最終話 スローライフなのですわ!
「ジョシュア様? あの」
「押しかけて悪かったね。アメリア」
ティーが彼の膝の上で丸くなっている。ティーまでこの人にたぶらかされたというの?
「あの、私王宮に行く気は……」
やっぱり、帰ってきて私はわかったわ。私はこの領地が好き、田舎でも狭くても、生まれ育ったこの土地が好き、人が好き。
王子様は確かに魅力的だけれど、忙しない都会で過ごすのはやっぱり嫌。
「わかっているよ。俺こそ、昨夜は強引な真似をして悪かったよ」
王子はティーを撫でながら笑うと
「牧場の動物たちも、この子も……みんなみんな君が愛情をかけて育てたんだろう? 俺は旅人としてここに視察に来た時に感じたんだ」
王子はすごく優しい視線で私を見ると
「素敵な場所だなって」
と眉を下げて微笑んだ。
「ジョシュア様、せっかくのお話だけれど私……この領地で一生を終えたいと思っています。大好きな領民と大切に育てた動物たちと、一緒に。大事な領地だから守りたいんです」
「あぁ、そうするといい」
よかった。ジョシュア様が慈悲深いお方で。王子の求婚を断るなんて場合によっては死罪になる可能性もあるのだから。
「俺もここに暮らすから」
「え?」
「え?」
「えぇ〜〜〜っ!」
大声に驚いてティーが「ミャっ」と鳴いて部屋を出ていった。どうやら、私ののんびりスローライフに素敵な殿方が加わるみたいです。
おわり