第六話「メデルの街へ」
―――キコキコ
暗闇の中から光を携さえた馬車が、音を立てて近づいてくる。
あの馬車は今朝、俺が乗ったものだろう。その証拠に―――
「よぉ!兄ちゃん!!へへ、やっぱりいてくれたか。」
「帰るにはこの馬車が一番安いからな」
「そいつぁ正直過ぎるってもんだよ!もっとほら、この馬に愛着が湧いたとか、俺に惚れたとか、色々あるだろ?」
「一つしかないね。」
「つれねぇな!」
だいたい約束通りの時間だな。正直、時間通りに来てくれるか不安だったから、助かるな。
...ん?どうしたんだ?急におっちゃんが馬車からすごい勢いで降りてきたが...
かと思ったその時、俺はおっちゃんに肩を組まれ、グッと体を引き寄せられた。
...おっちゃんに体引き寄せられてもいい思いはしない。
「なぁ兄ちゃん。」
おっちゃんが耳元で話しかけてくる。
なんだ?何か問題でも...
「兄ちゃんの隣にいる子、もしかしてだがよ、捕まえてきたのか?」
...俺じゃなくてカイニスについてだった。
「違げぇよ!コイツは俺のパーティーメンバーだ!」
「それってつまり、そういう事だろ?」
「だから、コイツは俺が捕まえて来た女とかじゃなくて、普通に、自然に、ごく一般的に、ただのパーティーメンバーだ」
「...!そういう事か!流石兄ちゃんだ。ハハハ!」
首にかけていた手で俺の胸あたりをバシバシと叩く
「捕まえるだけじゃなく、パーティーに入れる事で檻に入れるなんて、女の扱いに随分となれてるじゃねぇか。感激したぜ!俺!」
「勝手に感激されても...」
「いやぁ!兄ちゃんやるねぇ!」
コイツ、人の話を聞かないタイプか...
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馬車が揺れる
ほのかに匂う夜特有の芳しい匂いが鼻をつく
馬車の外に視線を向けて、星を見る
「なぁカイニス。俺達は今日から仲間を見つける旅に出る訳だが、どこで探す?今帰ってるタークルの街で探してもいいし、最寄りの街、メデルの街に行って探してもいい。はたまた、もっと遠くまで行ってもいいんだが...」
「モグモグ...そうだな。まぁ、メデルの街でいいんじゃないか?」
「その心は?」
「適当」
「だろうな」
まぁ予想通りだとも。カイニスが何も考えずに受け答えすることなんてな。
でもよく考えてみれば確かに...
「いい考えかもしれないな。それ。」
「ん?どう言う事だ?」
カイニスは不思議そうに俺に問いかけてくる。
「だってよ、気の合う仲間なんて探して見つけれるもんなのか?本当に気の合う仲間ってのは、自然と見つかるもんだと、俺は思う。実際、俺がお前と出会ったのは偶然だっただろ?」
「確かにそうだな」
「だろ?だから、案外適当に街をブラブラしてた方が、気の合う仲間ってのは見つかるもんなのかもな。」
「なるほどな。なら、どうする?」
「どうするって、何を?」
「いつメデルの街に行くんだ?メデルの街までは、タークルからだと6時間くらいかかるわけだが...流石に今から行く。なんてことはしないだろう?...モグモグ」
「流石にしねぇよ。そうだな、明日にでもメデルの街へ向かう馬車を見つけて、それに乗せてもらうってのはどうだ?」
「私は今日でなければいつでもいい。今日はもう疲れた。早くお前の宿で寝たい。」
「じゃあ決まりだな!...ちなみに、俺の宿はベッドが一つしかないんだが...」
ジー...っとカイニスが俺を見てくる。なんでだよ!俺が金を払って取った宿だぞ!?俺がベッドで寝るに相応しい...
「ジー」
寝るに相応しい...
「ジーー」
寝るに...
「ジーーー」
相応しい...
「ジーーーー」
...
「わかったよ!お前がベッドで寝ていいよ!」
「っふ」
なんだその勝ち誇った顔は
明日の朝にでも、天井から落ちてきた板で腹を殴ってやろうか?
まぁ冗談はこの辺でサヨナラして、
「俺さ、馬車乗った時からずっと思ってたんだがよ、カイニス。」
「ん?なんだ?」
「当たり前みたいに俺の携帯用保存食食いまくるのやめろ。それ、高いんだからな?」
「はぁ、仕方ない」
―――コイツ、さてはめちゃくちゃ食うな?
