第七話「酒の滴る月下美人」
「ーーーよし、行くか!」
結局、パリスが魔術の鍛錬を忘れていたせいで、その日は一旦宿を見つけ、そこで寝泊まりした
「今日こそは、このメデルの街で仲間探しに専念出来るな。」
「まったくだ。昨日は散々な目にあったからな...」
「それは、なんというか、、、スマン」
「まぁ過ぎた事はいい。それよりも、大事なのは仲間を探す事だ。このメデル地方最大の街、メデルの街なら、色々なヤツがいるだろう。」
「そうだな。取り敢えず、表街道を歩いてみるか。」
「だな。」
ここは、色んな店が出店の様な感じで街並みが形成されている。だから、鍛治屋、工芸屋、武具屋、魔導工具屋とか、色々回ってみたんだが、、、
「全ッ然見つからねぇーーー!!!」
「そりゃな」
「そりゃそうか。ただ街見回っただけで、そんな良い感じのヤツが見つかるわけないか」
「当たり前だろう。バカか?バカなのか?お前は。」
「ジオは黙ってろよ」
「にしても、ここは本当にスゴいな。メデル地方は砂漠地帯だろう?それを思わせない街並みに資源、なにより街の大きさ。正直、砂漠地帯とは思えんな。」
「カイニスもそう思うか?俺もなんか、砂漠地帯っていうより、王国の中心街みたいな感じがするんだよな。例えば、アルファラス王国みたいな。」
「アルファラス王国?分からんな。聞いた事はあるが」
「ここよりもっと上にいったとこにあるんだ。めちゃくちゃ綺麗で、祭りとかが有名なんだ」
「そうなのか。いつか、いってみたいな」
「そん時ゃもちろん、一緒にな。」
雑談を交えながら、二人は進んでいった
「疲れたー。歩き続けたせいで、足が痛ぇな。なぁ、とりあえず休憩にしようぜ。」
「私はまだ歩けるぞ。」
「お前どんだけスタミナあんだよ...よし、じゃあこうしようぜ。俺はここの酒屋で休憩挟んで右に行く。カイニスは左に行ってくれ。これを名付けて、二手作戦だ!」
「ただの別行動だろう。まぁ、内容はいいと思うが。じゃあ、私は左に行ってくる」
「18時までにココに集合な。頼んだぜ、カイニス」
「ああ。」
そう言って、カイニスは歩いて行った
「ふぅ、やっと休めるぜ。アイツ、一生歩き続けるからな。それはそうと...やっと見つけたぜ!酒場!」
このいい雰囲気出してるデケェ酒場なら、美味い酒がありそうだな。いやー頑張った甲斐があったぜ!
「さてと!それじゃあお楽しみの時間だ!...ん?」
何だコレ?
「毎年恒例!真の大酒飲みは誰だ!?酒屋ワールス開催!参加費たったの一銅テラス!酒飲み大会!〜受付は3時から、開始は4時半から!〜だと?」
...やべぇ、めっちゃしたい。えーでも流石にカイニス怒るよなぁ、、、どうしようか?うーん4時半から開始なら、6時くらいに帰ってくるカイニスにはバレないか?いや、酔ってるからバレるか...
「バカバカしいな。酔いなんぞ、解毒魔術を持っていれば、アルコールを分解して醒めるというのに。」
「お前は黙ってろ...って、、、ん?もしかしてお前、解毒魔術使えるのか?」
「当たり前だろう?」
「なぁジオ、頼みがあるんだが...」
「断る」
「ケチかよ」
「ッハ、お前が真面目に、魔術の鍛錬をしていれば使えたのにな。残念極まるな」
コイツ、わざわざ使えるのアピールするためだけに喋りかけてきやがったな。
ーーーよし、決めたぞ!
