犬神様と私~夫に愛されない女が獣の神に愛されて~
カッコーン、という乾いた音に、私は目を覚ましました。
音の主は、ししおどしでした。
程良く暖かい春の風に抱かれるうち、ついウトウトしてしまったようです。
庭先に広がる一面の水面には、その風に乗ってやって来たであろう桜の花びらが何枚か泳いでいました。
今日もまた、これでもかと言わんばかりに桜が満開です。
……そういえば、あの頃もちょうど春の初めでした。
目覚ましついでに、昔のことを思い出しましょう。
あの頃、私はとある漁村に住んでおりました。
取り立てて特産品もない小さな漁村です。
男は小舟で海に繰り出し、女は陸で帰りを待つ、きっとどこの漁村でもある日常が続いておりました。
けれどもとある春、そんな日常が壊れる出来事がありました。
あの日、私は家で網を直していました。
漁師の妻としての務めです。
ようやく穴を塞いで一息つこうとしていた矢先、何やら外が騒がしいこと気付きました。
何か事故でもあったのかしらと家を出て、浜の方に行くと、信じられないものを見ました。
砂浜に、大きくて真っ白な犬が流れ着いていたのです。
もちろん、犬を見るのは初めてではありません。
ですが、大の大人が乗れそうなほど大きい犬は初めて見ました。
……その時はそう認識していたとはいえ、あまり犬犬と言うの失礼ですね。
その御方こそ、犬神様です。
若い衆に背負われてやって来た長老様が深々と頭を下げ、もごもごと犬神様に挨拶されましたので、私を含め周りの村人も浜に頭をこすりつけました。
するとそれまで倒れていた犬神様が身を起こされ、心の芯にまで響くような声で長老様の挨拶に応えられました。
決して大音声ではありませんが、不思議と良く通るお声でした。
犬神様はお怪我をされていました。
お命に別状はありませんが、しばらくの間静養が必要とのことでした。
これは大変。
お世話をせねば!
というわけで、村の寄り合い所に犬神様をお泊めすることになりました。
寄り合い所は、村で唯一畳の間がある建物です。
寄り合い所の周囲は高い板壁に囲まれており、海側に立てられた防風林も相まって、海風をしのげます。
それでも神様をお泊めするにはいささか貧相な気もしますが、私の住んでいる家と比べれば宮殿のようでした。
犬神様のお世話役として、村の女たちから何人か選ばれました。
犬神様がそう指定されたわけではありませんが、ともかくこういったお仕事は女のお役目なのです。
……正直に申せば、最初、私は犬神様を恐れていました。
畳の間にて、上座にいらっしゃる犬神様に平身低頭した時も、内心震えていました。
「……面を上げよ」
犬神様のお言葉に従い、私は顔を上げました。
お座りになられている犬神様の視線は私の背丈より上にあり、アギトから鋭い歯が垣間見えました。
もしもご不興を買うようなことがあれば、私などほんのひと噛みで喰いちぎられてしまう……などと、今にして思えば詮なき煩いをしていたものです。
「そなた、名は?」
「はっ、花と申します! れれっ、礼儀知らずの田舎娘ではございますが、精一杯お仕えする所存です!」
「お花よ。そう気張らずとも良い。取って食ったりはせぬ」
正しく私が恐れていたことを言い当てられて、心臓を射抜かれたような衝撃を受けました。
その時の私の表情がよほど可笑しかったのでしょう。
犬神様ははっはっはと笑われました。
神と名の付く存在とは思えない、無邪気で気持ちの良い笑い声でした。
親指より太い牙が何本も見えたのに、気付けば、私の中にあった恐怖は最初からなかったかのごとく、綺麗に消え去っていました。
それ以来、私は積極的に犬神様のところへと通うようになりました。
当番の者が何かの都合で行けなくなると、喜んで代役を引き受けました。
お世話、と申しても、犬神様はそう手のかかる御方ではありません。
お傷は自然と癒えるそうですし、犬神様はああせいこうせいと命じられる気質の御方ではありませんでしたから。
