2/18 Ⅱ
俺の通う「学校」は世間一般のそれとは少し事情が違う。もちろん君たちもご存知の通り、俺たちの住むこの世界には「I.N.O.H(Incredible Nemesis Of the Human、イノー)」と呼ばれる特殊能力を持った人類や動物が存在する。50年前に発生した、世界最大の原子力発電所の臨界事故による放射能汚染が生物の神経系に影響し、各地で誕生した。当初は同じ生物に対し敵対的な行動をとる個体が多く見られたが、現在では医療技術の進歩によりその攻撃性は抑えられ、日常生活にその能力を有効に活かせるまでになった。
前置きが長くなってしまったが、そんなI.N.O.Hたちを社会貢献のために育成する学校が俺の通う、「帝統大学附属異能学園」、通称「帝異」だ。
地上13階建て、建築法ギリギリを攻めたいかつすぎるデザインが異彩を放っている。構内には一般的な教室の他、寮やグラウンド、研究所や簡易的なショッピングモールも備わっており、急にゾンビ映画が始まったとしてもしばらくは立てこもれるだろう。
そうこうしているうちに正門をくぐり、教室へと足を運ぶ。俺のクラスは1年O組。クラス分けは「I」「N」「O」「H」の各学年4クラスずつだ。非常に安直である。
クラスのドアを開けると、「お!乙原おはよ!」
……なんて声をかけられるのであればそれはまだ俺が夢の中で皆が羨む理想の学園生活を送っている証拠だろう。おい、誰だ今ぼっちって言ったやつは。俺は好きで孤高を選んでいるんだぞ。先生怒らないから今すぐ訂正しなさい。
教室を見渡すと、友人と雑談している者、一時間目までの宿題を全力で終わらせにかかっている者、ここならではの風景であるが自身の異能を使って遊びに興じる者、色んな奴がいる。俺は自席に到着すると鞄を置き机に突っ伏すのであった。何もやることがないからだ。しばらく経つとHRの時間を知らせるチャイムが鳴り、妖艶という言葉が似合う成人女性が入ってきた。