第四話「ジオ紹介」
グラウス達と別れて1時間たった。俺とカイニスは今...
「だから、本当だっつってんだろ!?」
「だが...流石にそんなことは聞いた事がないぞ?心の中に、何かがいる?まぁ、、、拗らせるのは自由だが、私に迷惑を掛けないでくれ。」
「いや本当だって」
「...」
カイニスが可哀想な目で俺を見てくる。なんでだ?なんでこうなった?事の発端は、30分前―――
―――
「パリス。お前、中々良い女を手に入れているじゃないか。どうだ?いっその事、コイツとパーティーを組んでみたら?」
「そんなの、お前が決める事じゃねえだろ、ジオ?第一、カイニスが嫌だったらどうすんだ?」
「そんなもの俺には分からん。聞けば良いだろう?」
「そりゃあそうだが、、、カイニスと出会ってまだ1日も経ってねぇんだぞ?そんな軽く聞けるかよ。」
「この臆病者めが」
「お前なあ...」
「―――おい!パリス!」
カイニスが俺に向かって叫ぶ
「うわっ!な、なんだよカイニス、ビビるじゃねぇか、」
「お前、少しボーっとしてないか?さっきから話しかけてるのに、何で何も反応しない?熱か?それとも毒か?」
「あぁ、いや、そんなんじゃねぇよ。大丈夫だ、安心してくれ。」
「本当か?ならいいが...あ―――パリス、お前、何か隠してるだろ?」
「は、はぁ?な、なんでそう思うんだよ?」
目を逸らしながら話すパリスにカイニスが突っ込む
「目が泳いでるぞ。パリス。」
「あぁ、そうですか...」
街の外にある砂原に出てカイニスに秘密を話す
「―――って事で、俺の中には生まれた時からなんかいるんだ。あん時は、ソイツと話してたから、ボーっとしてたんだろうな、俺」
「...?」
「まぁ、簡単に言えば二重人格みたいなところだな。」
カイニスが困惑しながらまとめる
「...つまりだが、お前の体の中に、お前以外の何者かが居て、あの時はソイツと話していたから、ボーっとしていた...と?」
「まぁそういう事だな。」
「なるほど分からん」
「全部分かる必要はねぇよ。まぁ偶に何も無いところでボーっとしてたら、そういうことだって分かっといてくれたらそれでいい。」
「そうか...まぁ...そうだな、分かった。そういうことにしておく...」
カイニスが目を逸らす
「...?おい、カイニス、お前なんか勘違いしてないか?」
「いや、なに、、誰にだってそういう時期はある。別に軽蔑しているワケじゃない。だから、その、、、なんだ、軽蔑してるワケでは無くてだな?その...勘違いしないでくれ。決してお前の事を...その...軽蔑してるワケではない...」
ああダメだコイツ完全に勘違いしてやがる。今の話を聞いて、俺が厨二病だと思ってフォローしてきてるぞ?しかも、パニクり過ぎて同じ事を3回言ってる...
「カイニス、俺は別に拗らせてるワケじゃなくてだな、本当に俺の中に何かがいるから、俺はお前に...」
「ああ分かっている。私を信用してこの話を打ち明けてくれたのだろう?安心してほしい。この話は他の誰にもバラさない。」
「あのなぁ、カイニス、俺を厨二だと勘違いするのはやめてくれないか?」
「お前の話が本当だとでも?」
「だから、本当だっつってんだろ!?」
「だが...流石にそんなことは聞いた事がないぞ?心の中に、何かがいる?まぁ、、、拗らせるのは自由だが、私に迷惑を掛けないでくれ。」
「いや本当だって」
「...」
うっ、カイニスからの突いてはいけないものを突いたような、開けてはならないものを開けたような目が辛い... こうなったら、アイツに...
