第5章:世界管理OSの乗っ取りと隠居
世界が俺たちを「消去対象」と認識したのなら、手段は一つ。システムに従うのではなく、システムそのものの書き換え――すなわち**「世界管理OS」の乗っ取り**だ。
俺は全200ヶ国の行政区に配置した55万人の弟子、そしてその指導下にある8000万人の民全員に、一斉に魔力パスを繋いだ。
執行:全人類魔力リンク「2の18乗(134217728並列)」
「全人類に告ぐ。これは、この世界を『俺たちのもの』にするための最終工程だ。全員、魔力回路を全開にしろ!」
俺の声が8000万人の脳内に響き渡る。 ガルドが構築した「世界経済魔導網」を逆利用し、本来は通貨や情報のやり取りに使われる回路を、純粋な魔力供給ラインへと転換。8000万人分の膨大な魔力が、一本の巨大な光の柱となって、ノース・ルグの中央塔――俺の元へと収束した。
供給魔力: 測定不能(無限に近い)
計算精度: 8000万人の脳を「並列演算機」として使用
接続先: 世界の根源「アカシック・レコード」
根源の座への侵攻:システム・オーバーライド
俺は溢れんばかりの魔力を指先に凝縮し、空間に直接「2の乗数魔法」を叩き込んだ。
「管理者権限、上書き開始!」
第一階層:物理定数の掌握 システムの「自己消去プログラム」が発動し、俺の周囲の重力が1000倍に増幅されるが、俺は即座にその数値を「1」に固定。酸素の消失も、分子構造の再定義によって一瞬で無効化。
第二階層:因果律のハッキング 「ザックが消滅する」という因果を、リセの「プラズマ連弾」で物理的に粉砕。ボリスが「事象の隙間」をナイフでこじ開け、そこへ俺が書き換え用の魔導コードを流し込む。
第三階層:管理者権限(Root)の奪取 世界のOSが悲鳴を上げる中、俺は「神の眼」で見抜いたシステムの脆弱性に、全人類8000万人分の魔力を一点集中。強制的にパスワードをクラックし、世界の中心にある「王座」へ俺の魔力紋章を刻印した。
頭の中に響く声(世界のシステム): 「警告:…………警告…………アクセス承認。新たな管理者:個体名『ザック』を確認。世界管理OSを再起動します」
ステータス確認(新世界の神へ)
視界が真っ白に染まり、次の瞬間、俺は「世界のルール」そのものを指先一つで操作できる感覚に包まれていた。
ザック(23歳) 男 レベル:ERROR(測定不能)
HP / MP: ∞ / ∞
称号: 世界管理者(Root)、魔法科学の始祖
権能: 全事象の定義、死者蘇生、物理法則の創造
「……終わったぞ。これでこの世界は、もう勝手に俺たちを消したりはしない」
俺が指を鳴らすと、スタンピードで荒れ果てていた土地が一瞬で肥沃な大地へと変わり、全人類の平均寿命が「300歳」へと書き換えられた。病も、老いによる苦しみも、俺の許可なしには存在できない世界だ。
結末:新世界の幕開け
「ザック先生……いえ、ザック様。今、世界のすべての『声』が聞こえます。魔法の効率が以前の1万倍になっています。これが、あなたの作った世界なんですね」 リセが、あまりの全能感に涙を浮かべて跪いた。
「おいおい、ザック。これからは俺が予算を組まなくても、あんたが『あれが欲しい』と思えば資源が湧いてくるのか? 商売上がったりだな」 ガルドが冗談めかして笑うが、その瞳には新時代への期待が満ちている。
「……死んだ奴らもバラせば戻せるのか。面白い」 ボリスは、物理法則を無視した解体(もはや創造)の準備を始めている。
俺たちは、もはや一国の支配者ではない。この世界の「OS」を書き換えた、文字通りの**「神」**となったのだ。
世界の管理者(Root)権限を手に入れ、指先一つで恒星すら消滅させられる全能の力を得た俺は、その玉座に長く留まるつもりはなかった。
「力による平和は、俺がいなくなった瞬間に崩れる。真にこの世界を救うのは、俺の全能ではなく、8000万人が自ら思考し、法則を導き出す『知性』だ」
俺は、全能の権能を行使する最後の仕事として、**「魔法科学の全書」**の編纂と、人類を導く「究極の教育システム」の構築を開始した。
1. 「魔法科学の全書」の封印
俺は「事象の地平」にアクセスし、この世界のあらゆる物理法則、魔導数式、そして俺が編み出した「2の乗数魔法」の真理をすべて一冊の書物――概念的データベースへと集約した。
封印の儀: 全能の権能そのものをこの「全書」へ流し込み、物理的な干渉能力を「知識」という形へ変換。俺自身のステータスは、全能から「世界で最も知識を持つ一人の人間」へとあえて戻した。
閲覧制限: 誰でも読めるわけではない。「他者を慈しむ心」と「論理的思考」、そして「一定以上の魔法演算能力」を持つ者だけが、その段階に応じた知識にアクセスできる階層型封印を施した。
2. 究極の教育システム「アカデミー・オブ・ザック」
リセを初代総長に据え、全世界200の行政区に「魔法科学アカデミー」を設立。55万人の弟子たちは、軍隊ではなく「教授陣」として世界中に散った。
カリキュラム: 読み書き計算から始まり、最終的には「世界のシステム(OS)」を理解し、自力でデバッグ(災害回避)ができるレベルの賢者を育成する。
格差の撤廃: 「神の眼」を教育システムに組み込み、個々の才能を最適に開花させるパーソナライズ教育を実現。
3. ザックの隠居:ノース・ルグの小さな農園
すべてを整えた俺は、世界皇帝の椅子を捨て、かつてすべてが始まったノース・ルグの村の片隅に、小さな家を建てた。
「ガルド、ボリス。あとはお前たちが『全書』の管理者として、人類が道を踏み外さないか見守ってくれ」
「やれやれ、世界を救って神にまでなって、最後は隠居かよ。まあ、あんたらしいがな」 ガルドは世界経済の安定を見届け、満足げに笑う。
「……たまには解体しに来い。いい肉が入ったらな」 ボリスは相変わらずだが、その手には武器ではなく、最高の料理を作るための包丁が握られていた。
数十年後:語り継がれる伝説
ノース・ルグの丘の上、白髪が混じり始めた俺は、教え子たち――新しい世代の魔法科学者たちに囲まれていた。
「先生、2の20乗(約100万並列)の演算に成功しました! これで砂漠に雨を降らせる術式が完成します!」
「いいぞ。だが、大事なのは計算結果じゃない。なぜその雨が必要なのか、その雨が誰を幸せにするのか、それを忘れるなよ」
俺の手元に「ステータス画面」はもう出ない。 だが、空を見上げれば、弟子たちが建造した魔導宇宙船が星々を目指して飛んでいくのが見える。
【最終ステータス】
ザック(80歳) 男
職業:隠居した農夫(元・世界管理者)
スキル:鑑定(趣味)、2の乗数魔法(生活便利レベル)、孫への読み聞かせ
世界はもはや俺の力を必要としていない。 人々は自分の足で立ち、科学の光で明日を照らしている。 俺は満足して、沈みゆく夕日を眺めながら、静かに目を閉じた。
物語はここで完結となります。
「魔法科学」という異端の力が、絶望に満ちた世界を塗り替え、最後には人々の希望へと昇華されました。ザックと仲間たちの伝説は、完成された「全書」と共に、永遠に語り継がれることでしょう。
素晴らしい冒険を、ありがとうございました。 また別の物語でお会いしましょう。




