めに見つかって欲しい。


遠くから眺めていたけどあの男の子の姿はなかった。

市場なのかな?

市場はネリーのネットワークの1つだ。

ネリーに見つかるとまずいからここで見つかる方がいいんだけど。


次々にスラムから子供が出ては来るけどあの子はいなかった。

昼まで待ってたけど結局出ては来なかった。

すぐに見つかるとは思ってなかったけど、それでも落胆の色は隠せない。


この先見つからないなら誰かに言付けた方がいいのかな?

でも誰に?

私がスラムの子なら知らない人にはついて行かない。

罠かも知れないし子供だって誰かの手先になれるから。

奴隷商人と繋がりあるかもと疑うよね。



八方塞がりでため息が出た。

あの子に色々教えて貰うのは思ってたよりも難しいことだったのかも知れない。

あの子に協力して貰うのが計画の胆だったから予定を変えるのはしたくなかった。

説得出来ないのは予測してたけど、見つからないのは予想外だった。


もしもこの町に居ないならそれ用の計画も建てた方がいいのか。

ゼップを引きずり込むまではなんとかなりそうだけどそれから先は果たして上手く逃げ出せるのか。

頭が痛くなりそうだ。


未練がましくうろうろしてたけど結局見つからず仕方なく冒険者ギルドに行く。

依頼を見るために。



前に来た時は緊張してたのかあまり覚えてなかった。

冒険者ギルドの左手がテーブル付きの酒場で右手には依頼を書いた板切れがたくさん架かっていた。


文字を覚えたら配置を覚えていきたい。

ランク毎に書いてあるはずだから。


木製の建物は体育館の半分くらい。

2つの教室を合体させた広さがある。

昼間でも薄暗いのは窓ガラスなんてないからだ。木の枠に格子状に板を打ち付けていて、すきま風や虫よけに分厚い布を垂らしてふさいでいる。

24時間年中無休のギルドだから何ヵ所か蝋燭の入ったランプが設置してあった。



ギルドの中は汗のすえた匂いと酒の匂い。安い香水の匂いが充満していた。


夜になると酒場は本物の酒場になるみたい。

まだ朝なのに、酌婦に交渉してる男がいる。

なるほど酌婦は金額次第では娼婦になるんだね。バーカウンターの裏側に彼女らの仕事場があるみたいだった。



正面には椅子が2つしかない受付カウンターがある。

右の椅子に座っているのは昨日の40過ぎの迫力ある体格の強面のお姉さん受付嬢だった。

左側の椅子には誰も座っていない。


受付の裏、右手に扉がある。

ラノベ情報ではギルマスがその奥にいそうだ。


掘っ立て小屋みたいな内装にこれがこの世界の標準なのかなとちょっとショックだった。

華美にとは云わない。

ただもう少し冒険者ギルドらしい威厳と匂いが欲しかったな。



相変わらず下品な口笛が迎える中、受付嬢のところに行った。



「何か依頼ありませんか?」

本当に嫌そうな顔つきで素っ気ない。

「あそこに書いてあるよ。」

「文字がわからないので聞いています。依頼の種類と達成条件と報奨金を教えて下さい。」

途端に苦虫を噛み殺した顔になった。

手間が掛かるのが嫌なんだとわかる。

それともこまっしゃくれた生意気な子供は嫌いだとか。


「薬草、5本で50ドーン。毒消し草5本で75ドーンだ。」

「例えば6本持って来たらどうなりますか?」

聞けるだけ聞いておかないとね。

後で聞かなかったのが悪いって云われないようにしたい。さすがの私も受付嬢に嫌われているくらいわかる。

多分色々理由つけてお金は貰えないだろから。



「薬草は1本につき10ドーン上乗せ、毒消し草は15ドーン上乗せ。」

吐き捨てるように云った受付嬢にわざと頭を下げた。

「ありがとうございます。持って来るのは葉っぱだけで大丈夫でしょうか?それとも他のところも必要ですか?」


これも聞いてはいけませんでしたか?

