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剣の魔術師  作者: いくら丸
ロードロット大陸編【冒険編】
5/5

第五話「運命的邂逅、絶対的結成」

二人は砂原から街に戻り、辺りのキャンプを見て回る


...なんだ?

カイニスのやつ、俺に何か言いたげだな...

俺、なんかやらかしたか?


「(ジーーー......)」

カイニスが隠す気もなく、俺をつつくように見てくる。


...んー気まずい!何か話しかけねぇとな。

んーっと、、、なんでもいいから、なんか話すことは...

「あっ!そうだったそうだった。カイニス、ほらよ」

カイニスに袋を投げ渡す。


「これは?」

「今日のお前の報酬金だよ。200を半分に割った、100銅テラス入ってるぜ。」

「これはお前が先程アイツらと分けた金じゃないのか?」


不思議そうな物言いで、カイニスは俺の渡した袋を覗く。


「それはそうだが、今日はお前に助けられた。だから、その分だと思ってくれ。」


話を聞いたら少し納得したのか、カイニスは渋々投げ渡された袋をポケットにしまう。

素直に金を受け取らないなんてな。中々律儀なやつだな、カイニスは。


「そういえばカイニス、お前の冒険者ランクっていくつだ?」

「私か?そうだな...確か、Bランクだったような気がする」


ドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!

その時、パリスに雷が落ちた

何を隠そう、パリスは、かなりランクを気にするタイプなのだ!!!


マジか、、、カイニス、俺より上かよ...


感嘆しているパリスに、カイニスが問いかける

「パリス、お前の冒険者ランクは?」

「ん?ああ、俺か?俺は、、、まあ、そうだな。今は、Cランクだ。なかなか良いBランクの依頼がなくてな、最近は伸び悩んでんだ。」


なんとか言い訳でランク差敗北を回避してやったぜ!


「金には困ってないのか?」


カイニスがそれを言うのか...


「まあそんなだな。俺は結構な頻度で依頼受けるから、金にはあまり困らない。どっちかって言うと、その金を使う場面で困ることが多い」

「?どういうことだ?」

「俺は文字が読めないんだよ。貴族の家に生まれたけど、読み書きとか、勉強が嫌いでな。11歳で家を抜け出して、冒険者になったから文字はあんまり読めない。書くなんてもってのほかだ。」

「そうなのか...」

カイニスが意外そうに俺を見る。


「ああ。よく目にする物だったりは読める様になってきたんだが、わからん物は分からん。だから、いつも値段を聞くんだ。その度に、ぼったくられてんじゃないかって思ってヒヤヒヤしてる。」


カイニスは過去を振り返ったように話す。

「私も、読み書きは出来ない。昔から勉強が嫌いでな、好きな事は、剣を振り回すことだけだった。そんなもの必要無いと、親の言葉を退けて、私も冒険者になった。ただ、今になっては少し後悔している。冒険者になってからは、看板、看板、看板と、何がなんでも書きたがる奴らが多いことが分かってな。」

カイニスが、看板に対して少し恨みの籠った声で話す


「看板が読めないと、どんな店かも分からないからな。今になって、過去の自分からのボディーブローが飛んできた感じだ。」 

「全くだ」

カイニスも実家飛び出し系冒険者だったのか!なんか親近感を感じるな。


「ところでなんだが、パリス。」

「なんだ?」

「お前の目指している処はどこだ?」

「どう言う事だ?」

「目指す処と言えば、決まっているだろう。冒険者のランクだ。私は勿論、Sランクを目指している」


唐突にどうしたんだ?急にそんなランクの事を聞いてきて


「なんだランクの事か。勿論、俺もSランクを目指してるぜ。」

「出来ればで良いんだが、理由を教えてくれないか?私は、なれないと決めつけた親を見返すためにSランクを目指している。パリスは何故だ?何故、Sランクを目指すんだ?」


俺がSランクを目指す理由か...

