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【緊急】未来から助けを求められました。明日の婚約破棄を、なぜか当事者の私が止めます

作者: しぃ太郎
掲載日:2026/08/16

反省しています。

ホラーとは……。ギロチン……ホラー……?

 年に一度の卒業パーティー。

 その晴れ舞台に、私は沈痛な面持ちで臨んだ。


「アリア!今日、この場をもって貴様との婚約を破棄する!」

「……あぁ、アリア様が睨んでいますわ。怖いです、殿下」


 あ〜、ついに来ちゃいました。

 私、とある公爵令嬢でして。

 巷で“いつかやらかすだろう”と言われていた第一王子の婚約者をやっておりました。

 やはり、市場は正しい。

 幅広く世間から意見を聞くのは大事ですね、はい。


「……陛下のご判断でしょうか」

「いいや!しかし、聞けば貴様は――」


 はい、有罪。

 さらに罪を重ねないうちに、最短で。

 巷で流行りの“時間削減”です。


「はいアウトーー!影の皆様!衛兵!すぐに回収よ!」 


 パンパン!

 私は手を打ち鳴らし、各所に隠れていた衛兵や王家直属の影――通称ヤバい部隊(私も怖い)を呼ぶ。


「……は!?」

「え!?ちょっと待ってよ……!こんなの聞いてない……!」


 第一王子と、おっと貴女もいました。

 浮気相手の男爵令嬢。


「黙らっしゃい。一年後の貴女のおかげよ。感謝することね」

「は!?」


 親切に教えてあげても、彼女には意味がわからないでしょうねぇ。

 でも、いいの。

 ウザったい頭の中の声を消すために頑張った私が、どうしても言いたかったのだ。


 ――さて。次よ、次。


「殿下がご乱心だわ。すぐにお連れするように」

「……な!?待て、俺は――」


 そのまま見えないように口を塞がれて、ボディブローを食らった殿下と男爵令嬢は連れて行かれた。


 ああ、面倒だ。

(これでいいのかしら?) 


『これでいい?大粛清とやらは回避できた?』


 私が投げやりに聞くと、前回よりもさらに鋭い声が返ってきた。


『黒幕は第二王子じゃなかったわ!今すぐその場から立ち去って!私を連れて走って逃げて!』


 走れ?このドレスの格好で?

 無茶言うな。

 しかも貴女、すでに連行されているし。

 どうしましょう、私だけ逃げようかしら。


 仕方なく、ここで一番目立つ騎士に声をかけた。


「申し訳ありません!ショックのあまり持病が……。急いで馬車まで連れて行ってくださらない?」

「ええ。大丈夫ですか?……失礼します」


 端正な顔立ちに、一般人ではないと、ぴんと来てしまった。

 お忍びか、馬鹿の監視か知らないけれど、ここに大物がいたわ。


「まあ……王弟殿下?」

「久しぶりだね?リリア」

「アリアですわ。えーーと……エドワード殿下」

「ああ、すまないアリア。因みにジェームズだね。エドワードは陛下だ」


 そうでした。

 王族の名前なんて似たり寄ったりですし、間違えても仕方ないわ。


『王弟!?その男が黒幕だって……!駄目よーー!』


 まだ叫んでいるわ。

 助けてあげたのに、今度は黒幕?

 説明が下手なのよ、貴女は。


『うるさいわね。なに?ギロチンにでも立たされてるわけ?』


 結局、私を抱き上げてくれたのは王弟殿下だった。

 高貴な方を煩わせるなんて忍びない。

 けど、ロイヤルだわ。

 まだ二十代ぎりぎりでしたっけ?

 うーーん、余裕で有りだわ!有り寄り過ぎて無しがゼロだわ。


『……この悪役令嬢が……!恨んでやるわ……!』

『ええ、どうぞ。別に最初からあなたの人格なんて信じてもいないし、ご勝手に』


 ――ザシュッ!


 どこか遠くで何かが切れる音と水音が聞こえた気がした。

 まあ……私には関係ないわね。

 一年後の男爵令嬢の末路なんて。


 下手したら、“あの子”は一ヶ月後には同じ末路かもしれないんだもの。


『結局、短絡的なあなたが自分の首を落としてるだけじゃない』


 もう声が返ってこない。

 よし。これでようやく眠れるわ。

 ずーーっと喚いていて煩かったんだもの。

 ……さようなら。生まれ変わっても安眠妨害はしちゃ駄目よ。

 

 少しだけ、しんみりしたような……しないような空気が流れた。

 でも……抱き上げられるなんて初めて――。

 さすがの私も、心が疲れたみたい……。

 逞しい胸に身を預けようとした瞬間。


 そんな気分をぶち壊す声が、再び頭に響いた。

 

『ねぇ!助けて!私、貴女を追い詰めるつもりはなくて!このままじゃ、私は消されちゃうわ……!』


 おいおいおい!

