第九話「飛ぶ鳥先を考えず」
ーーー朝日が昇ろうとしていた
大地は目覚め、空もそれに応える様に悠々と風が吹いていた
パリス達は、宿で目を覚ます
「いやー、今日はなんだか目覚めがいいな!」
「珍しいな。お前が早起きなんて。」
「...お前まだそんなに一緒に朝起きてないだろ。」
「お前ら起きるの早いなぁ...まだ寝てたいんだが?」
「シルフ...お前もそうなのか...」
カイニスがため息をつく
「...カイニスが俺とシルフを同じ目で見てくるんだけど、、、心当たりあるか?」
「いやまったく?」
「だよな?」
「二人は一度、私抜きで宿で寝泊まりするといい。」
「「???」」
「まぁそんな話はいい。今日は、昨日受けた"依頼"を解決する為に、この街の上側に行かないといけないんだ。だから、お前達二人にはこうして、早起きしてもらった。」
「なるほど。つまり、俺たち星連にとって、初めての依頼ってワケだな?」
「そうだ。まず、この依頼についてだが、Cランクの依頼としては、ここらで最高難度を誇るらしい。噂では、Bランクに片足どころか両足をどっぷり突っ込んでいるらしい。」
「へぇー。ま、単独Aランクの俺がいるから、楽勝そうだけどな。」
「まぁそうかもな。次に、依頼内容についてだが、怪鳥の谷の調査、そして、可能な限りの怪鳥の討伐だ。」
「怪鳥?なんだそれ。」
パリスはシルフに問いかける
シルフは服を着替えながら答える
「所謂、魔物の一種だ。まぁ、身体的構造が鳥類の魔物と似てるってだけで、魔物そのものじゃない。だから、怪鳥って呼ばれてるんだ。」
「なるほどね。理解理解。」
「群体だとまぁまぁな強さだが、単体だとそんなに強くないから、基本的には余裕だな。」
「まぁつまり、出来るだけ谷の奥底に潜って、怪鳥を討伐してこいって依頼だろ?」
まぁ、それくらいなら俺達3人でなんとかなりそうなもんだがな。
「10時にここを発つ。それまでに、朝ごはんとか、装備品の点検とか、必要なことを全部済ましておいてくれ。私は、少し外の空気を吸ってくる。」
「おっけー。」
「りょーかーい。」
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「よし、じゃあ全員揃ったようだし、街の上側を目指して歩くぞ。道のりは長い。覚悟しておけよ。」
「へっ、余裕だろ。ただ歩くだけとか。」
「言ったな?」
「ああ言ったぜ?」
カイニスのことだ。どうせ、大袈裟に伝えておいて、たどり着いた頃には「実は余裕でしたー!!」とかやるんだろーな。ったく、嘘が見え透いてるぜ。カイニスのやつ。
ーーーパリスはこの街の大きさを知らんようだな。仕方ない。私が教えてやるか。
「ちなみに到着予定時刻は夜の10時だ。」
「...ん?今なんて?」
「夜の10時、到着予定だ。」
「...え゛?12時間も歩くのか?」
「ああ、そうだが?」
「嘘じゃないよな?」
「ああ。嘘じゃないぞ?」
「ほんとのほんとに?」
「ほんとのほんとにだ。」
「...なかなかに遠いな、、、」
カイニスのこの顔...!!これは、嘘をついてない顔だな...よし、めんどくせ!
「余裕なんじゃなかったか?歩く程度。」
「時間が時間だろ...いくらなんでも、12時間歩き続けるとか嫌なんだがー?」
「まぁいいじゃないかパリス。案外楽しいぞ?こうやって仲間と道を共有するのは。」
「そういうもんか...てか、馬車は取れなかったのか?絶対馬車の方が良かっただろ?移動楽だし、今日の疲労が明日にも響かずに済んだのにさ。」
「別に馬車は取ってもよかったが、なんせ料金が高い。タークルで稼いだ分だけだと、後のことを考えると足りない。今の私たちには到底無理だな。」
「そうなのか...。ハァ、長い道のりになりそうだな。」
「だから最初に言っただろ。」
30分後ーーー
あまりにも暇そうなパリスに、シルフはこんな提案をする
「ただ歩き続けてるだけだと暇だからさ、『しりとり』しようぜ?」
「しりとり?なんだそれ?」
「俺の故郷にある、言葉遊びの一つだよ。」
「どうやって遊ぶんだ?」
「例えば俺が『メデル』って言うだろ?じゃあ次の人は、メデルの言葉尻の『ル』から始まる言葉を次の人に言わないといけないんだ。んで、言われた次の人はまた次の人にその言葉尻から始まる言葉を言っていく。それをずっと繰り返していくのが『しりとり』だ!」
「ルから始まる言葉か...例えば、ルールとか、ルビーとかか?」
「ああ、それで大丈夫だ。ただし、最後の音が『ん』になる言葉は禁止だ。続かないからな。それに、同じ言葉を言うのも禁止だ。永遠に続いちまうからな。」
「なるほどな。...よし、私は理解出来たぞ。」
「うーん...イマイチピンとこねぇけど、まぁ、やってくうちに理解できるか。よし、一回やってみようぜ?何事も経験ってな。」
「確かにな。それじゃ、一回やってみようか!」
ーーー結局、三人はしりとりにハマって夜の9時前までずっとしりとりをしていた
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ーーー夜9時
「...なぁ、そろそろキャンプが見えてきてもいいんじゃないか?このままだと足が折れちまうぜ。」
まぁ、しりとりで時間を潰せたのが不幸中の幸いか。ここは一つ、妥協しねぇとな...
