消せない過ち
クソ野郎の最低な話
あれは僕が25歳の時。
妻が第2子を妊娠していた時。
その頃は妻のことを『女』ではなく『妻』としか見れなくなっていた。
これは消せない過ちの話。
キミは同じ職場で働く2歳年上の後輩だった。
きっかけはなんだったっけ。
夜勤の帰り道が一緒で、偶然同じ夜中もやってるスーパーに立ち寄って、一緒に買い物した時かな。
「家この辺なの?」
それから少しずつ連絡を取り合うようになった頃。
『家来ない?』
キミから誘われた。
僕は既婚者で子供もいることは職場ではみんな知ってる。それでも誘ってきたってことはそういうことなんだろう。
正直嬉しかった。
ドキドキしたし興奮もした。
でも【不倫】になることは明らかだった。
どこから不倫かは人によって違うだろうけど、僕の中では妻以外の女性の家に1人で行くことは明らかに不倫だ。何もなかろうとそれだけでアウトだと思っている。
理性はやめろと言っている。
でもその時の僕は妻を女として見れなくなっていて、キミのことは女性として見えてしまっていた。
直接行って断ろう。勘違いさせてしまってたらごめん、と。
なんて優柔不断で、なんて最低な選択。
『…来て』
結局キミに誘われるがまま身体の関係を持ってしまった。
キミは自由奔放な人間だった。
高校生の時は売りをやっていて、女性もいけるバイセクシャルで、二股もしてるような人間だった。
当時は彼氏もいて、僕は2番目の男だった。
身体の関係、セフレみたいなもの。
割り切ってお互い欲望をぶつけ合う関係。
いつからだろう。
キミの僕を見る目が変わったのは。
なんでそんな甘い目で見つめてくるの?
『好き』
そんなこと言うタイプじゃないでしょ。
『好きって言って』
僕だって好きだよ。でも妻も子供もいる。今の家庭を壊せない。キミとは一緒になれない。
きっと僕はキミに恋をしていた。でも愛かと言われると違うと思う。
この時やっと気付いた。気付くのが遅すぎた。
妻のことは愛していたのか…
キミは子供を望んだ。
『結婚出来なくてもいい。あなたの子供が欲しい。』
『養育費もいらない。あなたの負担にはならない。』
なんて甘い言葉だったんだろう。
僕にはなんの責任もなく、ただ気持ちいい行為をするだけでいいなんて。
少し考えればわかってたはずなのに。
母子家庭の大変さ。1人で子供を育てるということ。
子供のこと。父親がいない、父親が誰かもわからないということ。
キミは妊娠した。
お腹も大きくなってきた頃、職場内で父親は誰なんだと話題になった。
少し経って上司に呼ばれた。
「どういう関係なんだ?」
頭が真っ白になった。
なんでバレた?
彼女の家に僕の車が停まっているのを見た人がいるらしい。それも一度や二度ではないと。
言い逃れは出来なかった。
その後の記憶は酷く曖昧だ。
年度末が近かったこともあり、仕事は退職した。とても続けられる状況ではなかった。
妻にも薄々勘付かれていたと思う。
彼女とは連絡を取り合っていたが、僕のことを嫌いになるように仕向けた。
そして逃げるように連絡を断った。
自殺も考えた。
橋の上から車ごと…
何度も何度も考えた。
キミから久しぶりに連絡があった。
『産まれたよ。男の子。名前は…』
なんて返せばいいんだろう。
「おめでとう」?
「無事に産まれて良かったね」?
もうなんて返したのかも覚えていない。
いずれにしろ最低な言葉だったと思う。
あれ以降キミからの連絡はない。
今キミがどこで何をしているのかもわからない。
キミに似ている人を見る度、逃げるように隠れてしまう自分がいる。
キミの匂いを感じる度に、胸が締め付けられる自分がいる。
キミの声を思い出せない自分がいる。
僕は今も過去から逃げている。
フィクションです。もう一度言います。これはフィクションです。
不倫はとても興奮して気持ちがいいことかもしれませんが、その何倍もの威力と時間苦しむことになります。自分や相手だけではなく周りの人も巻き込みます。一時の快楽に身を委ねると待っているのは破滅です。




