第三話 詠唱なき魔法
オーガが唸る。
「グォオオ……」
巨大な体がゆっくりと動く。
そして次の瞬間。
ドンッ!!
地面を蹴り
クロエへ突進した。
⸻
アイリスが叫ぶ。
「危ない!!」
クロエは横へ跳ぶ。
オーガの拳が
地面へ叩きつけられる。
ドゴォン!!
土が爆ぜる。
クロエは
少し驚いた顔をする。
「……速いな」
アイリスが叫ぶ。
「オーガよ!」
「普通の人間じゃ勝てない魔物!」
クロエは
オーガを見上げる。
「へぇ」
そして手を前に出す。
「まずはこれか」
⸻
酸弾。
⸻
酸の塊が
オーガへ飛ぶ。
直撃。
ジュウウウと
皮膚が溶ける。
だが
オーガは倒れない。
「グオオオオ!!」
怒りの咆哮。
クロエは眉をひそめる。
「……硬いな」
アイリスが叫ぶ。
「オーガの皮膚は硬いの!」
「普通の魔法じゃ効かない!」
⸻
オーガが腕を振るう。
クロエは
軽く跳んで避ける。
その時だった。
アイリスが
両手を前に出す。
そして詠唱する。
⸻
「炎よ!」
「我が魔力に応えよ!」
「敵を焼き尽くせ!」
⸻
炎が集まり
火の玉になる。
火球。
火球が
オーガへ飛ぶ。
直撃。
炎が爆ぜる。
しかし
オーガはまだ立っている。
⸻
クロエが言う。
「今の」
アイリスが答える。
「魔法よ!」
クロエは
少し考える。
そして
手を前に出す。
アイリスが
目を見開く。
「え?」
次の瞬間。
クロエの手に
火球が生まれる。
アイリスが叫ぶ。
「ちょっと待って!」
「詠唱は!?」
クロエが言う。
「必要なのか?」
そして
火球を放つ。
ドォン!!
オーガに直撃。
炎が爆ぜる。
アイリスは
呆然とする。
「……嘘」
「詠唱なしで魔法を……?」
クロエは
肩をすくめる。
「見たら使えるみたいだ」
⸻
その時だった。
オーガが
大きく息を吸う。
アイリスの顔が青くなる。
「まずい!」
次の瞬間。
オーガが咆哮する。
「グオオオオ!!」
同時に
突風が巻き起こった。
空気が裂ける。
風刃。
透明な刃が
木を切り裂く。
クロエの頬を
かすめた。
⸻
クロエの目が細くなる。
「……風か」
クロエは
オーガを見る。
魔力の流れ。
空気の動き。
構造。
すべて理解する。
クロエは
手を前に出す。
「なるほど」
そして
軽く呟く。
「こうだな」
次の瞬間。
クロエの手から
風刃が放たれた。
アイリスが叫ぶ。
「え!?」
「今の……オーガの魔法!?」
クロエは
肩をすくめる。
「見れば使える」
アイリスは
完全に固まる。
「そんな……」
「魔物の魔法まで……?」
⸻
オーガが
再び突進する。
クロエは
目を細める。
「なるほど」
「一つじゃ弱いな」
クロエは
両手を前に出す。
魔力が流れる。
炎。
風。
二つの魔力が
混ざり始める。
⸻
アイリスが
震えた声で言う。
「ちょっと……」
「何してるの……?」
クロエは
小さく笑う。
「試し」
そして
魔力を解き放つ。
⸻
魔法融合
⸻
巨大な魔力が
オーガを飲み込む。
爆発。
森が揺れる。
土煙が舞う。
⸻
煙が晴れる。
そこには
倒れたオーガ。
クロエは
軽く息を吐く。
「凄え威力だな...」
アイリスは
完全に固まっていた。
「あなた……」
「本当に魔女なの?」
クロエは
少し考えて答える。
「多分」
そして
小さく笑う。
「普通のじゃないけど」
⸻
森の奥で
兵士の声が聞こえた。
「こっちだ!」
「魔女がいるぞ!」
クロエが言う。
「……まだ来るのか」
アイリスが
クロエを見る。
「どうする?」
クロエは
オーガの死体を見て
少し笑った。
「逃げるのは飽きたし」
そして
静かに呟く。
「反撃開始」
「だな」
⸻
続く




