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ランチのひととき

女子社員は、食後に悩みを打ち明ける。

作者: 幻邏
掲載日:2026/06/16

においの想像が簡単にできる方、デリケートな方はご注意ください。

お食事中やおやつどきに読むのは、避けた方がいいかもしれません。


 今日の俺、梅雨時期ということもあり、さっぱり系で作ってくれたカミさん特製弁当を、社員ダイニングで食す。

 梅チャーハンがご飯エリアに入っていて、甘酢に潜らせた唐揚げに小分けパック大根おろし(別添え)をかけて食べる。

 チーチクなどのさっぱり系も多くて、ダレた体に嬉しい。美味しかった。

 ちなみに娘のお弁当は、甘酢に潜らせた唐揚げにタルタルたっぷりな、チキン南蛮サンドイッチらしい。

 わざわざ、娘と俺の弁当で作り分けてくれる。俺も娘と同じサンドイッチでいいのに、大変だろうと言ったら、チャーハンもパンも1人分しかないから、これでいいとのことだった。


「ふぅ、ごちそうさまでしたーっ!」

「ごちそうさまでした」


 今日もパーテーションを隔てた俺の後ろ側には、俺と同じ営業部所属の宮原と伊藤がいるようだ。宮原は元気いいな。


「イトちゃん、顔が暗めだけど、ご飯じゃ元気でなかったー?」


 伊藤の顔色が良くないのか。宮原が心配の声をあげているな。


「お弁当は、有名店のベーグルで作ったサンドイッチだったから、もちろん美味しかったけど……」


 買ったベーグルを、わざわざサンドイッチにしてるのか、伊藤……手をかけてるな。


「もしかして、なんか起きた?」

「うん……」


 伊藤家のトラブルか? それとも仕事でなんかあって、まだ俺にまで話は回ってきていないのか……。


「えっとね、その……旦那が、毎日のように臭いって言ってるの……」


 えっ……その、あの、い、伊藤からは、その、変なにおいみたいなのは、していないはずだが……。


「それをね、旦那が自覚しているの」

「ほえ?」


 ……ん? どういうこと? 宮原からも素っ頓狂な声が上がるな。


「家に帰ってくるなり、「オレ、臭い!」って入ってくるのよ」

「そこは、ただいまが先だよねー」


 って、なんじゃ、そのコール。

 いや、気持ちはわかるよ。俺も外回り1日続いた時なんて、なんか違うんだよな……。汗拭いてても、むわっとしてるっていうか。もわっとしてるっていうか。


旦那さん(じぶん)(にお)いを自覚してるって、新しいパターンじゃないー?」

「ね。体臭って自分で気づきにくい上に、指摘もしづらいから、なかなかって感じだけど、パターン違っていてびっくりしたわ」


 宮原のツッコミ。俺も同意だ。

 自覚なく振り撒いているわけじゃなく、自分でわかっているってどういう状態だよ……。

 汗用の使い捨ての、ひんやりしたウェットティッシュみたいなのだってあるし、対策とっているってことだよな、(にお)いを自覚してるなら。


「自覚してるってことは、なんかしら対策もしてるんだよね」

「そうなのよ。デオドラントスプレーもシートも使っているけど、突き抜けるって嘆いていて」


 あ、そうそう。そのデオドラントってやつだ! 名前出てこなかった。伊藤はよくスッと出てくるな、すげぇ……。


「食事もお肉減らして、お野菜系とか豆腐類にして、体臭きつくなりにくいようにとか、自分で調べて色々やってみるも、今いち効果出てないっぽくてね」

「おぉ……自分で調べるって、本当に焦ってるんだね」

「うん、でもご飯ってすぐに効果出ないのもあって、ヤキモキしてるわ」


 伊藤さん(旦那)自身、ご飯を工夫したりしてるんだな。

 でも、伊藤と宮原の旦那とは、飲み仲間なこともあり、月に1回程度は会っているけど、そんな感じはなかったがなぁ……ごく最近の話なのか?