「カイニス、ちょっと待ってくれ」
「おいジオ。お前のせいで俺が痛い奴みたいになってるんだが?」
「クハハハハ!実に滑稽だったな、パリス。本当の事を言っているのに、信じてもらえんとは!クハハハハ!」
「何笑ってんだテメェ...いいから、なんか解決策をよこせよ。お前なら、魔術でどうにかなるんじゃないか?」
「出来ん事はない。ただ、このままお前を幻想溢れる14歳にしてやろうと思っていてな...はてさて、何方を取るべきか...」
「んなもん解決するに決まってんだろ馬鹿かテメェこの野郎」
「冗談だ。いいだろう。我が名級魔術、鏡像にて俺を外に映し出そう。」
「頼んだぜ?ほんとに」
「パリス?」
「待ってくれてありがとよ、カイニス。さっき俺が言ってた事を証明してやるよ。」
パリスがそう言い終わると、突如として右肩の辺りに光が刺した
「ッ!パリス!右に...」
「大丈夫だカイニス。そろそろだ。」
カイニスが理解する前に、光が散光した
「な、なんだ?一体何が起きて...」
カイニスが目にしたのは、パリスから説明されたような、白く、だが淀んでいるようなモヤだった
「これは?」
「コイツが俺の言ってたジオだ。今はコイツの魔術で見えるようにしてるらしいが、触れはできないらしい。」
「...まさか、本当だったとはな...」
「な?言っただろ?」
「ああ。しかし、なんだ?これは?これがお前の言っていたジオ?...ってやつなのか?」
「お前は...カイニスか。そうだ、おれがコイツ曰くジオだ。」
「―――うん?コイツ曰く?」
「俺の本当の名はジオではない。コイツが幼童であったとき、勝手に付けた名だ」
「お前が教えてくれないからだろ?」
「貴様なぞに教える義理はない。」
「はぁ...まあいいさ。っとまぁこんな感じに、コイツとはいつも下らない話をしてるんだ。」
カイニスが考え込む
「その...一体、お前は何なんだ?同じ身体に、違う人格?があって、ソイツが勝手に喋ってるのか?」
「残念だがハズレだ。俺は、パリス・カーディールより生まれ出たものではない。完全に独立した違う魂だ。」
「なるほど分からん」
「まぁいい。そんなことより、コレで疑いは晴れたか?晴れたのなら、俺はもう戻る。正直、この姿で魔術を使うのは難しい。」
「ああ、そうだな。コレでパリスが厨二病じゃないことが分かって、気を遣う必要が無くなった。」
「おい」
「では、俺はパリスの中に戻る」
光が一点に収束していく
「戻る時も光るのか...しかし、まさか本当にお前の中にあの様な奴が居たとはな。正直、未だに信じられん。」
「まあ無理もねぇよ。こんな事、本来ならあり得ないしな。」
聞き終わると、カイニスが砂原に座り込む
「それはそうとして、アイツ...ジオ、と言ったか?一体、アイツはなんなんだ?さっき聞いたら、上手い具合にはぐらかされたんだが」
「それは俺も分からん。小さい時からずっと聞いてるんだが、ずっとあんな感じだ。」
「そうなのか」
「ただ、少しだが分かってることがある。まず一つ、アイツはかなり昔を知ってる。それこそ、変歴の時代なんて特に詳しい。いっつも昔話を聞かされるもんだから、俺もある程度覚えちまった。...まぁそんなことはどうでもよくてだな、重要なのはコッチだ。二つ、アイツは魔術の腕が尋常じゃない程高い。俺が10にも満たない時に、魔術を教えてもらってたんだが、アイツの言ってることはレベルが違くてな。見ての通り、俺は魔術が理解出来ずに剣士になってる」
「それ程までに、レベルが違うのか?」
「ああ、多分だが、アイツが本気で戦えば、俺らなんて即死だろうな。」
「今思ったんだが...アイツ、どうやって戦うんだ?」
「それは、、、知らん」
「まぁジオの事は覚えておく。もしこれから先、お前が立ち止まってボーっとしていたら、そういう事だな」
「ああ。頼んだぜ、カイニス」
こうして、俺が厨二病であるという疑いは晴れた。めでたし、めでたし。...いやほんとに。