救国の婚約破棄~婚約を破棄をしたら国が救われた話
この年、ノア王国の王太子ケベックが行商人の娘を王宮に連れて来た。
曰く。
「アリーシャ!私は真実の愛に目覚めた。行商人のリリーに一目惚れをしたのだ。
よって、婚約破棄を申し渡す!」
「あーし、王妃様になるしょ?」
この国の公爵令嬢アリーシャは膝をつき。手で顔を覆った。
嗚咽が漏れる。
「グスン、グスン・・ケベック殿下・・・」
弟第二王子はアリーシャの肩に手をあて慰めた。
「アリーシャ姉上・・・・」
「グスン、グスン、グスン」
ケベックは平然と陛下と王妃に懇願した。
「父上!母上リリーを王妃にして下さい」
「あっ、母上、王妃教育なしで」
「あーし、堅苦しいの無理っしょ」
陛下はしばしの無言の後、重い腰をあげて宣言をだした。
「王太子は廃嫡!財産没収の上、平民になる。その女とともに暮らすがよい!」
「ええ、やっぱり?無理?」
「王妃になれないっしょ!」
「・・・衛兵、つれていけ」
ケベックは平民の服に着替えさせられて市井に出た。
王宮を出る瞬間。
陛下を始め。廷臣たちは涙を流した。
「ケベックよ」
「兄上」
「ケベック様!」
「「「「ケベック様!」」」」
・・・・・・・・・・・・・
この報告は即ノア王国の宗主国グレリア王国に報告された。
ケベックの廃嫡と第二王子が王太子になる報告・・・許可である。
グレリア国王は気だるい午後に報告を聞いた。
「・・・婚約破棄によりケベック王子は追放刑か。まあ、良いであろう。婚約破棄による追放刑は国是であるな。承認を与えよ」
「御意」
公示されたが・・・・
一人だけ反対する者がいた。
商人である。
「陛下!・・・・意見具申をします」
「何だ・・・誰だ?」
「わ、私はウェーベ商会長でございます。ノア王国の婚約破棄を撤回させて下さい」
「何故だ?我国の法である・・」
母上は婚約破棄をされてから内乱が起きた。
母上は第二王子と結婚し王位を継ぎ我が生まれた・・・それ以来、婚約破棄は禁止だ。
ここ30年、我が支配下で婚約破棄した国はない。
が、この商人は・・・そうか。あいつか?
「はい、陛下はノア王国に港をつくるように命じました。ええ、その資金を貸したのが私であります」
「そうか、そんなことがあったか。何故じゃ」
「はい、資金の貸し出しは王太子ケベックがサインをしています。廃嫡により王太子領が国家の物になりました。差し押さえ出来ません・・・兵を出しケベックを王太子に指定して下さい」
「それが・・・?何故、我国が兵を出さなければならないのだ?」
「資金はノア王国への貸し出しではなく、責任者のケベックへの貸し出しになりました!港を差し押さえようとも、港は王家直轄地になっております。陛下、兵を出し攻めて下さい!」
「う~ん。その港は我が艦隊の宿営地にもなる港じゃ・・・そちは処刑じゃ」
「えっ!何故、何故でございますか!!」
うっかり商人は陛下の統帥権に指示を出すことをしてしまったが、それだけ慌てていた。
夏の日の長い日に処刑され。国王はそのことをすっかり忘れた。
「よし、余の艦隊で各国を回るぞ!偉光を示すのだ」
・・・債務のワナ。港湾を整備するように命じられたノア国は慌てた。国家予算の三割を使わなければならない。
ウェーベ商会が資金を出したのだが、全て、資財はグレリア王国から運ばれ。人夫まで本国から連れて来られた。
ノア王国は全く関われなかった。
その時、交渉に当たったのが当時の王太子ケベックであり。
彼はサインの場所に自分の名を書き。王国の借金にはしなかった。
『俺が王になるのだ。王太子直轄地もあるぜ』
『しかし、殿下が亡くなれば・・・』
『いいや、賄賂を寄越せ。どうせ、港を借金の質に取り上げるのだろう?王家直轄地になったら厄介だぜ。
俺の名義にしたのもそのためだ。あの港はあんたにくれてやる。ノア王国内に王国を作れるぜ。どっちが得か?』
『まあ、よいでしょう』
・・・・・・・・・・・・・・・・
その後、ノア王国の港にグレリア王国の艦隊がやってきた。
国王自ら出むかえる丁重さである。
「グレリア国王に挨拶申し上げます」
「おう、ノア国王、ご苦労だったな」
「港の名は何じゃ?」
「はい、ケベックでございます」
「ほお、どこかで聞いたような。聞かなかったような・・・」
「グレリア国王陛下、パレードの準備をしております」
「そうか」
そのパレードを見守る子連れの一組の夫婦がいた。
「すごいっしょ!」
「ああ、リリーすごいな」
「お父ちゃん。肩車して」
「ああ、よいぞ」
この男が国を救ったとは誰も知らない。
だが、ノア国はその後の戦乱も生き残ることになる。
「ねえ。お母ちゃん。どうして、お父ちゃんと結婚したの?なれそめ教えて!あたいもハンサム捕まえたい」
「ミヤ、母ちゃんね。お父ちゃんに王宮でプロポーズされたっしょ」
「嘘だー!」
「ミヤよ。リリーは嘘は言っていない。父ちゃんが嘘を言って王宮に連れて来たのだ」
「わかんないよ」
この国の孤児院が立派なのは、旧王太子の寄付によるものであるが、その資金の出所がウェーベ商会からの賄賂をあてた。または売名行為だと云う者がいるが。
この男、幸せに暮らしている。
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