「シャワーで済ませていたお風呂も、しっかり湯船に浸かって、お肌に優しい石鹸使ったりもしてるのよ」

「お肌に優しいは意外! 体臭対策を謳っている柿渋なんちゃらーみたいな石鹸使いそうなのに」


 うん、俺もそう思う。ボディーソープも炭とか柿渋とか書いてあるやつって、夏の汗対策に! みたいな宣伝文句シール貼ってあるし。


「去年だったか一昨年だったかに、「汗すごいから体臭対策〜」とか言って使ったら、肌荒れ起こしたのよ。旦那には合わなかったっぽくて」

「うへぇ……対策取ろうとして、逆に変な目に遭っちゃったのかー」


 対策結果が残念な事に……うわぁ、そんな事もあるんだなぁ……。 


「うーん……。あ! ストレスかも! 環境の変化とか起きてない?」

「今、出向先で仕事しているわ」

「それだ、多分、それ!!」


 うん? 宮原はなんか掴んだようだぞ。


「ストレスがすごいと、体臭きつくなりがちなの!」

「え、そうなの?!」


 え、そうなの?!


「あたしもそうなんだけどさ、ムカつ……めんどくさい客先にルートで行かなきゃいけない日だった時、においがヤバいの。家帰って靴脱ぐと「うげっ」ってなりがち」

「え、行き先ひとつで、そんなに変わるの?」


 宮原……ムカつくをめんどくさいに言い直しても、さほど変化はないぞ。

 しかしあれだ、それ俺も自覚あるかも……。めんどくさい客先の時って、大抵無駄に世間話ダラダラされて、さっさと帰りたいのにそうもいかず、結局いつもより遅い時間に帰宅。

 風呂に直行する時間になるんだよな。そんで脱衣所で服脱いでいると、1秒でも早く風呂に入りたくなる体臭。

 あれ、時間が長かったせいってより、ストレスだったのかも、って思えるな。そういうの聞いちゃうと……。


「うん。あと気合い入れて、カッコいいめのパンプス履いてプレゼン臨んだ時とかも」

「足への負担で……ストレス……なのかしら?」

「かもしれなーい」


 伊藤は、営業事務や、他の部署のヘルプを入っていて、内勤メインで外回りはないから、もしかしたらピンとこないかもしれないが……。


「あ、言われてみれば、私もほんのり覚えが……」


 えっ……!

 実は『いつも帰ったら「うーん」ってなりがち、他部署にヘルプった時は、そんなに、においとか気にならない』みたいなの発生してるって言われたら、ちょっと俺ショックだぞ。


「ね、あるよね」

「うん。どの部署って明確なものはないけど、めんどくさい人に絡まれた日、言われてみれば……って気がするわ」


 あー、あの部署には伊藤に懐いている新人、あっちの部署には伊藤にうざ絡みする奴が居たな……。

 ほんのり風の噂で聞く程度で、本人から相談の類はまだ来ていないから、放っておいてるけど。伊藤も伊藤で大人の対応してるっぽいし。


「デオドラントグッズ増やして対策しようにも、何がいいのかって2人で悩んでいたのよ……」


 まだ、本格的な暑さになっていない梅雨時で、色々対策した方がいい状態だと、夏を迎えるのがすごく怖いだろうなぁ。


「とりあえず、ストレスの線で話をしてみて、思い当たるもの訊いてみたらいいんじゃないかなー?」

「そうね、ちょっと言ってみるわ」

「一応、夏の暑さ・体臭対策のグッズは知っているけど、まずストレス源を取り除けそうか確認してみて〜」

「うん、ありがとうね」


 え、宮原なんか対策知ってるのか?! ちょっと、俺がそれ知りたいんだけど……!!



――翌週


 今日の俺、珍しくサンドイッチ弁当だ。

 カミさんが偶然、テレビに出ていたナントカカントカの食パンを手に入れたらしい。パン屋の名前が、カタカナな上に長すぎて覚えられなかった。

 そのパンを分厚くカットし、具材はたっぷりめのたまごサンド。これまたテレビでやっていた、喫茶店の名物料理を模したものらしいが、馴染みのないカタカナの喫茶店の名前を、俺覚えられない。

 たまごサンドと、野菜たっぷりソースチキンカツサンド。

 ただ、テレビで出ていたお店と同じようなパンの厚さにすると、絶対に俺は食べきれないため、ツインソフトの食パンより気持ち厚めのサイズだ。

 パンも具材も美味しくて、ペロリと食べれたはいいが、腹は重い。



「宮ちゃんの言った通りだったわ」

「お? 進展あり?」


 後ろからの声。いつも通り伊藤と宮原。

 これは、なんの話だ??


「旦那のストレス源が見つかって、(にお)いが減ったのよ」

「おぉ! やったじゃん」


 おぉ、伊藤さん、良かった!

 でも、出向先での仕事がストレスなら、そんなに(にお)いって減らなくないか??


「原因は運転だったわ!」

「え?」


 え?