では何をしているのかと言うと、専らお話のお相手です。
私が話して良いのは犬神様に話しかけられた時のみですから、基本的には私が傾聴する側です。
「庭の桜がもう大方散ってしまったな。地上の桜は儚いものだ。……が、これもまた趣深い」
「散らない桜があるのですか?」
「うむ。私の住まう仙郷は常春の宮とも呼ばれている。常に春故、桜も常に咲いているのだ」
そんな桃源郷がこの世にあるなんてと、思わずため息が出ました。
春先の今でこそこの漁村は穏やかですが、嵐の季節、酷暑の季節、雪の季節と過酷な時期の方が長いですからね。
犬神様は本当にいろいろなことをご存じです。
犬神様は永い永い年月を生きられ、私たち人が歴史と呼ぶものをその眼でご覧になっていました。
殷王朝を滅亡へと誘い込んだ妲己が実はお狐様であったとか、西の果てで狼神に育てられていた人の双子の遊び相手になられたとか、化け狸たちと共に那須与一の扇射ちをご覧になったとか……。
二十年ほど前にこの世に生まれて以来、漁村から一歩も出たことのない私にとって、犬神様のお話はまことに美味な果実のように感じられました。
犬神様との時間がそれほどまでに甘美だっただけに、お勤めが終わった時は憂鬱な気分になります。
トボトボと家路につくと、待っているのは小さな平屋。
夏は熱気にむせ返り、冬は隙間風に凍える要領の悪い家です。
そして、家の中で待っているのは、夫の幸作です。
幸作とは、数年前に祝言をあげました。
幸作は漁師の息子で、同い年だったので、親の勧めで自然とそうなりました。
それ自体に不満はありません。
元より色恋事には疎い私ですし、夫婦生活なんてそのうち慣れるものだと周囲から聞いていましたから。
けれど、新婚と呼べる時期を過ぎてもなお、私は幸作との生活に慣れることができません。
幸作は口数の少ない人ですが、それは不器用なだけで悪い人じゃないと、最初は思っていました。
けれど、幸作は酒に一口付けた途端、饒舌に、そして乱暴になるのです。
「遅い! 亭主を待たせてどこほっつき歩いてた!?」
家に帰るなり、そういう罵声を浴びせられるのが私の日常でした。
「何度も申し上げているように、犬神様のお世話です」
「犬っころと亭主とどっちが大事なんでい!」
それはあんまりな言い草でした。
私はともかく、犬神様のことを畜生のごとく言い放つのは腹に据えかねます。
「あんたよりずっとずっと犬神様の方が大事よ!」
と言ってやりたいのもやまやまですが、私にそこまでの意気地はありませんでした。
どんなに酷いことを言われても、おちょこを投げつけられても、小さくなって耐え、幸作が眠るのを待つ。
それが、私が会得した夫婦生活の術でした。
そんな私の人生の惨めさが、犬神様がいらして以来、より際立つようになったと思います。
犬神様と過ごす時が幸せであればあるほど、幸作と過ごす時の惨めさが如実になるのです。
だからこそせめて犬神様の前では楽しく振舞おうと努めました。
けれど、そんな願いさえ危うくなることが起きました。
ある時、いつものように酒を飲んでいた幸作が、徳利が空になったことに腹を立てました。
それはいつものことなのですがその日は特に癪に障ったらしく、徳利を私に向けて投げつけたのです。
空とはいえ、徳利はそこそこ大きな陶器です。
運も悪いことに特に固い底の部分が、私の眼元にぶつかったのでした。
目が潰れるかと思うほどの圧迫感と痛みが走り、私は顔を抑えました。
徳利が床に落ち、甲高い音を立てて砕けました。
「どんくせえなぁ。女房のくせに酒の切れ目もわからねえからそういうことになるんだよ!」
幸作はそう言い捨てて、さっさと寝入ってしまいました。
残された私は涙を必死にこらえながら、飛び散った徳利の破片を拾い集めたものです。
翌朝、私は更なる失意に陥りました。
顔を洗おうと井戸水を組み上げている時、桶の水面に映っている自分の顔に、青いアザができていることに気付いたからです。
犬神様に会わす顔がない!