「そうだな、地図によると、もう少し先に行くと例の谷の入り口が見える筈だ。その付近に、キャンプは設営されている。」
「もうそろそろか。なるほどね、りょーかい。...あ、てかよ、話は変わるけど、シルフってもしかして、言葉の読み書きできるのか?」
「ん?ああ、出来るぞ。人族と、エルフ族、魔族の言葉もちょっとだけなら出来る。まぁ、魔族の言葉はカタコトだけどな。」
パリスが笑顔を見せる
「やっぱりそうだよな!?昨日俺達の宿にシルフが追加で泊まるって言いに行ったとき、なんかよく分かんねぇけど、手紙でやり取りしてたろ?」
「ああ、あれか?あれはただのサインだよ。お前ら、文字書けないんだろ?だから、俺が代わりに書いといたんだ。サインがあるかないかで、取引料金が結構変わってくるからな。その手続きをしてたんだ。」
まぁ、サインして返してもらった金は、オレの懐にオール・インだがな!
「そうだったのか。シルフ、お前すごいな。」
「私たちは文字は読めても、書く事は出来んからな。頼りにしているぞ。シルフ。」
「はは、そう言われると、なんか嬉しいな。ああ、特に気分がいい。」
...後でコイツらになんか奢ってやるか。
「冒険者ランクも、俺たちの中で一番高いAだしな。ほんと、頼りにしてるぞ?シルフ。」
「まぁ任せとけよ。冒険のノウハウも、値段を大幅に下げる交渉術も、俺は色々知ってるから、いつでも頼ってくれよな。」
「マジか!じゃあ遠慮なく、次から酒飲む時はシルフに値段交渉頼むわ!いやーホントに助かるぜ!これからは酒が安く飲めそうだ!ハッハッハ!」
シルフが呆れ顔でパリスを見つめる
「...別にお前の酒飲みの値段交渉するために頼ってくれって言ってワケじゃないからな?」
やっぱパリスには奢らなくていいか。
そんなこんなで話してるうちに、キャンプにたどり着いた一行だったがーーー
「っと、そんな話をしているうちに、着いたぞ。ここがキャンプ地だ。」
三人が辺りを見回す
光もあるし、人工の建造物もある
だがーーー
「なんか味気ないな。やけに静かだし。なぁシルフ。こういうとこって普通、ワイワイしてるもんじゃないのか?」
「だな。それに、なんだか人の活気を感じない。」
活気ってゆーか、元気か?いずれにせよ、あんましやる気を感じないな。ーーーまるで以前の...