「あの話があった2日後に、車を車検に出したのよね。んで、車検を申し込んだ時は、まだ電車通勤してたから、代車なしでお願いしちゃってて。気づいた時に問い合わせたけど、代車はもうなくて。それで車検の間は、旦那は電車通勤したのよ」

「あららー」

「車検お願いしたところ、家から徒歩で行ける場所だったから、尚更ね」


 あー、普段使わないと、「まぁ、いっか」ってなるんだよな。うちも車検の時そうだった。

 駅から少しだけ歩く程度の場所だったのもあって、車を車検に出したら電車で帰ったし、後日車検終わった日に、俺が仕事帰りにその駅まで行って取りに行ったもんなぁ。


「電車で通勤時間がちょっと伸びたから、ストレス更にかかるかな? って心配していたんだけど、旦那、実は運転嫌いだったらしいわ」

「えー! 意外ー。車持ってるくらいだから、好きなのかと思ってた」

「趣味の車じゃなく、足扱いの車なのよ」


 伊藤さんは、運転が好きではないのか。

 まぁ、駅がそれなりに近くて電車通勤できる場所で、徒歩や自転車圏内にスーパーとかあると、車って無くてもいいって、住んでいる場所によってはなるもんな。


「それで、仕事前に運転で気を張っている状態や、仕事終わってからも気を張って運転して帰ってくるっていうのが、すごくストレスなことに気づいたって、本人が言ってたわ」

「あー、なんとなーくわからなくもないねー。電車だと……言い方アレだけど、乗ってしまえば、着くのを待つだけだもんね」


 確かに、降りる駅らへんで気をつければいいもんな。大体いつも乗る電車なら、何分くらいで着くとかわかるし。

 それにしても、本当に原因がわかってよかった。



「あ、そうそう。においと言えば、営業部には『スメハラ黙っていたハラスメント』っていう独自ルールがあるよ」

「え、何それ。初めて聞いたわ」


 あー、あったあった。夏前に毎年告知してるよな。そろそろそんな時期だなぁ。

 伊藤は色々他の部署回っていたのもあって、知らなかったのか。


「お客さんのところに行くのに、変なにおい振り撒いていないか確認しあって、指摘したりしても、ハラスメントにならないっていうルールなの。むしろ黙っていたほうが、お客さんからのクレームになったりする分、逆にハラスメントだよねってなってね」

「あー、(にお)いのクレームって、後からくるものね。直接言いづらいし」

「そそ。柔軟剤とかでにおいきついと、お客さんも指摘しづらいしねー。内部で確認大事」


 そうなんだよな。洗濯しているのがわかる分、客も言いづらいやつ。

 今だと化学物質過敏症なんて言われていて、洗剤の匂いでも健康被害が出ちゃう人もいるって聞くしな。

 ……なんで俺、漢字だと覚えていられるんだろう。カタカナちっとも覚えていないのに。


「あー、それで誰かが洗剤を変えたけど、どぉ? みたいな話題が出ていたのね」

「そそ。ごめんね、説明してなかった」

「ううん、いいのよ。むしろこっちこそありがとう。旦那も自分から発してる臭いの原因を探れて安心してたわ」


 気をつけていても、感じ方それぞれって面もあるからなぁ。

 それにしても、ストレス……怖い……。個人差はあるだろうけど、そんな事も起きるんだな……。

 今年は早めに『スメハラ黙ってたハラスメント』伝えるとしよう。

▶︎▷▷諸注意

ストレスでニオイが……というのは、個人差があります。

ストレスがあるから臭いって訳でもありません。

香りにも好みがあるので、いいニオイ、苦手なニオイ、世の中色々あると思います。

ニオイで具合が悪くなりやすい方、これからの季節、様々なニオイが増える気がします。お気をつけください(´・ω・`)

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― 新着の感想 ―
スメハラ、難しいですよね。 自分にとってはいい匂いでも、相手にとっては……なことたくさんありそうですよね。 先日某遊園地の絶叫マシーンで死にかけた時、足がいつもより臭った気がします。 ストレス、恐るべ…
旦那様が仕事から帰って、廊下やリビングを歩く時… 「歩いたところに毒キノコがはえるから、早くお風呂入ってくれない?」と言います。 もののけ姫のししがみみたいに、生えては枯れ、生えては枯れるキノコが見え…
ナントカカントカ、にむちゃくちゃ共感しました! 本当にカタカナの名前覚えられない……笑。 ストレスかはわかりませんが、ドキドキハラハラしたら嫌な感じの汗をかくのでそのせいかも知れませんね(;´・ω・)…
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