愉快な仲間たち
翌日、さっそくコミュニティーの主催者に電話をかけてみた。予想と反して、電話に出たのは若い女性の声だった。
「あ、もしもし。ケンさんに紹介されてかけたんですが……」
「ああ、例のハルちゃんね。話は聞いてるわ。身体変化の能力なんてかなり珍しくてね、興味があるんだけど……明日あたりコミュニティーに参加してみない?」
「あ、明日ですか……はい、まあ休みだし大丈夫です」
「よかった。それじゃあ、午後1時に駅前のカフェに来てくれないかしら。みんなで待ってるわ」
そう言って電話は切れた。
幸か不幸か、駅前のカフェではかすみが働いている。今回の場合は不幸に入るだろう。
あの子、大抵のことには関心を示さないんだけど、私の交友関係とかは何故かすごい聞きたがる。でもその感覚は何となくわかるから別にいい。でも今回のことだけはバレると厄介だ。
変装していこう……そう心に誓った夜だった。
……………
………
…
翌日、マスクにサングラス、大きめの帽子で変装した私は、歩いて駅前へと向かった。
ダイエット中なのだ。それにあそこのカフェはケーキが美味しいって有名だし、お腹を少しでも減らしておきたい。
そうしてルンルン気分で歩く私は、つい嘶いたお腹をさすってしまった。昨日のケンさんの言葉が脳裏に浮かぶ。
『隕石に刺激を与えると能力が発動してしまう。君の場合はお腹だ。気をつけろ』
腕や脚にかかりだす靄を見てゾーッと冷や汗がでる。せめて物陰に隠れて変身しないと……
キョロキョロと見回し、何かないか探す。すると、偶然近くに停めてあった車が目にとまった。あそこだ!急いで陰に隠れると、その瞬間全身が靄に覆われ、少しの浮遊感のあと例の姿に変身していた。危機一髪だった……
不幸中の幸いか、来ていた服はそのまんまだ。これで裸にでもなっていたら大変だったが、これならマスクとサングラスもしてるし、何とかなるだろう。
そうしてサングラスの奥に真っ赤な目をギラギラさせながら、私は駅前のカフェへ向かった。
カランカラン
「いらっしゃいませ…ぇ?」
少し不審がられたようだ。急いで周囲を見回し"みんな"を探す。すると、こちらに向かって手を振るロングヘアのお姉さんがいた。きっとあれだ。側に向かうと、お姉さんは親しげに話しかけてくれた。
「こんにちは、ハルちゃん。私が電話で話したレイよ」
「あ、こんにちは……すみません、途中でつい変身しちゃってそのまま来ちゃいました」
「その姿で来たときは驚いたわよ……まあ、座って」
そう言われ、お姉さんの正面に座った私だったが、少し違和感を感じた。
「そういえば、他にも来るんですよね?まだ来てないんですか」
「1人は来たんだけど、今お手洗いに……っと、ちょうど戻ってきたわ」
レイさんが振り向いたほうを見て、私は驚いた。それは昨日会ったばかりのケンさんだったのだ。顔見知りがいたことで少し緊張がほぐれる。
「お、ハルちゃん……好きだね、その格好」
きっと私が変身していることを指しているのだろう。嫌いではなかったので、あえて弁解せず微笑んだ。
「もう1人来る予定なんだけどね、……まあ先に始めましょうか」
腕時計を見ながらそう言うレイさんは、腕時計から目を離し、鞄から書類を取り出すと机の上に並べた。
「これは危険能力者を集めた資料よ。特にこの近辺によく出没するのはこの2人」
レイさんが指差した先には、似たような仮面をつけた人物が2人映っていた。1人は腰まであるツインテールが印象的だ。もう1人は恐ろしく逆立った髪の毛が目立つ。
「気付いたと思うけど、この2人がつけている仮面……。これはサマーレインという組織の制服のようなものよ。この仮面をつけた奴らを見かけても絶対に関わらないで」
真剣な目で訴えるレイさんに圧倒され私はただ頷いた。隣に座っているケンさんも、仮面の2人の写真を見て怒りを噛みしめたような表情をしている。……一体この仮面の2人はどれほど危険な能力を持っているのだろう。それを聞こうとしたその時、レイさんの携帯の着信が鳴り響いた。
電話に出るなり、遅いとか、遅れてるというふうに叱るように何かを言っていたレイさんだったが、何を聞いたのか、急に顔色が蒼ざめた。そして、すぐ行く、というと耳から携帯を離し、思い詰めた表情で私に言った。
「サマーレインが……現れたそうよ。場所はすぐ近くの公園。今回ばかりは私たちだけじゃ勝ち目がないわ。お願い、ハルちゃん。その能力で協力してくれない?」
「え、ええええええ!?」