「4時くらいにここに帰ってきて、そっから大会に参加しよう。それなら、仲間探しもしてるし、大会にも出場出来る。完璧過ぎて笑みが溢れちゃうね」
と、言う訳で
「今は酒はあずけとくか〜」
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4時になり戻ってきたパリスは、受付をすませ、テラス席についた
「よし、遂にこの時がやってきた。俺が無双する、この大会がな!」
「精々尽くすことだ。」
「ジオ、てめぇの度肝を抜いてやるよ」
そうこう言っている内に、店主がやってきたみたいだ
「お集まりの皆さん、バルコニーから失礼します。店主のワールスです。今年も無事、開催します。酒飲み大会!」
「「「ふぅーーいいぞーーねぇーちゃーん」」」
ここの店主、女性だったのか
「この大会には、暴力禁止以外の基本ルールはありません!あるのは、優勝者諸々を決める、大会ルールのみです!1つ目、1時間の内に飲めた本数を数えて、大会運営側に報告すること!2つ目、酔いすぎて、他人の大会記録を妨害する様なことはやめて下さい!以上、この大会のルールです!」
へぇ〜なるほどね。1時間飲み放題みたいなもんか。てか、見た感じ、おっさん冒険者が殆どみたいだな。俺くらいの歳のやつは...2、3人くらいしかいねぇようだしーーー
「ん?なんだ?もしかしてガキか?」
30代くらいのおっさんが話しかけてきた。
「ああ。まだ14のな。」
「ほーう、その若さで冒険者とは、やるじゃねぇか。だがな、この大会はそう簡単にはいかんぞ?なんせ、今まで酒に頼って生きてきた男たちが相手だ。お前のようなまだ14のガキに、負けるやつはいねぇぜ?」
「忠告ありがとよ。でもよ、他人の事気にしてる暇あるなら、もうちょっと周りの事気にしといた方がいいぜ?」
「あん?」
男の声を遮る様に、一つの声が聞こえてきた
「と、言う訳で〜?酒屋ワールス開催!酒飲み大会!始め〜!!」
店主の号令とともに、参加者達は大盛り上がり。なぜなら、従業員達が酒を大量に運んできたからだ。
「ほらな?スタートダッシュで遅れてちゃ、世話ないぜ?おっさん。」
「っへ!別にこれくらいがなんだ!てめぇの酔った顔を拝むのが楽しみだぜ!」
そう言って、おっさんは自分の席へと戻って行った
「せいぜい頑張れよおっさん。そんじゃ気を取り直して...飲みますか!」
そうしてパリスは、飲みに飲みまくった
実に、15分に20杯も
「ん、ん、ん、、、くぅー!やっぱ酒は美味いな!てか、周りの人らの飲むペース、めっちゃ落ちてきてるな。これなら、俺が優勝するのも時間の問題ーーー」
「すげぇな、あの子」
「あぁ、なんでもあれで、21杯目だとよ。」
「へぇ〜、やるなぁ。今回の優勝者は、あの子なんじゃねぇか?」
「にしても、美人だなぁ」
ん?なんだと?俺じゃなくて「あの子」?一体誰なんだ?21杯も飲んでるやつは...
パリスは席を立って「あの子」の姿を確認する
「アイツは...」
「あの子」は、さっき見かけた、俺と同じくらいの歳のやつだった。美人で、真っ白な髪に青色の眼をした、俺と同じくらいの背をした...男?いや、女にも見えるが...それに、あの耳。もしかして...
「なぁ嬢ちゃん、もしかしてだがよ、アンタ、エルフか?」
一人の男が先に聞いた...俺が聞きたかったのに、、、
「ん?俺か?そうだ、俺はエルフだ。あと、俺は嬢ちゃんじゃなくて、兄ちゃんな?」
「へぇ!こいつは珍しいーーー」
「お!マジでエルフなのか?しかも男!?そのナリでか?」
あっ、やべぇつい反応しちまった。
エルフの兄ちゃんがこっちを向く
「生まれつきこの顔だ。悪かったな、紛らわしくて。」
「あ、ごめんごめん。別に悪いって訳じゃないんだ。つい驚いてな。てかよ、お前、21杯飲んでるそうじゃねえか?ここは一つ、俺と勝負しようぜ。」
そう言ってパリスは、向かいの席に座る
「勝負?俺とか?」
「ああ、俺は今20杯飲んでんだ。どうだ?いい勝負になると思わないか?」
「ふーん。やるじゃねえか。いいぜ、勝負しよう。」
そこから二人は止まらなかった
二人は30分経過した時点で、既に34杯飲んでいた
一方その頃、パリスに突っかかってきたおっさんはと言うと...
「ハァ、ハァ、こ、コレで...23杯目!!!どうだ!俺が一番強ぇんだよ!!あのガキの酔い潰れてる姿を想像すると...っへ!胸が躍るようだぜ!」
そんな事を考えている内に、とある人だかりに気づく
「ーーーすげぇなアイツら。あんなに若そうなのに、もうーー杯目だってよ。」
「へぇ〜ヤバいな。これ、50杯超えるんじゃねぇか?」
「そしたらもう人間じゃねぇよ笑」
ん?なんだ?あの人だかりは?どうやら、大量に飲んでるやつがいるそうだが...どれどれ?...
「、、、げぇ!????ーーー」
な!あ、あれはあの時の...!!ガキじゃねぇか!!!なんであんな人が集まってやがる!?て、てか、アイツ今何杯目なんだーーー???
「コレでーーー34杯目!どうだ!?追いついたぞ!」
「はっ!追いつかれたんなら、また引き離すだけだ!」
そう言い、二人は意地の張り合いをしていた
「いいぞ兄ちゃん達ー!もっとやれー!」
「いやー久々に元気を貰ったぞ若いの。その調子で頑張るんじゃ」
「どっちが勝つんだろうな?」
「エルフの方だろ!」
「いやいや、勝負仕掛けたアイツも、グングン飲んでるぞ。」
「こりゃあ面白くなってきたぞ!」
男は、言葉を振り絞るーーー
「...あのガキ、バケモンじゃねぇかよ。」
---
そして、意地を張り合うこと更に29分...
