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15-18

行間越しに、このまま二人でハネムーンを。

ぜひ、最後まで読んでいってください! ↓↓↓


コンコン、とドアノッカーの音が鳴る。

呼ばれてすぐに扉を開けると、少女が立っている。


「お兄さん、初めまして。私、隣の家に引っ越してきたリリーと言います。よろしくお願いします」


深くお辞儀をするリリーの手には、果物の入ったカゴが握られていた。


 ○ ○ ○


「ねえねえお兄さん、お兄さんはどこの学校に通っているの?」


家に訪ねてくるリリーの手には、いつも何かおみやげを持っていた。


「ねえお兄さん、私、まだお兄さんの名前も知らないわ!教えてください!」


玄関先で、いつもリリーは首を傾げてこちらの顔を覗き込んでくる。


「エディーお兄さん、数学が全然分からないの!教えてください〜〜〜」


ここまで走って会いに来るのか、いつも少し息切れ気味で喋りだす。


 ○ ○ ○


「エディー兄さん、私、やりました!合格です!これでエディーと同じ学校に通えます!」


少し久しぶりに会ったリリーの目は、いつにも増して輝いていた。


「エディー先輩、学校は楽しい?私は楽しいです!」


最初に会った頃から、彼女は随分背が伸びていた。


「エディー、今度どこか遊びに行かない?港町はご飯が美味しいお店がたくさんあるみたい。私いっぱい調べてきたの!」


進学してからは髪を伸ばしたようで、だいぶ大人びた印象になった。


「ちょっと、エディー!この前女の人と一緒に歩いてたでしょ!私見たんだから!」


指差し告げる彼女の声は、初めの頃よりずっと感情豊かだった。


「エディー、もう卒業しちゃうの?私、まだ入学したばかりなのに」


いつも走って会いに来ていたおてんば娘は、いつしか裾に泥が付いていることはなくなっていた。


 ○ ○ ○


「ねえエディー、もしよかったら、今度どこかご飯に……えっ、行きたいお店があるの?」


肩より下まで伸びた髪は、綺麗にまとめられ、新しい服によく似合っていた。


「ねえダーリン、ここから離れるとしたら何処に行きたい?海の見える街も素敵だと思うの」


いつしか、わざわざリリーが訪ねてくることはなく、もっとずっと近い場所に居るようになった。


「ダーリン、今度の週末、夫婦でどこか旅行に行かない?」


ずっとかけ足だった彼女の足取りは、今では少し後ろを歩いている。


「ダーリン、別れはいつだって悲しいものだから、あなただけはずっと私の側にいてくれる?」


彼女の目は昔からずっとこちらをまっすぐ向いている。


 ○ ○ ○




 ○ ○ ○


「ねぇ、ダーリン、今日はとっても天気が良かったから、あなたに会うのが楽しみだったの」


長く伸ばしていた髪は、ばっさりと短く切りそろえられていた。


「ここに来たら、もしかしてもう一回ダーリンに会えたりするのかと思っていたけど、駄目だったみたい」


目線を合わせてこちらに話しかけるリリーの手には、たくさんの花が入ったカゴが握られていた。


「ダーリン、もし今会うことができないなら、私の方から逢いに行ってもいいかしら、なんだかもうずっと寂しいの」


リリーの手には、長く銀色に光る物を持っていた。


「ねぇダーリン、エディー、私、あなたに会えてとても幸せな人生だったわ」


特に走ったわけでもないのに、息切れ気味で喋りだした。


「1人でここに残るより、エディーと2人でいる地獄のほうがずっといいわ、だから、エディー、私はあなたを愛しているから、こうしているの」


いつも見ていたリリーの目は、沈んだ水の底のような色をしていた。


「おやすみなさい、エディー」


幸せそうに眠る彼女の瞳は、淡く濡れていた。


 ● ● ●


「やっと会えた、エディー!私、エディーに会えたら話したかったことがたくさんあるの!」


手を引いて先に駆け出していくリリーの笑顔は、あのとき出会ったばかりの少女のようにあどけなく笑っていた。

いろいろ忙しいので投稿はマイペースですが、

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