一人だけ別ゲー・古いネタ
一人だけ別ゲーシリーズ。
主人公は見てるだけ。
俺はとある大人気MMORPGのデータベースとも言われるほどやり込みまくった廃課金プレイヤー。
課金するための金はあらゆる投資にリスクを分散しながら稼ぎ、ほぼ家から出ないことからご近所ではニートと勘違いされやすい生活をしている。
売り買いのほとんどをマクロ化して半オートで金を稼げる形にして、俺自身は取引画面に張り付かずに済むようにしてゲーム三昧の日々。
その稼ぎはもちろん俺の大好きなこのゲームへ課金する為であり、その課金するために用意した資金の余りで生活しているレベルの廃人プレイヤーだ。
このゲームは世界設定の作り込みが素晴らしい。
野菜や果物も固有名詞の物ばかり。
薬草とか種類の名前は一緒であるものの、薬草である○○となると、○○の部分は固有名詞になる。
日本語を使っているのに日本の慣用句は無くて、この世界の生活や歴史とかから生まれた慣用句を使う。
地域別による価値観の変化もリアル準拠だったりする。
例えば寒い地域なら寒い地域で不足しがちな物資の値段が上がり、温暖な地域でも気候や土質に合わずに流通量が少ない物は高くなる。
だからといって貿易とか言って高く売れる地域へ大量に卸すと、価格が落ちる。 つまり需給の価格曲線も完備。
情勢の変化でNPC達の会話内容も細かく変化する。
その他諸々も含めて、とにかく芸が細かいゲームだ。
楽しすぎてアチコチ安全に動き回る為に課金して課金して課金して。
ゲーム内ではハッキリと語られない裏設定まで完璧に理解しようとどっぷりハマりこみ、気が付けばゲームいちのデータベースになっていた。
そんなゲームでメンテナンスが有るからと一度ログアウトして、メンテ明けを今か今かと待ちわびていた頃に、一通のメッセージが届いた。
〜〜〜〜〜〜
貴方様のゲーム愛を受け取りました。
その愛するゲームを更に楽しみ尽くせる公式データパックのダウンロードを行います。
これに同意して下さる場合は下記のチェックボックスで『はい』にクリックして下さい。
なお『いいえ』にクリックしたり当メッセージをゴミ箱へ入れた瞬間に当メッセージは削除され、メッセージの再送信は行われません。
ダウンロードする
□ はい
□ いいえ
〜〜〜〜〜〜
このメッセージを見てしまった俺は、言うまでもなく大興奮。
☑ はい
とクリックしたね。
そして、クリックした直後に意識が無くなったね。
で、目覚めたらプレイしていたMMORPGの世界の中に入っていたって、量産型異世界転移小説みたいな展開になりましたとさ。
……俺? もちろん大喜び。
大好きなゲームの世界に入れたってのは、それはもう嬉しいことだったよ。
俺と同じくダウンロードではいにクリックした連中も100人は居たかな。 画面越しによく見る連中ばかりで、転移直後にオフ会みたいにはしゃぎまわったな。
見慣れない人が一人現代風な格好で、ポツンと俺達から距離をとって引いてたのが居たけど、人気ゲームだけあって色んなコラボもやってたから現代風装備もあったし気にしなかった。
あと全データ引き継ぎで今までの課金も無駄にならなかったのも、高ポイント。
それに比べて、プレイヤーキャラが女性だったのなんて、マイナス要素にもなりゃしない。
女性キャラの方が装備の性能が少し良かったり、各地の住人相手に好感度(信用度)が少しだけ上げやすかったりして、効率プレイの為に選んだのだって後悔しない。
そんなんでゲーム世界を遊び尽くそう!
と俺達は各々気ままに散らばって出発した。
その一年後。
丁度一年経つし、みんなで集まってどんな事をしてきたか報告会でもしないか?
なんてメールのやり取りをして、集合場所は去年移転してきた国の首都に決定した。
ここは噴水広場。
その集合場所でのんびり他の人の到着を待っている時だった。
俺は女性キャラで結構顔もスタイルも良い設定にしているからナンパも多くて、辟易しつつ追い払いながら待っていてた。
酒も呑むから夕方からって事になっていたのだが、広場の端で揉める男女を見かける。
まあこんな場所だし、痴話喧嘩の一つや二つは起きるよな〜。
そう思っていたのだが、揉めている女性の方に見覚えが有った。
一緒に転移してきて、なぜか一人引いていた現代風の格好をしていた女性だ。
それが現代風の格好をした男性と揉めていた。
となると同じ転移者のよしみとして、助けてやろうかと近寄ると、男性が叫びだした。
「結婚したのか、オレ以外のヤツと!」
この叫びに、思わず俺の足が止まる。
「お前と結婚するのは、オレだと思ってた……」
そう言いながら女性を抱きしめているが、女性の方には結婚指輪があり、男性の方には結婚指輪が無かった。
なんと言うか、この世界に転移してきて一人離れて引いていた理由が分かった気がする。
この人だけ違うゲームに招待されたんじゃないかって。
だいぶ前に時間を問わず例のCMが流れて、お茶の間を凍らせたアレですね。