表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
タクシー運転手×異世界転生_隔勤転生 ~異世界でも俺は走り続ける~  作者: もしものべりすと


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

15/24

第十五章 西の森林

獣人の村の奥には、古い神殿があった。


 巨大な木の根元に作られた、自然と一体化したような建物。苔むした石壁には、動物たちの彫刻が施されている。


「ここが、神霊を封印した場所だ」


 村長が、神殿の前で立ち止まった。


「千年前から、我々はここを守ってきた」


「感謝する」


 道明は、神殿に向かって歩を進めた。


 入口には、扉がなかった。代わりに、光の壁がある。


「この壁は、御者にしか通れない」


「わかった」


 道明は、光の壁に手を伸ばした。


 触れた瞬間——壁が、消えた。


 中へと、道が開ける。


「リーゼル、来るか」


「はい」


 二人は、神殿の中へと入っていった。


         ◇


 神殿の内部は、予想以上に広かった。


 天井は高く、壁には壁画が描かれている。動物たちの姿。森の風景。そして——二柱の神霊の姿。


 一柱は、巨大な狼の姿をしていた。銀色の毛並み。鋭い眼光。


 もう一柱は、巨大な鷲の姿だった。金色の羽根。威厳に満ちた姿。


 その二つの像が、神殿の中央に——向かい合って、鎮座していた。


「これが、五柱目と六柱目の神霊——森の狼フェンリルと、空の鷲ガルダです」


 リーゼルが、説明した。


「フェンリルは、地を駆ける獣たちの守護者。ガルダは、空を飛ぶ鳥たちの守護者。二柱で、森全体を守っていました」


「なるほど」


 道明は、二つの像に近づいた。


 手を伸ばし——両方の像に、同時に触れた。


「起きてくれ。俺は、お前たちを乗せたい」


 しばらく、沈黙が続いた。


 そして——


『……誰だ』


 二つの声が、同時に響いた。


 一つは、低く唸るような声。フェンリルだ。


 もう一つは、高く鋭い声。ガルダだ。


『御者……だと?』


『千年ぶりか……』


「ああ。俺は、神崎道明。神の御者だ」


『なぜ、我らを起こす』


「世界を救うためだ」


『世界を……?』


「ああ。今、この世界は——危機に瀕している。黒鉄帝国が、再び戦争を起こそうとしている。それを止めるために——神霊たちの力が、必要なんだ」


 二柱の神霊は、しばらく黙っていた。


 それから——


『……お前は、どう思う、ガルダ』


『信じてみても、いいかもしれない。この男からは——嘘の匂いがしない』


『ふん。お前は、甘いな』


『お前は、疑り深すぎる』


 二柱が、言い争い始めた。


 道明は、黙って聞いていた。


 やがて、フェンリルが——ため息のような音を立てた。


『……わかった。乗せてやる。だが、条件がある』


「条件?」


『この森を——守れ』


「守る?」


『ああ。この森には、我らが守ってきた命がある。獣人たち。動物たち。植物たち。——それを、守ると誓え』


 道明は、少し考えた。


 それから、頷いた。


「わかった。約束する」


『……よかろう』


 二つの像が、光り始めた。


 銀色と金色の光が、道明の身体に流れ込んでくる。


 獣の力。鳥の力。


 それが、道明の中で——融合していく。


「……六柱、か」


『ああ。あと六柱だ』


 アウルスの声が、響いた。


『だが、ここからが——難しくなる』


「難しい?」


『残りの六柱のうち、二柱は——黒鉄帝国の領土にある』


 道明の目が、細くなった。


「帝国に、乗り込むってことか」


『そうだ。——覚悟は、できているか』


「最初から、覚悟はできてる」


 道明は、神殿を出た。


 外では、村長と獣人たちが待っていた。


「終わったか、御者」


「ああ。——ありがとう、守ってくれて」


「礼など、いらぬ。——だが、一つだけ」


「何だ」


「この森を——頼む」


 村長が、深々と頭を下げた。


「千年間、我らはここを守ってきた。だが、帝国の侵略が始まれば——この森も、危ない」


「わかった」


 道明は、頷いた。


「俺は、この世界を守る。——この森も、含めてな」


 村長の目に、涙が光った。


「……ありがとう、御者」


 道明は、馬車に乗り込んだ。


「行くぞ、リーゼル。次は——北の雪原だ」


「はい!」


 馬車が、走り出した。


 森を抜け、北へ。


 六柱目の「お化け」を乗せた道明は、さらなる旅へと向かっていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