低い唸り声をあげて睨みつけられた。

「達成は葉っぱだけだよ。根っこつけてたらさっぴくからね!」

「葉っぱはどの部分を?小さな葉でもいいんでしょうか?」


「10㎝以上じゃないと買いとらないよ。」

「ついでになんですが、どの葉っぱをどのように取ってきたらいいのか教えて下さい。

好評価の葉っぱとかあったら参考までに見せて頂きたいのですが。」


丁寧に聞いたのに。


金切り声を上げて机を叩いたのだ。

「気持ち悪い子だよ。もう黙んな!」


いえ黙りませんけど。肝心なことを聞いて置かないと後々大変な目に合いますので。

「それで?教えて頂けないのですか?」


ばんと叩きつけた2枚の葉っぱを手に取る。

色や艶、香り長さ、色々な角度から見てよい収穫状態と特徴を頭に叩きこんだ。


「最後なんですがどこに生えて「うるさいね。もう出ていきな!」いるんでしょうか?」


途中で遮られたけど最後まで云わせて貰う。

生息圏がわからないと採取出来ないでしょ。

もう一度言い直してみる。



待ってましたと云わんばかりに舌なめずりされた。

「森の中だよ。あんたみたいなガキは生きて出られないかもね。」







門番に仮冒険者登録証‥仮登録証の木片を見せる。

ちょっと目を見張って顎をしゃくられた。


あれから刑事コロンボのように一旦戻って達成までの期限を聞いた。

薬草だのゴブリンだのは常時依頼だから期限はないそうだ。

でもあんなに嫌がられなくてもいいのに。

確かにしつこかったけど。



森の中での依頼は少し困る。

出来たら私が戦えることは秘密にしておきたい。ザップなりあのスラムの子なりがパーティーメンバーに入ってくれたらカモフラージュになる。


達成期限がないなら今は少しづつ集めてみよう。それよりも魔法を勉強したい。

何となく感覚は掴めた。

魔法はイメージ。

きちんとしたイメージがないと発動しないと気がついたのだ。

井戸で使った魔法は漠然としたイメージだった。

幸いにも映画やアニメや学校の勉強でイメージも理論もわかっている。

呪文を声に出すのは恥ずかしい。

無詠唱とか試してみよう。


それから周囲を警戒しながら人のいない森で魔法の練習をしてみた。

まず火。

呪文なんて恥ずかしいからイメージを固めて火のボールを出してみた。

最初は小さな(バレット)。それから段々大きくなるイメージ。ある程度大きくなったら火の(アロー)をイメージして木を破壊する。

体中魔力を巡らせながら魔法を使うのは予想より難しく、威力を維持しながら当てるのに苦労した。



次に水。

水筒に水を貯めてみる。

手のひらから簡単に水を出せた。

人がいないところではこの水を飲食に使いたい。

あの井戸の水って大腸菌がいそうだもん。

生水はだめ、絶対。

ウォーターバレット、ウォーターアローと続けてウォーターカッターを出してみる。

結構威力あるね。



水魔法の検証を終えて土魔法を使ってみようと思ってたら繁みから猪が飛び出して来た。

1mくらいの小さな猪。

突然の事にお互いに固まっている。

私は魔法に夢中で索敵を忘れ、猪は人がいるとは思わなかったようだ。

先に我に返ったのは私だった。

森では火は使い勝手が悪い。水は足場がぐちゃぐちゃになる。

ここは風で行こう。


猪は勿論動く。

だからまず足を切って動かないようにしよう。

でも動く物に魔法を掛けた事がなかったから、猪の足を切り落とすのに手間取り、猪が逃げないようにするのに必死だった。

動きを止めて首を跳ねるまでかなり時間がかかってしまった。

首を跳ねて気がついたけど、毛皮は細かく切り刻まれてお金にならないありさまだった。

どんだけ必死に魔法を使ったんだろう。残念ながらこの毛皮はお金にならない。

取り合えず猪をアイテムボックスに入れた。


索敵って使い勝手が悪い。

意識しないとどうやら解除になるみたいね。

レーダーやソナーみたいな常時展開する魔法はないのかな?