今日のお世話は他の人に変わって貰おうかとも思いました。
……けれど結局、私はいつも通り犬神様のお世話に参じたのです。
それほどまでにお会いしたかったのです。
「お花よ。その傷はどうした?」
「ちょっとした粗相でございます。どうかお気になさらずに」
「……そうか。早く癒えることを願おう」
犬神様は、それ以上は追及されず、その日は私と共に庭を散策しながら、かつて平安の都で詠われていたという歌を教えていただきました。
「久方の 光のどけき 春の日に しづ心なく 花の散るらむ」
すっかり葉桜となった木の下で犬神様の典雅な声音に耳を傾けると、傷も癒えていきました。
いえ本当の意味で傷が癒えたのです。
昨夜ついたばかりのあの青アザが、夕方には綺麗に消えていました。
驚いている私に、犬神様はわけを教えてくれました。
「言霊に乗せて、お花の傷が癒えるようにと願った。お花の傷つく姿は忍びない故」
「……犬神様っ」
その時、ギリギリで押さえ込んでいた思いが、涙とともにあふれ出しました。
犬神様の前ではしたないことをするなと心のどこかから聞こえてきますが、それで止められるものではありません。
小娘のように泣きじゃくる私の背中に、柔らかい感触がそっと添えられました。
犬神様の大きな尻尾が、私を抱きしめるが如く寄り添い、私を犬神様の懐へと誘ったのです。
「いっ、いけませんっ。犬神様! こんなご無礼を私ごときがっ……」
「私は、そなたを抱きしめたい故抱きしめているだけのこと。そなたも望みのままにするが良い」
私の望み……。
そうささやかれた私は、望みのまま、犬神様の懐で泣きました。
犬神様の真っ白な毛は、花のように香しく、そして柔らかでした。
涙をひとしきり流しきり、心の臓が落ち着きを取り戻し、呼吸も平静になった頃。
犬神様は縁側で寝そべり、私は、真に畏れ多いことながら、犬神様に寄りかかって座っておりました。
「……話してくれるか? そなたが泣いた訳を。詮無きことでの怪我ならば、ああも泣く道理はあるまい」
犬神様には何もかもお見通しのようです。
私は、話を始めました。
自分のことと、夫の幸作のことを……。
自分でも少しおかしくなっていたのかもしれません。
これまで溜めこんでいたものを吐き出すように、私は話続けました。
犬神様は、時折お耳をピクピクさせながら、私の話を黙って聞いてくださいました。
私はハッと我に返ったのは、赤かった空が暗くなった頃でした。
「申し訳ございません! つい長話になってしまいました」
「いや。そなたを深く知ることができた」
「滅相もございません。……では、私はこれで……」
私は、犬神様から離れようと、腰を上げました。
「どこへ行く?」
「帰ります」
「帰る? そなたを苦しめる夫の下へか?」
「……でも、それでも私は幸作の妻です」
自分でも、どうして幸作のところへ帰らなければならないのか、よくわかりませんでした。
少なくとも、愛情の類ではありません。
世間体とか、義務感とか、産まれて以来自然とこびり付いた苔のような感覚が、私を動かしていました。
「犬神様のお心遣いはとても嬉しく思います。ですが、お気持ちだけいただきとうございます」
私がそう言って深々と頭を下げると、犬神様は、是非もなし、と一言だけおっしゃられました。
帰り道。
私の心中で、ある考えがわき上がっては霧散していました。
もしもあの時、犬神様のお心遣いを受け入れていれば、新しい人生が始まっていたのではないか?
