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プロローグ①

序盤は暗いです。残酷なシーンあることもあります。様々な神が支配する世界なのでところ変われば常識も違います。

初投稿です。

よろしくお願いいたします。

深く濃い森。虫の鳴き声1つしない静かな見知らぬ木々が360度生い茂る。

どこまで歩いても果てはなく、上を見上げても隙間から空の色すら見えない程高い木々。

なのに日中でも薄明るい不思議な森。雨が1粒も降らないのに深く濃い鮮やかな色をした草や葉。

周囲には嗅いだことのないような陽気でスパイシーな香りが漂う。



そんな森に私はいる。



絵馬春光(えまはるひ)16才。元女子高生。

今、折れた枝で作ったガタガタの槍を握りしめ、木の上でゴブリンを待っている。





もちろんゴブリンを食べるのだ。





この2週間まともなものは口にしていない。ごく普通の女子高生にはサバイバルの方法も食べ物を手に入れる術すら知るはずもない。

ようやく見つけた水場は魔物が絶えずうろつき水を汲むのも命懸け。


飢えた私がこの森最弱のゴブリンを食べ物とするのはこれしか道が残されていないから。


昨日は突き刺すのを躊躇して逃がしてしまった。ゴブリンは仲間を呼び、命からがら逃げ延びた。

‥‥本当は逃げた薮の先に2m半の小さな崖があるのに気付かず、落ちたんだけど。




捻挫した足を庇い、必死で崖を登りきったのが真夜中。

割れた爪で暗闇の中這い廻り、手探りで拠点の木のうろを見つけたのが明け方。

軽い仮眠を2時間ばかり取り、以前見つけた錆びた短剣で槍先を研ぎ治し木に登ったのは先程。



この生活で美味しいものをお腹いっぱいになるまで食べれること、ゆっくり眠る事が出来る幸せを知った。

お菓子を食べながらダイエットに苦労する毎日がどれ程恵まれていたのか。



この世界に来て確実に20㎏近く減っていると思う。

もしすれ違っても家族は気付かないはずだ。






グゲゲゲ。ギャアギャア。キキー。

奴らの鳴き声が響く。

甲高い雉のような声に黒板を引っ掻いたような不快な声。

どちらも聞き続けていると気が滅入る。

ヌメヌメヌラヌラと鈍く緑色に光る安っぽいプラスチックゴムのような気持ち悪い肌。


ゴブリンにあえて触りたい女は、いない。

でも飢えきった私には他に方法がなかった。



あれはダメだ。6匹もいる。1匹だって手に余るのに。


息を凝らし音をたてないように身を潜める。

2週間水浴びも着替えもしていない。

女として終わってる。残念な私。


私の臭いが近づいているゴブリン共に気付かれないようにと御守りを握りしめた。





この2週間わがままで断食したのではない。木の実だって茸だって食べたのだから。

だけど美味しそうな木の実で3日間のたうちまわり、ありふれた茸で虫が集る幻覚を見、宝石のように美しい草の実で泡を吹き、可愛い苺擬きで窒息しかけてから、苦くてマズイ草たちを食べるしか選択はなかった。