「簡単だよ。昔、ある男に、Sランクになってやる!って宣言してな。その言葉を嘘にしないために、俺はSランクを目指してるんだ。」

「その男は、人生を賭けるほどなのか?」

「ああ。そもそも、俺が冒険者に憧れた理由はソイツが冒険の話を聞かせてきたからなんだ。だから、俺はソイツの言ってた景色を、ソイツの見た景色をこの目で見るために、Sランクになるんだ。ついでに、ソイツが手に入らなかった気の合うパーティーメンバーも集めてな!」

意気揚々と語る俺を横目に、カイニスは冷静に分析していた。


「Sランクの実力を持つ冒険者しか立ち入れない場所に、入ってみたいのか。お前は。」

カイニスは真剣に俺の話を聞いていた。


「ソイツが見た景色を見るには、Sランクに相当する実力がいるんだ。だから、分かりやすい目標として、俺はSランクを目指してんだ。」

俺も真剣に答え返した。


話を聞き終わると、少し間を置いてカイニスが尋ねてきた。


「パリス。確認したいんだが、お前は、Sランクになるためなら、世界をその目で見るためなら、『命』を賭けれるか?」


普段の会話らしからぬ言葉が出てきた。

『命』を賭けれるか?か。随分と大層な言葉じゃねえか。カイニス、まさか俺と組んでくれるのか?

だとしたら、いや、だとしても、答えは決まってるな。

「そんなもん、当たり前だ。」


カイニスは何かに納得した様な素振りを見せる。

まるで、条件が整ったかのような、そんな素振りを。


「パリス、お前に提案がある。」

カイニスの声が岩の様に固く、真剣になる

カイニスのやつ、多分、俺と一緒の事考えてんな?


「俺もお前に提案があるんだが、、、まぁ先に言ってみてくれ。多分、同じだからな。」


カイニスの頬が緩み、安心した様子を見せる。

俺も、とっくに返事の準備は出来ていた。

そして、提案の内容も予想通りだった。


「パリス。私と共に、パーティーを組んでくれないか?」

カイニスが手を差し出す。組む気があるのなら手を握れ、と言いたいんだな?まさしく、その提案を待っていた。


「俺からも頼む。俺と、パーティーになってくれ!」

カイニスの手を握り返す。

岩の様な硬さをした手は、俺の手をギュッ!と握り返した。


「決まりだな。パリス、これからもよろしく頼む。」

カイニスは嬉しそうな目でこちらを見つめてくる。

多分、カイニスもパーティーを組むのが初めてなんだろうな。

なんたって俺も今、かなり嬉しい。


「ああ、...それはそうと、カイニス...」

「どうした?」

「―――手が...」

「?」

「手、離してくれ。お前の硬ったい手で握られ続けると血が止まって俺の手が壊死しちまう...」

「...すまない...」


カイニスの手ガチガチ過ぎだろ!もう少しで、パーティー初結成早々、俺の手が使い物にならなくなるところだったんだか!?まったく、、、

...まぁ、何はともあれ、初めてパーティーを結成出来たんだ。

この運命の出会いに、神に感謝しないとな。


---


あれから大分時間がたったな。今は、もう夜の9時か。

俺達は今、タークルの街に戻る馬車を飯を食いながら待っている。


「この肉、本当に足の肉か?あまりそうは感じないが...」 


カイニスが文句を言いながら肉をほうばっている。

まぁ、その気持ちは分からんでもない。だって、この肉正直そんな美味しくないからな!


「そういやカイニス」

「なんだ?」

「お前、シードルフから俺を助けてくれた時、なんであそこにいたんだ?」

普通に考えて、あそこにカイニスがいるわけないからな。まぁ、普通じゃない考え方をするなら、俺の後を付けてきた。とかだが、まぁ、あり得な...


「なんだ、そのことか。簡単な事だ。お前の後を付けてきた。」


はい、当たり。

多分、此処に来るまで感じてた気配はカイニスだろうな。


「なあカイニス、まさかとは思うが、お前、あの乾燥地帯を歩いて来たのか?」

「ああ、そうだが?」

「そうだが?って...そんな歩いて来れる場所じゃねえだろ、ココ。馬車で50分かかるんだぞ?しかも、整備なんて碌にされてない道を歩いてなんて...」

「私は体力が多いからな。」

「飲み物は?」

「無いが?」

「えぇ...―――」


カイニスは俺が思ってたよりずっと頑丈らしい。

もしかしてだが、あの時、本当にお腹空いて無かったんじゃ...

