6 ざまぁなのですわ!
「ジョシュア様……?」
リックが呟いた。
「えっ?」
カロナはびっくりした顔でジョシュア王子を見つめた。
「だから、ジョシュア様はこの国の第2王子……つい数ヶ月前まで他国に留学されていた文武両道で有名な……ほら学院時代から数々の大会を制覇しまくったっていう……」
「おや、その驚き様だと気がついていなかったのかな? 君は金縁の封筒で招待状を送ったと思うのだけど」
まさか、王子から招待状がくるなんて思っても見なくて最後の署名を読み飛ばしていたわ。
私の背筋に冷や汗がだらだらと流れる。私ったら、この人が王子だと知らずに「旅人さん」なんて呼んで土まみれの学舎でポップコーンを振る舞ってしまったのよ。
「ジョシュア様! 私は妹のカロリーナと申しますわ。訳あって今は姉と離れ離れ……本来なら私がコーネリアの地盤を継ぐはずだったのですが……」
カロナが咄嗟に考えた嘘で王子に擦り寄ろうとするも、王子の護衛がカロナを引き剥がす。
「おや、カロリーナ・デンバー男爵令嬢。君のお噂はかねがね。なんでも、アメリア嬢の元婚約者と駆け落ちをし、社交界を追放されたものの多額の資産を男爵家に寄付することで養子縁組に入ったとか。わが国の貴族にはあるまじき行為だね。全く……デンバー家は元々爵位を取り上げる予定だったが……それを早めても良さそうだ」
ジョシュア王子の薄いブルーの瞳が細まってカロナを睨んだ。彼女は子犬の様なキラキラした瞳で王子を見上げるも王子は目もくれずに私の方に歩み寄ると
「うちの御者と馬に野菜をありがとう。彼は俺が幼い頃からの家臣でね。それから、献上品もとても助かるよ」
「光栄ですわ」
私は少し気まずい思いを抱えながらも王子にお辞儀をすると必死で笑顔を浮かべた。差し出された手を取り、王子が私の手の甲にキスをした。
(あぁ、こんなに注目を集めるなんて……さっさと帰ってもふもふしたい。ゆっくりしたい)
「アメリア嬢が俺の手を取ったということは……」
ジョシュア王子はカロナたちの方を見ると冷たく笑ってこういった。
「君たちは僕の婚約者に対する不敬罪で爵位取り消し、そして2度と俺の婚約者の前に現れないようにそうだ、最近手に入れた島へお引っ越しをお願いしよか」
呆然と立ち尽くすリック、カロナは泣き叫んでいたが彼女たちを憐れむ人は1人もいなかった。私の「好き」を奪い続けたカロナの一生は小さな島で終えることになるのだろう。
——え? 今、婚約って言ったわよね?
「あの……ジョシュア様?」
「なんだい?」
「今、なんて?」
「だから、君の元妹君は不敬罪で」
「いえ、その前です。私はあなたの婚約……」
ジョシュア王子はきょとんとした顔で私を見つめると
「招待状に書いてあったろう? 婚約に応じる場合はパーティーにて俺の手を取ってほしいと」
嫌だ、私ったら……子供たちとティーに夢中で読み飛ばしたんだわ。
「さぁ、アメリア。疲れたろう。奥で休もう。それから、執事の彼にお茶を入れてもらおうじゃないか」
セドリックが「はい」と返事をする。
私は王子にエスコートされるがまま、ダンスフロアの上階にやってきてしまった。上階からはダンスフロアが一望でき、一際豪華なソファーに腰を下ろした。
(私、早くおうちに帰らなくちゃいけないのに……! この人と結婚をしてティーや領民たちを置き去りになんかできないわ。なんとかうまくかわしてしまわないと)
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