様々な草や木の実を食べて自分の体で実験した上で2種類の不気味な色をした葉っぱだけしか食べれないと知った。



お馬鹿な私だって学習するのだ。




虫を食べたことがある。

日本にいたとき罰ゲームで芸人さんが虫を食べさせられていた。

あの時、虫を食べるなんて人間じゃないとか虫を食べるくらいなら死ぬとか騒いでいたっけ。

芸人さんも好きで食べた訳でもなかったのに。

虫を食べるくらいなら誇り高く自殺する。

あの時の私は決意していた。



それは飢えたことのない傲慢さ。

生きることは容易く難しい。

けれど飢えたものは死ぬことをよしとしないのだ。




唯一私が手に入れられた食べ物はドクロのような形をした血のような真っ赤でゴツゴツした岩のように硬い果実だった。

しかしこの果実は食べ物による毒や痺れを中和した。

毒に苦しんでいた時に偶然落ちてた果実を舐めて発見した。

臭いはドリアンで味は腐った魚だったけど。

生きるために夢中で叩き割り、必死でお腹に流し込んだ。


今生きているのは早い段階でこのドクロの実に出逢えたからだ。そうでなければ5日間も生き延びられなかったはずだ。

この奇跡の実を採れるだけ採ってアイテムボックスに詰め込んだのは人間として当たり前の行動だったと思う。


だけど薬になるドクロの実はいざと云うときのためのものであって、日常で食べるものではない。

味はあれだしお腹が膨れない上に、これを切らしてしまうと死にかねないから。





人間生きるためにはたんぱく質は必要不可欠。

偶然地面で死んでいた小さな固体をいくつか拾ったのは飢えきって死を間近に感じた時だった。

空腹で空腹でどうしようもなく、さりとて死ぬつもりも全くなかったあの時。


地面に落ちているカマキリ、バッタ、蜘蛛。

まだ小さな赤ちゃん。それでも1mは優にある。

極限状態の中でそれを手に取り口をつけたのは人間の業だったように想える。

罪深い私が羽をむしり外皮を歯で食いちぎってかぶりつく様は餓鬼そのものだったかも知れない。

一口食べて呆然とした。

手に持っているそれ。

形は見慣れた虫だったのに‥。


美味しかった。

豊潤な旨味と甘味。

気がついたら硬く食べれない部位しか残っていなかった。

夢中で食べた。

高級鶏肉、高価な蟹肉、クリーミーな栗の味は私を狂喜させた。

新鮮なものはジューシー。古いものでもそれなりのものなら熟成されてそれはそれで美味しい。

ここに来て一番の美味しい食べ物だった。

まだ毒を持つ生き物を知らない時だった。無用心にもむしゃぶりついてしまったけど、今ならあれは命を賭けた博打だったと冷や汗が出る。


あれ以来虫が転がっていないか未練がましく探すようになっていた。

味をしめたのだ。

幸運はそれきり。2度と虫を口にする事はなかった。



虫を食べてから意識は変わった。

人間には時として冒険だって必要だし。

食わず嫌い、ダメ。よくない。

どんなものでも食べれるものは美味しく頂く。

それが基本方針となった。

だけど私が狩れる生き物はない。

まず虫を捕まえるのは無理!

蛇とか毛皮のついたものは食糧になるだろう、私が。

そこでゴブリンが登場した訳だね。






私はごくありふれたどこにでもいる女子高生だった。

ちょっと違うのはわが家には不相応な程の超有名なお嬢様高校に通っていたこと。

本当は家の近くの高校に合格していたしそっちに行くつもり満々だった。友人もいたしね。

いくらそれなりの生活をしているわが家でもバカ高い入学金と授業料は堪えた。

学校指定の靴や鞄は本革だし、制服なんて上品なデザイナーズなんとかで、雑誌のお洒落な女の子なら必ず憧れるランキングで毎年3つの指に入っている。

制服の洗い換えを考えたら気が遠くなる。

いくらわが家でも揃えるのは無理と私も家族も反対したのに何故か1年も通っている。


今でも納得していないけど、苛めも差別も仲間外れもないから不満はない。

本物のお嬢様はご家庭で躾をしっかりされている。人前で妬みや蔑みを口にしたり表情に出したりなさらないのだ。内心はどうであれそれを外に出さない教育は見習うべきことだ。



父は大企業の課長。子煩悩で私たち娘にメロメロな父。しかし残業や接待ゴルフなどでうちにいた試しがない。趣味は釣り。まったりしたのがいいのに、今は私達の為に好きでもないゴルフを一心不乱に練習している。


母は看護師。夜勤夜勤と会えた試しがない。少しドジでお人好しな母。夜勤ばかりするのは新人2人がやめたからだ。料理の腕は破壊的で仕方ないから私達娘が家事をするようになった。なのに趣味はガーデニング。料理も出来ないのにハーブや野菜を作っている。