まぁそんな事はもういい。忘れよう。

それよりも、カイニスの能力や経歴についてだ。ここまでで、かなり分かった事がある。


・ソロでBランクになれる力がある

・親と喧嘩して一年半前に家を飛び出している

・めちゃくちゃタフネス


ざっくりとこんな感じだな。

流石は獣族と言ったところだな。他の種族と比べて、全体的に筋肉の量が多いからか、同い年でも、俺とそれ相応の差がついてる。俺も別に、筋トレを怠ってるワケじゃないんだがな、、、


パリスがチラッとカイニスの腹筋を見る

...やっぱり、女戦士じゃないのか?コイツ。


「なぁ、パリス」

カイニスが指を拭きながら、俺に話しかけてきた。

「どうしたんだ?」

「私達は、今日からパーティーになるわけだが、私達二人だけでSランクを目指すのか?それとも、仲間を集めるのか?」


確かにそうだな。

俺らだけでSランクを目指すのか、他に仲間を集めてSランクを目指すのか、まだ決めてなかったな。


「そうだな、、、俺としては、仲間を増やした方がいいと思う。」

「具体的にはどんな奴が欲しい?」


具体的にか...そう言われると難しいが、

「そうだな...例えば、俺らはどっちも剣士だろ?だから、サポートしてくれる魔術師とか、後方支援してくれる回復術師とか、他にも、後方を守るタンクとか、相手を探る斥候とか、何かと便利なシーフとか、上げ出したらキリがないが、まぁそこらへんの

サポートの出来る奴に仲間になって欲しいな。あと、人数に関してはあんまり多いと面倒だし、6人とか5人とかの、少人数パーティーがいいな、俺は」


カイニスが肉を食べていた手を止め、あからさまに顎に手を置いて考えている。

俺らはどっちもパーティー経験が無いからな。一体どんなパーティーが正しくて悪いのか分からん。

そう考えてみると、案外10人とか15人とかの大人数パーティーの方が良い可能性があるのか...

ムズイな...


「まぁ、今考えても仕方の無い事だな。ただ―――」

「ただ、なんだ?」

「ただ、仲間にするのなら、信頼できる奴を仲間にしたい。戦場で背中を預ける存在、それが仲間だ。だから、何よりもまずは、信頼できるかどうかを決めてから判断したい。」


カイニスはフッと笑ったかと思うと、肉を食べながら共感を言葉に写した


「私も、それに賛成だ。信頼できる者だからこそ、成せるコトもあるだろうからな。ただ強いだけで無く、信頼に値する者。そういう者を仲間にしよう。」

「決まりだな。」


カイニスはやはり、俺と考え方が似ている。

元々そういう考え方だからかは分からないが、俺の意見にかなり同調してくれる。しかも、気遣いや妥協等ではなく、ただただ純粋に。


「じゃあ、目標を決めよう。」

「目標?」


カイニスが気の抜けた声でパリスに尋ねる


「ああ、俺達が最終的に目指すべき理想、そして、今俺達が目指すべき目標。それらを今決めておこう。」

「目指すべき理想か...そうだな。最終的には、Sランクを目指すのだろう?」

「ああ。だから、決めるべきは目下の目標。今、俺達がすべき行動だ。」


カイニスは食べ終わった肉の骨をカランッと置くと、口を開いた


「そんな事、決まっているだろう?それこそ、まずは信頼できる者を仲間にする。これを、第一の目標にしよう。」

「それもそうだな。よし!じゃあそうするか!」


そうして、パーティーの目標、もとい、方針が決定した。

何のアクシデントもなく決まって、本当に良かった。結成してから半日も経たずに、喧嘩して即、解!散!なんてことが起きたら、泣いちまうからな。本当に良かった。


二人がそんな事を話しているうちに、暗闇の中から光を携えて、キコキコと音を立てながら近づいてくる馬車の姿があった―――






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