それは、悔いというものでした。
でも、私は人です。
犬神様とは住む世界が異なるのです。
ほんの一時、関りを持てただけで十二分に幸せでしょう。
私は自分にそう言い聞かせ、家路を急ぎました。
そして、いつものように玄関の戸を開けました。
いつもなら、囲炉裏で酒を飲む幸作が座っているはずです。
ところがその時あったのは、囲炉裏に無造作に敷かれた布団と、その中で女と眠りこける幸作の姿でした。
二人とも服を着ていなくて……顔が真っ赤で……周囲には空の徳利が散らばっていて……。
二人は、とても満ち足りた寝顔をしていました。
酒を飲んで、交わって、満足感に浸ったまま眠りこけて……。
そこに私の居場所はありませんでした。
私は、走り出していました。
行くあてなどなく、ただただ走っていました。
一瞬、犬神様が頭によぎりました。
けれど、私は一度拒んでしまったのです。
犬神様のところへ行く資格などありません。
いつの間にか、私は波打ち際を走っていました。
月光に輝く波を踏み散らしながら、私は走りました。
小石や貝がチクチクと足に刺さり、痛みます。
けれども今は、この痛みさえ、私にとっては救いでした。
何でも良かったのです。
何でも良いから、この絶望を紛らわす何かが欲しかったのです。
お腹が痛くなるまで、息が切れるまで走って、ふとした拍子に、私は転びました。
足元程度の波でも、その中に倒れてしまえば災禍たり得ます。
砂利混じりの海水が口をふさぎ、強烈な引き波が私を海の深淵へと引きずり込もうとしているかのようでした。
……それも良い。
胸の潰れるような苦しみの中で、私にそんな思いが浮かびます。
死んでしまえばこの苦しみも終わるのですから。
死を受け入れるべく、もがくのを止めたその時。
襟首が強引に引っ張られ、私は、砂浜へと引きずり上げられました。
海水を吐き出している最中に見えたのは、私を見下ろす犬神様。
月の光をまとう白亜のお姿は、こんな時になんですが、美しいことこの上ないものでした。
「そなた、命を棄てたな。ならば、拾っても異議はあるまい?」
迷うことも、考えることも、私はしませんでした。
寄せては返す波の上を這い、私は、犬神様の胸元に顔を埋めました。
こうして、私は犬神様に拾われたのです。
それから、私の生活は一変しました。
私は犬神様の宿所にて生活し、お世話は私のみが行うようになったのです。
あの夜以来、家には帰っていません。
一度、酒に酔った幸作が夜更けになって押しかけて来たことがあります。
けれども、犬神様がほんのひと睨みしただけで、幸作は怯え、這う這うの体で逃げてしまいました。
酒の力を借りてもなお、己が女房のために虚勢を貫くことさえできない有様に、私は呆れを通り越して可笑しくなってしまいました。
犬神様も同様だったようで、二人で笑いました。
「お花は犬神様に見初められた」
そんな噂が聞こえてきました。
そうだと良いなとは思いますが、私がどうこうすることではありません。
全ては犬神様のご意志次第です。
これが人の男女ならば、とうにそういう関係になっていたでしょう。
ですが何分にも人と神様ですから、どうも勝手がわかりません。
そもそも神様に夫婦だの結婚だのといった概念があるのかもわかりません。
でも、わからないままでも良かったんです。
私はただ犬神様のお傍にいられればそれで幸せでした。
そして、その時は唐突に訪れました。
ある夏の日。
お風呂上りに、犬神様とお月見をしておりました。
まだ暑さが顔を出していない、ちょうど良い具合に涼しい夜でした。
「月が綺麗ですね、犬神様」
「……秦胤、だ」
突然聞かされた名前に、私はキョトンとしてしまいました。
「私の真名だ」
「真名、でございますか」
それは、人で言えば本名のようなものです。
神様にとってはもっと特別な意もあります。
「犬神とは、人が勝手にそう呼んでいるに過ぎぬ。好きに呼ばせているのは、言霊を操る神にとって真名は己が魂に深くかかわるものであり、悪意ある輩に知られれば危険だからだ。……故に、元よりの家族か……あるいは、契りを結びたく想う相手にしか、真名は教えぬ」
「……」
シンと、静寂が耳に響きます。
トクントクンと鼓動が高鳴っていくのを感じました。
「……すぐに答えてくれとは言わぬ」
「い、いえっ。気持ちが迷っているわけではありません。ただ……そのっ、このような時どうすれば良いのかわからなくて……」
だって、今まで生きてきてこんな経験なかったんですもの。
元々色恋に興味がなくて、夫とはなんとなく結婚しただけだったんですもの。
世間の人々はこういう時どうしているのでしょうか?