姉は大学生。巷ではちょっと有名になりつつある派手めな美女。人のいい両親から黒い性格の姉が生まれたのは謎。家族スキーな人だから、私のために大手の芸能事務所を容赦なくこっぴどく振り撒くっている。趣味は意外なことに編み物と刺繍。私の制服のブラウスの刺繍は姉の力作なのだ。





割れた爪の血が再び固まる頃ようやく獲物が現れた。

単体のゴブリン。幸いなことに小さな個体だ。私でもなんとかなるかも知れない。



様子見に時間を掛けすぎた。

慌てて飛び降りる。

痛い!捻挫したこと忘れていた。だけど足の痛みより飢えの方が勝った。

声を出すのはマズイと知っている。だから必死で悲鳴を噛みしめた。

冷や汗が流れる。

息を大きく深めに吐くのを続けた。痛みが早く退くおまじない。


時間がない。もうすぐ奴が来る。

痛みが退かないうちに足を引きずりながらも蔦をよって作ったロープをゴブリンの膝下に来るように急いで張る。ロープの向こうに私が体育座りをして待つ。

緑色のジャージはかなり汗や垢や埃などで汚れていて、いい具合に臭うと思う。

長袖長ズボンで良かった。

みんなに人気のなかったカエル色のジャージはこの森に溶け込むのに十分だった。



囮は私。


早く来て。他の奴らに見つかる前に。ピチピチのまっさらな16才乙女なのだからゴブリンには不足なかろう。


って何を云ってんだか。絶対にゴブリンに初めては嫌。




5分くらいでゴブリンが草を掻き分け茂みから出てきた。私を見た途端目を輝かせる。

戦利品だと云わんばかりに喜びの声を上げながら一目散に走って来る。


そうなると‥‥。

ロープに足を引っ掛けてつんのめる。まだ小さい個体だからか踏み留めずにたたら踏み、そのままうつぶせのまま1mくらい吹っ飛んだ。



私にロックオンして周囲の警戒を忘れたのが勝負を決めたね。


あとは槍で思い切り喉を衝く。背中を右足で踏みつけながら何度も何度も力いっぱい衝く。

上手く衝けずに何回か外した。




キイキイ助けを求めるように鳴いていた声も途切れ、蹴飛ばしても動かなくなった事を確かめたら‥‥。

腰が抜けていた。手が体が激しく震える。いくら魔物とは云え人型を殺したのだ。


その場でえずき思い切り吐いた。食べ物がなくて胃液だけだったのが悲しかったけれど。




いくらパニックに陥ろうともこのままいるのは危険だ。早めに移動しないと私の人生はここで終わる。

だけど手足は大きく震え萎えていて。

歯は見苦しくもカチカチ大きな音をたて続けてるし、体は動くのを拒否している。


(動け!動け私!こんな所で死にたいの?生きておうちに帰るんでしょ!)


何度も何度も心の中で叫ぶ。

焦りながら必死で叫んだ。それでも体は動いてくれない。

自分の体なのに。

(お願いだから云うこと聞いてよ!死にたくないんでしょ。)


悔しくて持ってた槍で太ももを衝く。

それでも動かない。

ラノベでは罪悪感なくゴブリンを狩って無双してた話が多いけど、現実はこうだ。

平和な日本人が禁忌なくゴブリンや盗賊をサクサク殺せる訳がない。


ひょっとして痛みが足らない?

捻挫した足を槍で思い切り叩くことを思い付いた。これで動かないなら仕方ない、死のう。

ゴブリンに苗床にされて人間の尊厳をなくしてしまう前に。


思い切り叩いたら目から火花が散った。そのおかげで体も危機だと思ったのか少し動いてくれた。

ゴブリンとロープをアイテムボックスに入れると槍を使って座ったままジリジリと後退する。

まだダメなの?

早く動いて!