今後の旅の食費を危惧した瞬間であった
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「んじゃな、兄ちゃん達!また機会があれば、巡り会おうぜ!」
「ヒヒィーーーン!」
そういって、馬車の男は街角に姿を消した
「やーーーっと着いたか!んじゃ、宿に帰るか。」
「ん...そうしよう、、、。」
カイニスはすでに寝かけてるな
瞼が半分以上落っこちてるぞ
「おい、カイニス。もうそろそろで宿に着くんだから頑張れよ。あともうちょっとだぞ。」
「んん、、、ああ、分かった...」
そう言いつつも、カイニスはフラフラで立ち歩き、剣を支えにし、芯を作らなければ直ぐにでも倒れそうな勢いだった
相当疲れてるな、こりゃ
「...ハァ、仕方無ェな。」
そう言って、パリスはカイニスを背負い、宿まで連れ帰るのだった
そして、明日出立するため、パリスの荷物をまとめた二人は結局、同じベッドで寝るのだった
「「カー、クー、カーー、、」」
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翌日、窓から挿す空の光で、パリスは目覚めた
「んー良い朝だなぁ!こんな朝には、一人くらい、俺のベッドに女を侍らせてたいもんだぜまったく!ハッハッハ!ーーーって、ん?」
「ーーーzzz。。」
ーーーいた
「起きろーカイニス。もう朝だぞー」
「ん、、、ああ。もう朝か。なんだか寝た気がしないこともないが、ーーーふぁぁぁぁ。まぁ仕方ない。」
「とりあえず、着替えたら荷物持って外出てきてくれ。朝飯買って、馬車見つけるぞ。」
「分かった」
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「んじゃ、メダルの街まで頼んだぜ。」
「ああ、確かに受け取った。」
パリスとカイニスは、無事に朝飯を買って、メデル行きの馬車を見つけた
「ふぅ、早めに見つかって助かったな。メデルの街には、2時に着くらしいから、それまで寝るなり何なり好きにしとけよ」
「了解した。」
そう言って、カイニスは腰にかけていた剣を取り出して、ポーチの中に入れていた葉を刃先に当てだした
「なぁ、何してんだ、それ?」
「コレか?これはだな、私が暮らしていた村の伝統的な剣の研ぎ方なんだ。この葉は特殊でな、表面と裏面に、それぞれ違う細かさのトゲが付いてるんだ。」
「へぇ〜、便利なもんなんだなぁ。あ!てかよ、その剣...いや、確か紅牙抜銘剣だったか?それ、なんで勝手に持ち出したんだ?」
「これが、私にとってお守りの様なモノだからだ。」
「へぇ〜お守りかぁ〜、なんかいいな。そういうの」
「...案外、そうでもないさ。」
「そうなのか、、、」
まあ、事情があるみたいだし、深掘りはしないでやるかな。てか、それよりも...
「なんで喋ってくれないんだよ、ジオ。」
「...」
「ん?どうした?パリス」
パリスが空に投げかけた言葉に、カイニスは疑問を持った
「なんで黙ってんだよ。俺なんかしたか?」
「...ハァ、仕方のない男だ。また忘れたのか?貴様は?俺は何度も言ってきたハズだ。...毎月6日、必ず魔術の鍛錬をしろ、とな。」
「...あ゛」
「どうしたんだ?パリス」
「いや、その、うん......ね?」
ヤベェヤベェヤベェヤベェヤベェ!!完ッーーー全に忘れてた!今日ってもしかしなくてもーーー
「今日は何日だ?パリス」
「も、もしかしてですけど...6日、とか?」
「よく分かっているじゃないかパリス、大正解だ。」
あーあ終わった。
「なんだ?2人は毎月6日、魔術の鍛錬をする日だと約束していたのか?」
「ああそうだ。だが、コイツはその約束をよく破る。」
「ジオ頼む!ホントにコレっきりにするからよ、「アレ」だけは勘弁してくれ!」
「何回目だと?」
「さ、3回...とか?」
「残念不正解だ。正解は、18回目だ。」
「あー、そうですか。」
「ということで早速だがーーー始めよう。」
「また座学地獄コースが始まるのかよ泣」
「そう喜ぶなパリス。何、馬車は出発したばかりだ。時間はまだまだある。それにーーーメデルの街に着いても、終わりだと思うなよ?」
「ハイ......」
ハァ、、、今日は、メデルの街に着いても、仲間探しには行けなさそうだな。と、考えるカイニスだった
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ーーー18時半
「あ゛あ゛ーーーーーー!!!や゛っ゛と゛!終わった!!!」
「馬車に乗ってから日暮れまで、計10時間、魔術の鍛錬をしていたな。パリス...いつも、こんななのか?」
「もう、やだ...」
「パリス。次約束を破ったら、これの倍は覚悟しておけよ。」
「次は絶対覚えとくからな!!」
次もどうせ忘れるんだろうな。と、考えるカイニスだった




