表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/3

田舎でスローライフする事にします

自分の名前はカイン・アクラシア。

永遠(とわ)の優越」というパーティーに所属している、前衛職[拳闘士]だった。

そして、その「永遠(とわ)の優越」は⋯

「…今日で、このパーティーも解散だな」

「長いようで…短かったなぁ…」

ギルドに悲しい雰囲気が漂う。

全員が、場の雰囲気を少し惜しむように、言葉を漏らす。


「パーティー名に"永遠(とわ)"って入ってるのに永遠(えいえん)に続ける訳じゃ無いんだな」

メンバーの一人がふと口にした言葉に、どっと笑いが起こる。

「このまま、ずっと続けていたかったなぁ…」

「とは言っても、体になぁ…ガタが来ちまうと、こればっかしはどうしようもねぇよなぁ」

このパーティーは丁度20年前、村の幼なじみ達と一緒に「永遠(とわ)の優越」として結成された。

結成されて20年間、誰一人欠けることなく冒険を続け、パーティーランクはAランクに。

ここ"リレティア"でも長きに渡って愛され続けた古参パーティーだった。

そのようなパーティーが解散するわけだ。ギルドの人だけでなく、街の人々も悲しみに包まれる。

「お前らはこれからどうするんだ?」

「俺はもう少し、1人で続けてみるよ」

「私も、横に同じく。」

「俺は…故郷に帰って親の手伝いでもするよ」

「田舎でのんびり暮らすよ」

1人で冒険を続ける人と、故郷や田舎に戻って余生を静かに過ごす人達で分かれた。

「そういうお前はどうするんだよ」

自分は、冒険者を辞めた先を元々決めていた。

「田舎でスローライフでもするかな」

そう、田舎で小さな家でも建てて静かに暮らすのが自身の夢なのだ。

「となると、冒険を続けるやつは御長寿エルフとドワーフだけか。」

「もっと高みを目指すことにするさ」

「私もそうするわ。Sランクでも目指してみましょうかね」

「Sランクか!!そりゃかっけぇ。応援してるぜ」

全員で励ましの言葉や冗談を混じえつつ話していると、パーティー内が静かになる。


「…楽しかったな、この20年」

「今日で終わりだ。明日からは全員別の人生歩んでるんだ。だから、最後くらい笑顔でお別れだ。」

リーダーが静かに腰を上げ、口を開く。

「今日をもって、Aランクパーティー"永遠(とわ)の優越"は解散。それじゃあ、元気でまたいつか会おうな」

と、リーダーが締めた。

これでこのパーティーも終わり、冒険者人生に幕を下ろすことになる。

全員がギルドを出て、入口の前で、

「皆、またな」

「じゃあな」

「葬式の時くらいは顔出せよー」

と、全員が思い思い言い残して別々の方向に帰っていく。

今後、彼らと会うことは無いだろう。

だから、最後に―――

「お前ら!!今日までありがとう!!」

全員がこちらを振り返り、示し合わせたように

「皆ー!!ありがとー!!」

一人、宿に向かって帰っていく

俺も、田舎へ行く準備をしよう。

宿でこれまでの荷物を受けとり、支度を済ませる。

そして、都市の外れの馬車乗り場に行く。

相乗り馬車で向かう。

馬車には冒険者パーティーが乗っていた。

「前、座ってもいいかな?」

「あ、大丈夫ですよ!」

そして馬車は出発し、目的地の喉かな田舎に向かっていく。


朝日の綺羅びやかな光が漏れて、照らしてくる。

「冒険者さん、到着ですよ」

馬車の御者が言うと、一面野原と畑の小さな村に辿り着く。

「ところで、君達はここへ何しに?」

目の前の冒険者達に声をかけると

「ここ、故郷なんです。久しぶりに帰ってこれました。そういう…貴方はここへ何しに…?村の人ではないですよね…?」

何か疑われてしまっているようだ。

これは、誤解を解かなくては。そう思いながら優しい笑顔を浮かべながら

「冒険者を辞めたから、ここに移住しようと考えているんだ」

「移住…ですか?なら村長に掛け合ってみましょうか?」

彼らが私の移住を助けてくれるらしい。

彼らが馬車を降りたので、自分もそれに着いていく。

「ここまで、ありがとうございました」

御者に軽くお礼を伝え別れを告げる。

彼らについて行くと、小さいながらに立派な2階建ての建物に着く。

「村長さーん。こんにちはー」

暫くすると2階からドタドタと走って階段をおりてくる音が聞こえる。