必死に後ずさりした。


せっかく固まった爪の血が三度流れたあと、ようやく。

立てるようになったのだった。









ゴブリンを拠点まで運ぶと後は試食だ。

火や調味料なんてないから錆びた短剣で小さくそいで味見する。

食べれるか見るために本当に小指の爪より小さい1かけら。

肉は腐敗臭がしていて粘ついている。気持ち悪い腐った緑色でいかにも危険な臭いがした。

普通なら絶対に口にしないそれ。

それでも食べなければ生きられない。

貴重な水でねばねばを洗い思い切って口に入れる。




‥‥吐いた。

腐肉に汚物を少し混ぜ、灼熱で和えて命の危険がある警戒を加えた味。


まずいとか以前の問題。

口は灼熱のように熱く爛れ、喉はたくさんの針を飲み込んだ激痛が走り、胃は何度もひっきりかえっているように激しく痛み、身体中が痛痒くかきむしりたくなる。

念のため用意していた、小さく切ったドクロの実を貪るように食べ大量の水を洗うように流し込んだ。



今回は3欠片と半分。

こいつは結構な毒持ちだったってことだ。

でも困った。せっかくのゴブリンが無駄になってしまった。

ゴブリンが食べれないなら遅かれ早かれ詰んでしまうだろう。



どうしよう。ここで誰か待つのがいいのか出口を見つけるべきか。


とても疲れていた。

明日穴を掘ろう。

ゴブリンをその場に放置して木のうろのなかでねっころがった。






少しうとうとしたのか明るさに目が覚めた。

外が明るい?

珍しくも無数の光虫が乱舞していた。

小さくても肉食。

ゴブリンを食べにきたのだ。

その食欲は凄まじく明日の朝には無数の小さな穴だらけの皮になっているだろう。

生きたものには害はないけど死にかけたり死んだものには容赦ない虫。


この森は残酷で無慈悲だ。

弱いものは生きることを許されない。強いものに蹂躙されるだけの生を終える。

弱いものはなんとかして生き延びようと足掻く。

ゴブリンはこの森で最弱だ。食物連鎖の最底辺にいる。

だけど私はそのゴブリンよりも更に弱い。


その私が今まで生き延びられているのは偏に幸運だったからだ。

まずどうしようもない時には何らかの偶然が起きた。

錆びた短剣しかり虫しかり、ドクロの実しかり、苦い草しかり。


次に小柄だったこと。

この森は巨大だ。木も葉も虫も蛇も巨大だ。

小さなのはゴブリンだけだがそれでも私よりも大きい。

小薮の中に逃げ隠れするのには便利だったのだ。

そして鼻の利く動物に遭遇していないこと。

いくら茂みに身を潜めていたとしても鼻が利く生き物がいたら美味しく頂けてしまっただろう。



ここで死ぬ訳には行かなかった。

私はうちに戻るのだから。



外の灯りを見て久しぶりにアイテムボックスの中身が見たくなった。

まだ私が日本にいた頃の幸せで優しくて愛情に満ちた平和なものたち。


これがなければとうの昔に狂っていた。

日本での生活が幻覚なのじゃないかと。

私は誰かに捨てられるほど憎まれていたんじゃないかと。


学生鞄を取り出して中に入っていたものを引っ張り出す。

小さな手鏡に大きなヘアブラシ。

手鏡は父方の祖母からの誕生祝いだ。手鏡は模造真珠で縁をぐるりと取り囲み、中央に薔薇の花束を描いた上品なもの。祖母の手作りと聞いて驚いた記憶がある。今の私の姿を見たくなくて使っていないけど。

