行間越しに、このまま二人でハネムーンを。
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コンコン、とドアノッカーの音が鳴る。
呼ばれてすぐに扉を開けると、少女が立っている。
「お兄さん、初めまして。私、隣の家に引っ越してきたリリーと言います。よろしくお願いします」
深くお辞儀をするリリーの手には、果物の入ったカゴが握られていた。
○ ○ ○
「ねえねえお兄さん、お兄さんはどこの学校に通っているの?」
家に訪ねてくるリリーの手には、いつも何かおみやげを持っていた。
「ねえお兄さん、私、まだお兄さんの名前も知らないわ!教えてください!」
玄関先で、いつもリリーは首を傾げてこちらの顔を覗き込んでくる。
「エディーお兄さん、数学が全然分からないの!教えてください〜〜〜」
ここまで走って会いに来るのか、いつも少し息切れ気味で喋りだす。
○ ○ ○
「エディー兄さん、私、やりました!合格です!これでエディーと同じ学校に通えます!」
少し久しぶりに会ったリリーの目は、いつにも増して輝いていた。
「エディー先輩、学校は楽しい?私は楽しいです!」
最初に会った頃から、彼女は随分背が伸びていた。
「エディー、今度どこか遊びに行かない?港町はご飯が美味しいお店がたくさんあるみたい。私いっぱい調べてきたの!」
進学してからは髪を伸ばしたようで、だいぶ大人びた印象になった。
「ちょっと、エディー!この前女の人と一緒に歩いてたでしょ!私見たんだから!」
指差し告げる彼女の声は、初めの頃よりずっと感情豊かだった。
「エディー、もう卒業しちゃうの?私、まだ入学したばかりなのに」
いつも走って会いに来ていたおてんば娘は、いつしか裾に泥が付いていることはなくなっていた。
○ ○ ○
「ねえエディー、もしよかったら、今度どこかご飯に……えっ、行きたいお店があるの?」
肩より下まで伸びた髪は、綺麗にまとめられ、新しい服によく似合っていた。
「ねえダーリン、ここから離れるとしたら何処に行きたい?海の見える街も素敵だと思うの」
いつしか、わざわざリリーが訪ねてくることはなく、もっとずっと近い場所に居るようになった。
「ダーリン、今度の週末、夫婦でどこか旅行に行かない?」
ずっとかけ足だった彼女の足取りは、今では少し後ろを歩いている。
「ダーリン、別れはいつだって悲しいものだから、あなただけはずっと私の側にいてくれる?」
彼女の目は昔からずっとこちらをまっすぐ向いている。
○ ○ ○
○ ○ ○
「ねぇ、ダーリン、今日はとっても天気が良かったから、あなたに会うのが楽しみだったの」
長く伸ばしていた髪は、ばっさりと短く切りそろえられていた。
「ここに来たら、もしかしてもう一回ダーリンに会えたりするのかと思っていたけど、駄目だったみたい」
目線を合わせてこちらに話しかけるリリーの手には、たくさんの花が入ったカゴが握られていた。
「ダーリン、もし今会うことができないなら、私の方から逢いに行ってもいいかしら、なんだかもうずっと寂しいの」
リリーの手には、長く銀色に光る物を持っていた。
「ねぇダーリン、エディー、私、あなたに会えてとても幸せな人生だったわ」
特に走ったわけでもないのに、息切れ気味で喋りだした。
「1人でここに残るより、エディーと2人でいる地獄のほうがずっといいわ、だから、エディー、私はあなたを愛しているから、こうしているの」
いつも見ていたリリーの目は、沈んだ水の底のような色をしていた。
「おやすみなさい、エディー」
幸せそうに眠る彼女の瞳は、淡く濡れていた。
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「やっと会えた、エディー!私、エディーに会えたら話したかったことがたくさんあるの!」
手を引いて先に駆け出していくリリーの笑顔は、あのとき出会ったばかりの少女のようにあどけなく笑っていた。
いろいろ忙しいので投稿はマイペースですが、
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