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勇者になった少年  作者: Precious Heart
『ミオの花』編
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『道中』


 アルカナ市街まで後10分程の所。

 シンとミオの2人は最後の休憩としてミオが軽食で用意したサンドイッチをちょっと早いが食べていた。

 瘴気の量次第ではアルカナ市街で休憩を取る余裕がなくなるからだ。


「そう言えば、ミオって魔法使いなの?」


 シンはサンドイッチを頬張りながら、朝のドタバタですっかり忘れていた質問を訊ねた。


「どうしてそんな事訊くんですか?」


 質問に質問で返すミオ。

 だがその顔に疑問の色は一切ない。


「むっ、分かってるでしょ? 

 そもそも僕が勇者だって知ってたぐらいだし」


「はい」


 その悪びれもしない笑顔での肯定に、シンは溜め息をついた。





 魔法使い。


 この世界における魔法を扱う者を指す言葉。

 しかし、この世界の魔法に4大元素による分類とか精霊との契約による行使という概念はない。

 そもそも、この世界には物語りに出てくる様な精霊等存在しない。

 特例として、神獣がいるがそれはひとまず置いておこう。


 さて、それではこの世界でいう魔法とは何だろうか?


 この世界における宗教では、

『科学とは神の作りし理を知り利用する力。それに対し、魔法とは神の作りし理をねじ曲げる力』

 と、定義されており、魔法を扱う者は道理に反してでも行使する意志と力が求めらている。


 実はこの解釈はあながち間違っていない。


 魔法について科学的な答えをすると、

『事象を書き換える魔力というエネルギーを活用した結果』である。


 魔力は人間の場合、心の中にある核で造られる。

 つまり、核がないと魔力は造れず、魔法を扱う事は出来ない。

 そして、核は誰もが持っている訳ではない。

 魔法の国『リラ神国』では国民の8割以上が核を保有していると言われているが、他の国では国民の半分程度、剣士の国『インディゴ王国』では3割未満と推定されている。


 それでは核があり魔力があれば何でも出来るのかと言うと、そうでもない。

  

 魔力には波長がある。

 核で造られた魔力はその個人の資質・意思によって波長を帯び、血液に乗り体中を駆け巡る。

 その波長を帯びた魔力を外に放出すると事象が書き換わる魔法が発生し、込められたら魔力の量で発生する魔法の効果も変わる。 

 分かりやすく火の魔法を例で出すと、

 核で火の波長を持った魔力を造り、

 少量の魔力を放出すると『ファイヤーボール』、

 大量の魔力を放出すると『地獄の劫火』と言った具合である。

 この火の波長を持つ魔力を造れるのはかなりいい方で、中には髪の毛にしか影響を及ぼさない波長しかなかったり、人によっては己の波長を知らずに生涯を終える事も珍しくない。

 それだけ波長は幅広く、己のセンスが物を言う世界なのだ。


 補足すると、核・波長・量の3つを魔法の三大要素と呼ぶ。

 



 さて、そんな魔法の背景がある中でミオはというと、


「そうですね、私は魔法使いですよ」


 と、「で、どうなの?」というシンの再びの問にそう返した。


「そっか。ちなみに、波長とか魔力量はどれくらい?」


 魔法使い自体は特に珍しい訳ではないから素直に受け止め、次にどれくらい使えるか軽い気持ちで確認しようとして、


「波長で言うと私に造れない波長はないですね」


「……はい?」


 先ず、ミオの発言に目をパチクリさせ、


「魔力量なら全世界を敵に回しても勝てると思います」


「…………はい?」


 続いてのとんでもない発言に我が耳を疑った。

 どんな波長でも造れ、全世界を敵に回しても勝てる何て、一騎当千の英雄達にだって出来はしない。

 もし、そんなのいるがいるとしたら魔王しかいない。


(まさか、ミオが今回の事件の主犯?)


 そんな疑念が頭を過ぎる。

 もし、ミオが魔王級の魔法使いだとしたら一夜で1つの市街を壊滅させるなんて造作もない事だろう。

 だけど、そう仮定すると瘴気の確認で矛盾が起こる。

 次話で詳しく語るが、瘴気は魔物の魔力が原因だからだ。

 そこまで考えて、ミオの口角が普段より上がっている事にやっと気付いた。


「ねえ、ミオ?」


「何ですか、シン?」


「今のってもしかして冗談だったりする?」


「もしかしても何も、冗談に決まってるじゃないですか」


「ですよねー!」


 シンは大声を出し一気に脱力する。

 もう馬鹿らしくなり、思考を放棄したくなる程だ。


「もう真面目な話してるんだから、からかわないでよ」


「すみません。まさか真に受けるとは思わなかったので。

 本当の所を言うと、私に核はありませんのでいざという時は宜しくお願いしますね」


「うん、それは勿論」


 ミオの謝罪とお願いに気持ちを改める。


「よし、それじゃあそろそろ行こうか。

 サンドイッチ、ご馳走様でした」


「はい」


 サンドイッチを食べ終えたのを確認し、2人は腰を上げる。

 問題のアルカナ市街は遠くに見えていた。




 

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