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1 高級な家具はいらないのですわ!


「すぐにお父様に高級な家具やアンティークはいらないと伝えてちょうだい。それから、領民たちをこの屋敷に集める様に手配を」

 セドリックは「承知しました」と短く返事をすると何人かの使用人たちに指示をテキパキと出す。カロナとリックがいなくなったのだから、家具は最低限で良いし、かわいい私の動物ちゃんたちが怪我をしないようにアンティークは必要ないわ。それに、家具なんてものはすぐに壊れてしまうものだから高級じゃなくたっていい。

 そうだ、横暴なリックとカロナのせいで領民たちには随分と迷惑をかけてしまったし、彼らから色々と買おうかしら。

 そうね、それがいいわ。領主たるもの領民と近い暮らしをするのが理想だわ。我が家は領民あってものだものね。帝王学を嗜んだとかいうリックが領民たちに独自の階級をつけようとしたり、わたしたちを過度に敬う様に指示したり……リックは都会の方出身だったからこの地が「辺境」と言うだけで下に見えていたのよね。お父様が決めた相手だったから我慢していたけれど……正直出て行ってくれてよかったわ。



 その日の夜、領民たちは何もない我が屋敷に集まっていた。

「みなさん、すみません。何も……なくて」

 領民たちが困惑するのも理解できる。今、この屋敷には何もないのだ。

「昨夜、我が婚約者のリックと我が妹カロナが駆け落ちを……」

 私の言葉に領民たちは「なんと……」「ひどいわ」「とんでもない」と口にする。リックやカロナの悪評は領民たちにも当然の様に広がっているのね。それもそうか……、カロナはわがまま放題で領民たちを奴隷の様に見下していたし、リックも同じ様に「田舎者」なんて呼んでいたんだもの。

「ですから、しばらくは私が父に代わってこの地を治めることになりますわ。今まで婚約者のリックや妹が……みなさんに横暴な真似をして申し訳ありませんでした」

 彼女たちを止められなかったのは私にも責任がある。

「これより、我がコーネリア家はさらに領民に寄り添った領地運営を目指していきたいと思っていますわ。まず手始めに……」



「お屋敷を子どもたちの学舎として解放しますわ。そして、私の婚約者が掲げた税制を撤廃。父の時代と同じ制度に戻しますわ。それに、貿易に関する新規制や食品などの献上も撤廃します」


 領民たちが驚いて声を上げる。


「では、お嬢様はどちらに?」

「そこでみんなにお願いがあるの。ちゃんと料金は支払うから……私1人が住むのに十分な小さなお家を建てるのを手伝ってほしいの」


 ログハウスのような小さなお家を森の中に建てて、そこでゆっくり過ごすのよ。うちの領民たちは優秀だし

この辺境の地で生き残ってきた歴史と知恵がある。リックたちが考えていた様に無理やり開拓して都会にする必要なんてないのよ。私たちのペースで、領民たちが楽しく暮らしていける様にするのがわたしたち領主の仕事だもの。


「もちろんです、アメリアお嬢様! すぐに設計図を作りますじゃ!」

「俺も……手伝います」

「わたしたちの学校ができるの?」

「やった〜!」


 こうして私は領民たちを縛り付けていたものを取り払い、彼らの協力体制を取り戻し、自分の理想の生活によりいっそう近づいたわ。


「じゃあ、西にある森に……小さなお家を建てたいの。設計図をお願いできるかしら」



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