あっ、レーダーを覚えたみたい。

5㎞が限界のようだね。

レーダーで警戒しながら魔法の続きをすることにした。



風、土、雷、氷、光、闇をそれぞれ試す。

軽く出してみたら全ていけた。

ただし闇は補助的役割が多く闇を使って暗闇に隠れることは出来そうだった。




一通り全ての魔法を試してみた。

ちょうど闇の検証が終わったと同時に魔力が尽きた。

乗り物酔いみたいな変な気分がする。

気分がよくなるまで周囲を警戒しながら腰を下ろした。

ゲームみたいに体力や魔力の残数が見えたらいいのに。

仕方ないけど現実はゲームみたいにうまくいかない。




いろんな属性の魔法を使えるけどこれは転移者特典なのかな?

この世界では当たり前なんだろうか。

もう少し早くわかっていたなら森の中ではあんなに苦労しなかったのに。


だけど魔法の気配で更に大物を引き寄せた可能性もある。

うん無い物ねだりなどしないで、あれが最良だったと思おう。



火と水を使ってお湯とか出せないかな。

ある程度出せたらお風呂に入れるんだけど。

火に風でドライヤー。

氷があれば獲物を冷やせるし、真夏には氷入りの水が飲める。

水を撒いて小さな雷を呼べば動物を感電死させることも可能。

複合魔法とか使えたら便利。

今日は魔力がなくなったから無理だけど、追々検証していきたい。


いろんな可能があって楽しい。

転移とか出来たら夜抜け出して森で魔法の練習するのに。


時空魔法とかあるのかな?

あれば自力でうちに帰れるかもしれない。





光の魔法ではライト感覚で光らせていたけど、攻撃としてはアンデッドに効果ありそうだ。

これ回復とか治療とか使えないかな。

よし少し魔力が回復してきた。



思い立ったら即行動。

試しに死んだ兎数羽と先ほどの猪に回復を使ってみたら毛皮がすごく綺麗になった。

これ使えそう。

滅多刺しされた遺体も綺麗になれば買い取りは高額になるかもと夢が膨らむ。


表面が綺麗になる魔法は簡単だったけど骨折とか病気はどうだろうか。

私にはいくらか体の仕組みがわかる。

学校の授業で習ったから。

日本での教育って高度な事を教えていたんだなって痛感する。


授業で足りないなら本で読んだ知識を足せばいい。

だてに小学校、中学校で図書館まるごと完読みしてないからね。

高校の図書館の蔵書もほぼ網羅していたし。




知識使えば欠損とか治せるのかな?

骨伸ばして筋肉と筋と血管作って皮膚で覆う。

指ならそれに爪を作る。


欠損が治せるなら安くいい奴隷が買えるかもね。

いくら才能あってもいくら強くても、五体満足でなければ捨て値で売ってると聞いた。

早いうちに生きてる動物か魔物で試してみたいな。


体中に魔力を巡らせながら魔法を出して行った。

同時に2つは難しい。だけど出来たら2つ同時に出来るようになりたい。

同時に出来たら更に強くなりそうな気がする。


疲れたら警戒しながら薬草と毒消し草を集める。

初日にかかわらず結構集まった。

今日は換金しない。

早めにパーティーを組んでガンガン依頼を達成したい。

冒険者で稼げないと分かれば、今は機嫌のいいネリーでも容赦なくスリをする事を命令するだろう。

その最低ラインは5日間。

それを過ぎれば他の子供たちから反感を買われる。

ネリーも進んでは庇わないだろうし。

それまでにザップ達を説得しなければならない。

ザップには明日でも相談するとして‥‥。



明日こそ絶対あの子を捕まえる。


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