 いや、ザシュ!で終わったよね!?

 なんでまた始まるの!

 さっきと同じ、男爵令嬢の声だし!

 

 ……んん~?

 あ、もしかしたら“今の彼女”?

 考えても、しかたないかしら。

 よくわからない原理だわ……。

 でもそれなら、一回目よりは長くないかぁ。

 王弟殿下までいたしね。


『あ、王子もそのうちそっちへ行くわよ。さようなら』

『ちょ、ちょっと話を聞いて……!お願いよ』


 聞きたくないけど、どうせ勝手に嘆いてくる。


「……はあ。本当に浮気者って……最悪……」

「ははは。あの小さなお嬢様がこんなに重たくなって……。悪かったね、うちの甥が迷惑をかけて」


 しまった。つい、愚痴が口から溢れていたみたいだ。

 でも、え〜と……ジェームズ殿下の声が少しだけ脳内の喚き声を遠ざけてくれたのだった。


 ――でも、重たくなっては酷いです。王弟殿下。


 ◇◇◇


「すまなかった」

「騙された」

「君は私を愛しているだろう」


 はい、いただきました。

 定番の三連コンボ。

 ではこちらは、必殺コンボで参りましょうか。

 まずは牽制の一発。


「あぁ、婚約破棄のやり直しをお願いします。横やりを入れてしまって申し訳ありません。全部聞きますから、ここでどうぞ。確か……私が男爵令嬢を虐めた所で終わりましたっけ」


「違う!アレは忘れてくれ。お願いだ」


 ふむ。責任転嫁と謝罪ばかりでダメージを食らわない生き物みたいだ。

 横へ受け流すのが上手すぎる。


「うーーん。私に権限がありませんし?継承権争いに巻き込まれ、哀れに散った男爵令嬢が……。元殿下の背後に立っていますよ」


「は!?」


「ほら」


 私は王子の肩の方を指さす。


「……やめろーー!!」


 王子は頭を抱えて絶叫した。


 ま、嘘だけど。

 反省しときなさいな、王子様。

 一時期、勝手に脳内に住み着いていた彼女への手向けである。

 必殺技はホラーだったよ、ほら。

 でも、立ち去る時に一瞬だけ、本当に見えてしまった。

 元王子の首に腕を絡ませる男爵令嬢が……。


 いやいや。

 やめてくれ。

 私の視界までおかしいの!?



 1ヶ月後。


(はあ……。私って呪われているのかしら)


『助けてください!貴族牢で世話係をしているメイドです!毎晩、元王子に迫られて困っています』

『……まぁ。それは可哀想に。でも、普通は女性を近づけるわけがありませんが』

『……王妃様が『可哀想だから』と』


 ――というわけで。

 会いたくないのに、また王子の前に立った。

 あ、元王子でした。


「お久しぶりです、元王子。とりあえず切り取りましょうか、それ」

「は?」


 ソファに寝そべっていた彼が、ぽかんと口を開いた。

 まったく。

 名ばかりの“牢”だわ。お菓子まであるじゃない。

 なにも分かっていないらしい元王子に、最低限の説明をしてあげる。


「貴方と関わった女性から、助けを求められて困っているのです」


 私は、必死なメイドを助けるために迅速に対応した。

 ――ついでに、この元王子の助命のためでもある。


 メイドは助かるでしょう。

 ですが――。

 新たに王太子を立てた“彼”がこのまま許すとは思えない。

 元王子は、時間の問題でしょうね……。


 私の背後には、王宮医が三人並んでいる。

 もちろん手配済み、許可も下りているわ。

 でもこれで、この人に不幸にされた女性はいなくなるかしら?


 ――そういえば。


 ああ、ずっと背中に抱きついていた男爵令嬢がいないわね……。

 きっとお花畑で待っているでしょう。真実の愛はそこで叶いますかね?



 廊下に出ると、心配げに眉を寄せて話しかけてくる人がいた。

 ずっとここで待っていたらしい。

 大概、この人も過保護な気がする。

 私の本性を知っているのかしら?

 とある人が言ったように、冷酷で図太い悪役みたいな令嬢なのにね。


「アリア。君が前に出なくても――」


 大きな手が優しく肩を叩いてくれる。

 ふふふ。

 誰かは内緒。


 私の真実の愛――?

 その答えは、高い場所にあるお花畑でわかるのかもしれないわ。



 

夏。ホラーです、ほら。寒くなります……。

お目汚し失礼しましたーー!(泣)

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― 新着の感想 ―
淡々と問題を片付けていくところが面白かったです。最後まで何とも言えない軽妙さが続いて、楽しく読めました。
王妃も何とかしないとヤバくない?絶対アリアと王弟を目の敵にしてるよ。
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