「作法があるわけではない。それこそ、はいかいいえでも良いのだ。そなたなりのやり方で示してくれ」
はい、ではあまりにも味気ない。
さりとて上手い言い回しなど思いつけそうにない。
だから私は考えるのを止めて、犬神様に抱きつきました。
遠慮などなく、私なりに全力を込めて。
「……そなたの気持ちはわかった。今この時より私たちはつがいであるぞ」
その時初めて、犬神様に、私たち、という言葉を使っていただけました。
犬神様と同じ側になれたような気がして、無上の喜びを感じたものです
そして、その喜びのまま、私は犬神様に身体を開きました。
月日は巡り、再び春が訪れた頃、犬神様の傷は完治し、ここを去られる時がきました。
犬神様に置いていかれる……などとは微塵も思っていませんでした。
犬神様と契りを結んで以来、私は夫婦らしい夫婦がいかなるものかを知り、もはやそんな疑いを抱くことさえなくなっていたからです。
「もうじきここを発つ。さすればそなたは村の者とは今生の別れになるが……」
「承知しています」
手短な答えからもお察しかと思いますが、村を離れることに迷いはありませんでした。
寂しくないと言えばウソになります。
この村の思い出の全てが愛おしいわけではありませんが、それなりに良い思い出も、親も友人もいますから。
でもそれでも、犬神様と別れるという考えは一片もありません。
長老様と両親にその旨を伝えると、涙ながらにうなずいてくれました。
そして、旅立ちの前日の夜、親しい友人も招いて、ささやかな宴を開きました。
今にして思えば、人と触れ合ったのはそれが最後でしたね。
翌朝、犬神様の背に乗って、私は村を発ちました。
見送りに来てくれた人たちに、雲に入ってその姿が見えなくなるまで、私は手を振り続けました。
それから、私は今いる常春の宮へと参りました。
永遠に散りきらぬ桜が見下ろすまこと美しい桃源郷でございます。
八百万の神々が居を構えておられるというだけあって、ちょっとした丘から眺めても地平線の彼方まで建物が途切れません。
犬神様は壮麗なお屋敷をお持ちで、そこが私の新居となりました。
お屋敷は数十のお部屋のある広さですが、それでもなお敷地の過半は庭が占めています。
庭の中央には、舟遊びができるほど大きな池があり、実際、犬神様とご一緒に舟を出し、眼下に泳ぐ黄金魚に餌をやったものです。
「御台所様。御館様がお帰りになられました」
声のする方を振り返ると、手に持てるくらいの大きさの和人形が、頭を下げておりました。
もちろん人ではありません。
私に仕えてくれる眷属のようなもので、私自身が命を吹き込みました。
そう、私もこの地で過ごすうち、言霊の力を使えるようになったのです。
別に修行などしておりません。
気付けばそうなっていました。
犬神様によれば、今の私はいわゆる人神と呼ばれる状態だそうで、これから神の階梯を昇っていくのだとか……。
さて、これから私は今着ているこの十二単を軽く整えてから犬神様をお迎えしますので、これにて昔話を終わらせていただきます。