「まぁ無理もない。最近、この依頼に足を運ぶC級パーティーのどれもが失踪しているんだ。ここの人達は、そんな彼らを心配しているんだろうな。」
...まぁ、自分達が怪鳥に襲われるかもしれない一抹の不安もあるんだろうがな。
「てゆーかよカイニス。そんなに危険なヤツだったっけか?怪鳥のヤツ。俺の記憶だと、あんまし苦戦するようなヤツじゃなかった気がするんだが。」
「分からない。だが、他のパーティーがこうも立て続けに姿を消しているんだ。何か異変が起きている可能性がある。一度宿にチェックインしたら、作戦を立てよう。」
「そうだな。それがいい。」
「じゃあ、飯だけ買って、宿屋に行こうかーーー」
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メデルの街より、遠く離れた王国の宿にてーーー
「ーーーなんだか、面白いことになってんな。」
「ええ、恐らくは、『アレ』のせいね。」
「ったく、『4番』のやつも、退屈させてくれないな。あんなものを落っことしちまうなんてよ。バカにも程があるぜ。まるでテメェみたいだな!」
「私がバカ?ふーん?そういうあなたは、4番どうこう以前に、その枠にすら入れていないけどね?」
「っち。るせぇな?鬱陶しいぞ。今ここで殺してやろーか?あ?」
「番外が吠えても怖くないわよ。」
「それならテメェも番外だろうがよ。このクソ魔族が!」
「あら?人族である貴方様は、どちらが賢いか理解しているものと思っていたけれど、案外そうでもないのね。」
「あぁ!?」
「ほら、すぐそうやってキレる。貴方の悪い癖よ?師範も言っていたでしょう?心の歪みは、剣の歪み。今、私と貴方が戦えば、勝つのは私よ?」
「っち!クソが...まぁいい。今日のところはこれで終わらせといてやる。」
「それでいいのよ。私たちは、ただあの人に言われたことを実行すればいいんだからーーー」
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「さて、早速だが食事も摂ったことだし、作戦会議を始めようと思う。明日の攻略において、何か気になる点はあるか?」
シルフが手を挙げる
「俺は、怪鳥の強さが気になるな。アイツらは確かに、群れてるときはそれなりに強いが、そう易々と群れはしない。各個体のプライドが高いからな。」
「一個体じゃ弱くても、群れると強い...まぁシードルフみたいなもんか。」
「群れたときはな。ただ、その生態はシードルフとは真逆のソレをいく。なんせ、ヤツらの主食は草だ。」
「草?」
「ああ。だから、ヤツらは人を襲わない珍しい魔物の一種だったんだが、、、」
「最近になって、人を襲うようになったんだ。」
カイニスが口を挟む
「ヤツらはこれまで、谷やその近くにある草を食べて生活していたらしいんだが、最近、街の近くにまで怪鳥の群体が現れたらしくてな。その際、旅人が数人襲われたことで、今回ギルドから依頼があったんだ。ここで、話は怪鳥の強さに戻るが、怪鳥のこの生態の根本からの変化や、本来群れることのない怪鳥の群体行動。ここから察せるのは...」
「ああ、一つだな。」
シルフとカイニスが口を揃える
「「ヤツらの群れに"ボス"がいる。」」
「なるほどそうなるのか...」
パリスは一人、取り残されていた。
「まぁ、あくまで予想に過ぎない、ただの妄想だ。本当かどうかは、明日になるまで分からねーよ。」
「確かにそうだな!じゃあ、今日作戦立てても意味ないんじゃね?結局、臨機応変さが大切になってくるんだしさ!」
「例えそうだとしても、作戦は立てるべきだ。そうしないと、目的を見失いやすいからな。」
「かてぇ頭してんなカイニスは。」
「パリスがアホなだけだ。」
「「ん?」」
コイツら、息合ってんのか悪いのかよくわかんねぇな。
「まあまあ。臨機応変さが大切なのはその通りだし、作戦を立てるべきなのもその通りなんだからよ。ひとまずは陣形を考えようぜ。」
「それもそうだな。まあ、考えるって言っても、ほとんど決まってるようなもんだけどな。」
「ああ。私とパリスが前衛で、シルフが後衛だ。」
「それは全然いいけどよ、俺はあんまし治癒魔術が得意じゃないからな。出来るだけ無茶はしない方向で頼むぜ?お二人さん方。」
「分かった。もし怪我をしたら、迷わず退こう。逃げるのも、立派な作戦の一つだ。」
「それじゃあまとめるか。明日の作戦としては、俺とカイニスが前衛で、シルフが後衛。怪鳥の群体、そして、いるかもしれないボス個体に気をつけながら、谷の最奥部を目指す。もし道中で負傷をした場合は無理に戦わず、逃げることを選択肢に入れて戦う。どうだ?これでいいか?」
「ああ。大丈夫だ。何か特殊な状況でもない限りは、この作戦を守ってくれ。分かったか?二人とも。」
「「おう!」」
シルフとパリスは、頷きながら布団へ駆け寄る
「よし!じゃあ作戦も決まったことだし、明日に向けて寝ますかあ。」
「そうだな、そうしよう!」
「じゃあおやすみ!」
「おやすみー!!」
「ああ、おやすみ、、、」
ーーーまったく、布団を被るのが早いヤツらだ。朝あれだけ寝ていたというのに。ーーーそういえば、一つ気になる点があったな。ヤツらはどうやって谷の入り口を見つけたんだ?ここの住民に話を聞けば、谷の入り口には幻影魔術と秘匿魔術の二つが重ね掛けされているらしいが...。魔術を見破る個体、もしくは、魔術を破壊できる個体がいるのかもしれない。その場合は...
「なぁシルフ。一つ聞いておきたいことがあるんだが...」
「グガー、、、」
「...寝るの早過ぎだろ。」