「さあ!制限時間は残り1分にまで迫りました!果たして、優勝するのは誰だー?」
「ハァ、ハァ、ハァ、、、これで、50杯っ目!!!」
「やるなぁエルフ。でもよ、俺もこれで、、、50杯目だ!」
二人は最後まで互いに譲らなかったーーー
「そこまでー!!!さぁ!結果は!?って、聞くまでもなくそこのお二人ですね。積み上がってるジョッキの数が他のそれとは違います。となると必然的にそのお二人の勝負となりますが...」
「俺らは、、、」
「二人とも!」
「「51杯だ!!!」」
エルフの男に肩を組みながら言葉を重ねるパリスに、ジオは思っていた
...コイツ、酔っているな。
「えぇっ!?51杯!?51杯って、歴代でもトップクラスですよ!?トップクラス!それを歳若いお二人が飲めるなんて、、、すごい!感動しました!お二人には、真の大酒飲みである証ーーーこのペンダントを差し上げます。これをウチで見せてもらえれば、酒代を2割引きにしますので!」
「へぇー。ありがとよ」
「ええ、どうぞ受け取ってください。さてみなさん、酒をたらふく飲んだ事ですし。そろそろ、お代の方を頂いても?」
「そうだったな。んーと、確か1銅テラスでいいんだったか?」
そう言うとエルフの男は、ワールスに1銅テラスを渡した
「そうだったな、まだ代金払ってなかったな。どれどれ...と。ーーーん?」
あれ?おかしい。さっきまでポケットの中にあった3銅テラスがない。...もしかして俺、落とした?、、、え?マジで?え?ちょ、ちょっと待て、確か腰に結んでた荷物にーーーあ、出発前に、カイニスに渡してたんだった...
ーーー
「なぁカイニス、悪いんだけど、この布袋持っててくれないか?」
「ん?別にいいぞ。」
「ありがとよ。あ、一応言っとくけどそれ、金入ってるから厳重に頼むぜ。」
ーーー
「ーーー終わった...」
「?」
そういうとパリスは、エルフの男に不思議がられながら地面に伏したのだった
「お前、大丈夫か?」
「...なぁ、いっこ本当に大事な頼みがあるんだが...」
「ん?どうした?」
「その、、、頼む、金、貸してくれ。」
「...は?」
---
「今回は二人での大会優勝、おめでとうございました!またお越し下さ〜い。」
「いやぁーホントに助かったぜ!まさか、金を落っことしちまうなんてなぁ〜」
「お前、よくそんなんで今まで生きてこれたな。」
「いやいや、こう見えても俺、冒険者だからな。金が無くなればその都度、働きで返してたんだ。」
「...こういうことはよく起きてたって事だな。」
「まぁいいじゃねえか。それはそうと、お前、名前は?そういや聞くの忘れてたからさ」
「俺か?俺はシルフ。エルフの村出身だ。」
「シルフか、いいね。その名前。まさにエルフって感じの名前だ。」
「語感だけで判断しただろ...まぁいいけど。それはそうと、大会時間残り5分くらいの時から俺らの事を物陰から見張ってる獣人の女、誰だ?もしかして、知り合いか?結構どころか、マジでキレてる感じするが」
「え゛?」
瞬間、パリスは悟った。「ーーー終わった。」と。
「な、なぁ、その女。もしかして、グレー強めの白い髪してるか?」
「ん?ああ。してるな。」
「ソイツの腰に、なんか凄そうな紅い剣あるか?」
「ああ、あるぞ。綺麗な紅だ。」
「...露出してる肌は筋肉の塊か?」
「ああ、まるで女戦士みたいだ。」
「シルフ。短い間だったが、今までありがとな。」
「え?」
ーーードゴォォォン
シルフの傍で、パリスの頭が埋まった
「ーーーえ?」
シルフが肩を窄める
「初めまして、シルフ。話は聞かせてもらった。この男が迷惑を掛けたな。私が代わりに謝罪しよう。すまなかった。」
「いや、別にいいんだけど...ソイツ、大丈夫か?」
「ああ、問題ない。後で半殺しにするだけだからな。」
「そ、そうか。」
「ーーーぷはぁ!死ぬかと思った!」
「なんだ、もう回復したのか。もう少し強く殴ってもよかったな。」
「いや、これ以上強く殴られるとホントに死ぬから!今も普通に死んだと思ったからな!?」
「フン、仲間探しと言っておきながら、酒に溺れるヤツにはあれくらい当然だろう。」
「お前、寄り道してたのかよ...」
「いやぁ、そんなつもりじゃなかったんだけどな。」
「お前には反省の色がまったく見えん。また後日、みっちり指導してやるからな。」
「えぇ〜。まぁいいか。あ、てかそんなことより、、、」
パリスがシルフの方を向く
「ん?」
「シルフ。お前さ、俺らのパーティーに入らないか?」
「...は?」




