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24 剃毛の日

ロックローズタワーのエステ・ビューティーローズでは、理容業務もエステティシャンメイドが行っている。顔剃りや身体のムダ毛剃りなどカミソリの扱いもまさにプロ級だ。カミソリはともすると肌を傷付けてしまいがちだが、彼女たちはカミソリを使い皮膚を傷付けずにムダ毛と顔につけたシェービングクリームだけを取り除く。


カミソリは相変わらずロックパディ家(イヨ印)の製品だが、改良が進みより扱いやすいものになっている。前世にドラッグストアーなんかで売っていた女性用の一枚刃により近づいてきた。エステティシャンメイドたちも剃りやすいと喜ばれている。

一年の間に最高級のシェービングクリームが開発された。半透明のボディーバターみたいなクリームは油分が多くしっとりしていて、はちみつが多く含まれているためか、シェービングの後のカミソリ負けしにくいと評判だ。

また、スチーマーに似せた魔道具も開発し、顔を暖めてからの施術はまさにエステ。ロックローズタワーにやってくるマダムたちを十分に満足させた。そのお支払もイヨたちを十分に満足させた。


そんなわけで、ロックローズタワーからプロフェッショナルなエステティシャンメイドを呼び寄せようとしたわけだが……


「ひ、姫巫女様に刃物をあてるなど、無理でございます。出来ません! 」


トップエステティシャンのカンナは、ひたすらに平身低頭で拒否をしてきた。

ロックローズタワー内のイヨのスペースでもある小さな社長室に何人かのエステティシャンを呼び出したが、どのエステティシャンも目を伏せており、誰も引き受けそうもない。イヨは社長という役職だが、年齢もあるため社長っぽい扱いしなくていいとは言っていたが……。困りました、部下が全然言うことを聞いてくれません。


「ええ……。カンナさん、なんでえぇ。ミサオさんも? ヤエさんもダメなの……? 」

「いや、いくらユキホムラが身分の差が少ないって言われていてもですよ? 国のトップ、姫巫女様ですよ! 無理に決まってるじゃないですか! 」

「わかるよ。わかるけどさあ……。」

「いくら社長の命令でも、荷が重すぎます! 絶対に無理でございます!! 」

「そんなこと言わずに……。どうなかならないかな……。」

ブンブンと首を降るカンナたちに手を合わせて懇願するが、首を縦に降るものはいなかった。


「んー……、こうなったら、イヨさんがするしかないんじゃないかしら……。」


マダムローザンヌの声にイヨはぎょっとする。

それからマダムの色っぽい流し目をみて、ゆっくりため息をつく。スポンサー様がそう言うならそうなんだろう。となりでムラクモもうなずいている。

なんとなくそうなってしまう予感がしたなあと思いながら。


「私にだって、荷が重いんですけど……。」





■□■□■□■□



剃毛の日。

アシスタントならいいと言ってくれたので、エステティシャンのカンナをお供に神殿のプライベートスペースまでやって来た。

カンナは茶色の髪を頭のてっぺんでお団子にしており、着ているのはジャージ素材だが白い白衣だ。綺麗系の顔によく似合っている。白衣から伸びる手足はもちろん、綺麗に手入れされていて美しい。

前世でのエステティシャンさんたちも美しかったが、こちらの小柄なドワーフのエステティシャンたちも負けてないなってイヨは思うのだ。まあ、施術者が美しくなければ説得力もないわけだが。

そう思うと……、イヨが行うのはあまり説得力に欠ける気がするなあとは思ったのは確かだが、あまりにも疑いの目をされ過ぎと言うか。


「あ、あのう……。イクオミ様、なにか……? 」

「……いや、見ているだけだ。」

「そ、そうですか。えっと―――」


まだ準備を行っているだけなのだが、イクオミにじぃーっと見られ過ぎて落ち着かない。オタク並みに早口になるのを自覚するが、落ち着かないから止まらないまま話す。


「あ、この魔道具ですか? こちらはスチーマーといって、肌を暖める道具です。スチーマーで肌とうぶ毛を温めて蒸すことで、肌の血流が良くなり、肌もうぶ毛も柔らかくなるんですよ。カミソリでうぶ毛を剃るときに柔らかい方が肌に対してのカミソリの摩擦も弱くなり、肌を傷つけない効果があります。それで―――」


「くくく。のう、そんなに気になるなら、わらわより先におぬしがしてもらおうか? 顔剃り。」

「あ、ま、しかし、いや、それは、」

「なにを慌てておるのだ。安全性など自身で体感したほうが、わかるのではないか? そのようにみつめていたら、イヨに穴が空いてしまうぞ。」

「――毒味のようなものか。よし、イヨとやら、まずわたくしから行いなさい。」


どーん、と施術用のソファに腰かける。頭の部分は後屈して顔が上を向くような枕がついている。これもビューティーローズ製品である。

イヨはスチーマーをセットして、イクオミの顔に向ける。


「………あの、イクオミ様、目を閉じていただいても……? 」

「いや。なにを行うかしっかりこの目で確認しなくてはならないので。」

「……はぁ、左様ですか。ただ、目の近くを剃るときは閉じてくださいね。」

「うむ。まずはこのすちーまーとやらだな。」


鋭い目付きがイヨのほうをずっと追ってくるのを感じながら、緊張度MAXで顔剃りを行うのであった。


「ン……っ。」

カミソリが頬をサアアアっと滑る。髭というには柔らかい手触りのものが、なんの引っ掛かりもなく剃れていく。、

おでこ、眉の周り、頬から顎にかけて、それから唇の周り。カミソリがイクオミの顔を滑る度に、剃られているほうはくすぐったいのか色っぽいため息みたいなものが産まれて、なぜかイヨが顔を赤らめる羽目になった。解せない。

ただ、シェービングクリームを手のひらで暖めて顔に乗せると、目元が少しだけ緩んだように思えた。

イヨは少し深い眉間のシワが伸びるよう、ちょっと長めにマッサージをした。

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