祖父は私より大きな熊のぬいぐるみだったな。ここにはないけど。

爪切りとソーイングセット。中に刺繍糸のついた針が1本紛れ混んでるのに気づき姉の顔が浮かんで笑顔になった。


クリアな下敷きにノートに教科書。小さな辞書と共に一揃えあって重い。

筆箱にはシャープペンシルと替芯。よく消えるプラスチック消ゴムと共に新品。

物差しに分度器、コンパス。入れ替えるのが面倒でそのままにしてたやつだ。


腕時計とスマホ。どっちも壊れて時計がぐるぐる回っている。スマホは電池切れで電源が入らない。写真やメールが見たかったのに、残念。

ソーラ式の充電器。

誕生日祝いで友人がよこしたやつだ。

私はソーラ式を知らなかったし、必要と思えなかったから結実には散々文句云ってやった。

ごめん。結実。

落ち着いたらちゃんと使うからね。ここで一番役立つのは結実のプレゼントだったよ。

文句ばかりでお礼すら云ってなかったね。

帰ったら真っ先にお礼云うから。待ってて。

そのために絶対帰らなくちゃ。

そういえばスマホも結実とお揃いだった。


楽譜が1冊。

部活が忙しくなるからピアノやめるって云ったらお母さん泣きそうになってたな。

私のピアノが好きだって云ってたから力不足な自分を攻めたことだろう。

お母さんのせいじゃないのに。

運動音痴は治らない。

一年間必死で頑張って頑張って出した結論。

だから部活やめてピアノ教室に通うって決めてたの。

お母さんが笑う顔が見たいな。


最後に退部届けの書類一式。

従姉妹には悪いけどこれ以上先輩たちや同級生に迷惑かけられないの。

いつまでたっても基礎練しか出来ない部員はいるだけでお荷物。

誰も何も言わなかったのは従姉妹に遠慮していたから。まあ時間の問題だったような気がするけど。


中身を丁寧にしまって鞄の蓋を閉じた。



次に大きめの手提げ鞄

お姉ちゃん謹製の刺繍がすごいやつ。

まずパスケースと財布。

小さなスワロフスキーがちりばめられた綺麗なもの。

お金持ちのお嬢様に笑われないようにと母方の祖母と祖父が入学祝いにとくれたもの。

実は脳筋の祖父は愛用のサバイバルナイフをくれようとしたらしい。もちろん祖母は祖父がへこむまで叱ったそうだ。

サバイバルナイフ良かったかも。

ドイツ製で色々な機能があったんだよね。

あの時は笑ってごめんね。お爺ちゃん。素直に貰ってれは良かったと何度も後悔してるんだ。


大きめの水筒。元は暖かなお茶が入っていた。

お洒落なお弁当箱と同じ柄の箸と箸箱。

お姉ちゃんから入学祝いでもらったもの。女3人お揃いだったからお父さんがすねたっけ。



恋愛小説2冊。机におきっぱだったもの。

私はさほど興味なかったのだけど趣味が読書の私にと従姉妹がプレゼントしてくれた。

飽きたからあげるわって。

でも大好きな悪役令嬢ものだから従姉妹が手放すはずがない。しかも増刷されたばかりの新品だった。

ツンデレの寂しがりやな喬子(たかこ)

一人は嫌だと私をいつも引っ張りまわして騒動を起こしてくれた。


濃い緑色した上品なベルベットの太いリボン2本。

お父さんからの誕生日プレゼント。春光はツインテール似合うからってわざわざ買ってくれた。

お父さんありがとう、大好きっていうと真っ赤になった照れ屋な父。

私が健やかに不自由なく生きて行けたのはお父さんのおかげ。

感謝しても足らない。

帰ったら絶対親孝行するからね。

あとはブラ1枚。痩せてゆるゆるになって気持ち悪かったから外したの。だから今の私はノーブラね。


次に学校指定の高級革の靴袋と靴。

革靴では歩くの無理。だから上履きのまま過ごしている。


運動鞄には綺麗に畳んだ制服。凝った刺繍付きのブラウスと袖無しジャンパースカート。

白いローウエストのレトロな型。今時ミモレ丈の制服なんてうち以外は絶滅してるんじゃないかな。


光の乱舞は収まりそうもない。

どうするか考えるのは明日にしよう。

今はこのまま幸せな気持ちで眠りたい。


絶対にうちに帰ってみせるから。



次は森を出るまでになります。

未だに誰も会えないなんて、独り言すら云えない環境から脱出したいと思います。

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