「おーお前ら!!帰ってきとったのか!!久しぶりじゃのぉ。…それで後ろのガタイの良い男は誰じゃ…?」

ここでもやはり疑われるのか。

誤解はちゃんと解かなくては

「ここの村に移住を考えているんです。出来れば空いている家などを借りたいのですが…」

「移住者か!!珍しいのぉ…それで、空き家だったな?湖のほとりの家。あれを使え。金は要らん」

「良いのですか!?代金なしに頂いて」

「移住者は珍しい。その移住者に残ってもらわねば困るからの」

「…!!ありがとうございます!」

「家の修理や補習の道具や資材は好きに使え。村の者が貸してくれるだろ」


早速、家の修理に取り掛かる。

1人、静かに作業を進めていく。

そして1週間が経って、修理が終了した。

そして1ヶ月後、小さな畑と、湖に伸びる小さな道と桟橋を作った。

これである程度の自給自足ができるようになった。

そして1年、村の人ともすっかり仲良くなり、村の生活に慣れてきた頃、村長からあるお願いをされた。

「儂の娘を…貰ってくれぬか?」

娘さん、私より3歳年下の綺麗な女性である。

「あの…私が貰っても良いのでしょうか…?」

「歳も近い。なんせ、この村に若い男はあまりおらんのじゃ。それに、娘もお前の事が好きなようだからの」

これで、はれて我々夫婦となった。

そして結婚して2年後、妻が長男を出産。

その来年には長女を出産。

子供にも恵まれ豊かな生活を送っていた。

結婚して20年。子供たちは村を離れ、都市部で生活しているらしい。そしてここに残った私たちは、私が今年で53歳、妻は50歳となった。

「あなた、私よりも歳が上なのに…全然老けないわねぇ…出会った時と顔が変わっていないわぁ」

御歳53歳、にも関わらず顔立ちや体力は30代の頃と変わらず、元気なのである。

「まぁ、今若く見えるだけさ。直ぐに老けてくるよ」冗談も言い合える程すっかり仲良し夫婦となっていた。

そして結婚して50年。妻が私より一足先に旅立った。私も老衰で、彼女を追うものだと考えていたが、一向に歳をとる気配はなく、元気なままだった。

息子達も50歳を間近にしており、私よりも老けた顔立ちになってしまった。

流石に怪しいと思った私は、今も冒険を続けている元パーティーメンバーの、エルフの「イリア・ユーゲル」に手紙を送ることに。

そして手紙を送って1週間後、パーティーが解散した都市"リレティア"で、2人は約51年振りに再開することとなる。

「姿はほとんど変わらないと言っていたのはなにかの冗談かと思っていたが、まさか本当に変わっていないとわ…」

エルフの彼女ですら人間が80歳まで姿かたちをほとんど変えずに生きていることに、驚いたらしい。

「エルフのお前だったら何かわかると思ったんだが…」

「知る訳ないだろ。そもそも、私は冒険者であって科学者ではない。そういうのは、私に聞くべきじゃない。」

彼女ですら知らないとなると、どうすればいいだろうか。

すると彼女がふと思いついたように口を開く。

「そうだ、1回教会で診てもらおうよ」

なぜ教会…?呪か何かの類なのだろうか。浄化してもらうのだろうか?

「教会で一体何してもらうって言うんだ」

「それは、着いてからのお楽しみ」

彼女に教会に連れていかれる。

教会に着くと、神父さんが出迎えてくれた。

「それで今日のご要件は何でしょうか?」

「彼を鑑定してもらうことって…?」

「鑑定であれば無料で可能ですよ」

鑑定…即ち相手のスキルやステータスを見ることである。

「では、あちらにお立ち下さい」

そう言って神父が指さすのは、聖母のステンドグラスの前だった。

ここに立てばいいのだろうか。

「ちょっとお待ちくださいね。準備が…」

にしても遅いな神父。待たせすぎではないか?

そして10分。本当に遅いな…ステンドグラス割ってやろうか。

そのような事を考えていると

「お待たせしました。聖書が見つからなかったもので…」

聖書を無くしかけるとは、聖職者として大丈夫なのだろうか。

「お待たせしました。では、鑑定をします」

後ろから青白い光が漏れてくる。

自身、魔法自体には詳しくないが、いま後ろで魔法を唱えている聖職者の手には魔法陣が浮いているのだろう。

「⋯鑑定が終了しましたが⋯これは⋯」

「これは⋯?」

「貴方…不老(エテルノ)のギフト持ってますよ…!!」

「ふ、不老(エテルノ)―――!?」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