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初めての朝

目覚めると、吐息がかかる距離にハルがいた。しばらくの間、私はその状況を理解することができず、ボーッとハルの顔を眺めていた。


しかし、状況を理解するや否や、私は顔を真っ赤にして飛び起きた。


(ハルと一緒に寝てた……///)


なんだか恥ずかしいような嬉しいような感情が湧き上がるのを堪え、私は今までの経路を思い出す。


(あ!そうか、ハルの部屋で待ってる間に寝ちゃったんだ……もう夜なのかな?)


部屋は月明かりでぼうっと光って見える。床に並べられたぬいぐるみたちが今にも動き出しそうに、目を爛々と輝かせている。怖くなった私は、再びベッドに横になると、ハルに寄り添った。


(暖かい……朝までこうしていよう)

……………

………


人肌に触れているうち、どうやらまた眠ってしまっていたようだ。

目を開けると、そこにハルはいなかった。目をこすりつつ、起き上がった私は、状況を確認しようと、一階へ向かうことにした。


階段を一歩一歩降りてゆく、なんだかいい匂いがする。

階段を下りきってリビングまで行くと、ハルのお母さんが朝食を食べているところだった。


「あら、起きてきたのね。よく眠れたかしら?」


「あ、はい。久々にぐっすり眠れました!」


それを聞くとお母さんはにっこり微笑んで席を立ち、キッチンへ向かった。


(何だろう、いつもと変わらない朝なのに、とても心がぽかぽかしてる……)


「朝ごはん、食べるでしょ?どうぞ」


どうやらハルのお母さんは、私のために作ってくれていた朝食をキッチンに取りに行っていたようだ。お腹が空いていた私は、お礼を言い、すぐさまその朝食を食べ始めた。


この世界に来て、これほど美味しいものを食べたことはない。どうしてこんなに美味しいんだろうか……私は涙ぐんで感動しつつも、その手を止めなかった。お母さんはそんな私を見てニコニコしている。



「あの、ありがとうございました!」


朝食を食べ終わった後、私は玄関に立っていた。見送るお母さんは、少し寂しそうな表情をしながらも明るい口調で言った。


「よかったら、また泊まりに来てね。いつでも大歓迎よ」


「はいっ!……それでは」


扉をガチャっと開ける。すると、朝日が勢いよく私の目に射し込んできた。いつもより暖かく感じるその光を浴びて、私は一歩、また一歩、と歩き出した。そして、考えた。


(これからどうしよう……)


まさか、一晩も眠り込んでしまうとは思わなかった。よほど疲れていたのだろうか。それとも、ふかふかのベッドで寝るのが久しぶりだったからだろうか……


とにかく、今日こそハルと接触しないと。生け捕り云々は後にして、まず個人的な事情を済ませたい。


でもハルが家に帰ってくるまでの間、どうしよう。特にやることもないし、敵組織の話を盗み聞きでもしようかな。なぜか、いつもあのカフェで会議してるし。私も結構お気に入りのカフェだからなぁ…一石二鳥だ。

そうと決まればカフェに移動しよう。

……………

………


◇カフェ

店内に入った私は、例の2人の姿を探した。レイという女性と、ケンというガタイのいい男性だ。

(お、いたいた……あれ?今日はレイはいないのかぁ…)

不在のレイの代わりにメガネをかけた少年がケンと話し込んでいた。

あのメガネの少年は、この前のケチャップのときにヤったはずだ。もう復活したのか。そういえばケンもケチャップでヤったはずなのに何ともない顔をしている。

おかしいなぁ、ボスは確かに言ったのに……

『ケチャップはヤバイ、人が口にしていいもんじゃない……』


毒じゃなかったのか……まあいいか。おかげで盗み聞きできるわけだし。

私はいつも通り、店員さんにルイボスティーのアイスを頼むと、向かいの席に座っている2人の会話に耳を傾けた。


「それ、本当ですか。もし襲われて通話できない状態だとしたら……」


「その可能性も否定はできません。しかし、ケンさん。もうレイさんとは3日以上連絡がとれていないのですよ。襲われたとしたら病院にいるはず。病院にも連絡しましたが、そんな人は入院していない…と」


「そんな……でももしかしたら仕事が忙しいだけかもしれない。最近かけもちしてるって言ってたから」


「会社とかけもちですか……?そんな時間あるんでしょうか」


どうやらレイという女性とは連絡がとれてないらしい。これは好都合だ。あの女の人、妙に感が鋭かったから、いつも手出しできなかったんだ。でも、鈍い男2人だけならヤれる!


店を出たところで襲撃しよう。

そう思ったときだった。


「あれ、あんた何してんの?」


ビクッと飛び跳ねる。恐る恐る振り返ると、キョトンとした顔のハルがそこにいた。


「そ、そっちこそ何をしてるのですか?」


「いや、このカフェ好きだからよく来るんだけど……」


「ハルも好きなのですか!?私も好きなのですよ!」


ハルは目を丸くして私を凝視している。きっと、私のような人間がカフェなんかに行くとは思わなかったのだろう。驚いた表情も一瞬で、ハルはすぐに話題を切り替えた。


「……それよりもあんたさ。昨日、何か用があったの?」


昨晩のことを思い出す。

そういえば、ハルとゆっくり話したくて家まで行ったんだった。夜の出来事の刺激が強すぎて、すっかり本来の目的を忘れていた。

そこで、私はゆっくり2人っきりで話したい旨を伝えた。



「……わかった、いいよ」


そう言うと、ハルは私の隣の席に座った。なんだか、昨晩のことを思い出してドキドキしてしまう。しかしハルはそんな私に構わず、慣れたように注文をし、私のほうを振り返った。


「で、話って何?」

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