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第54話 DDDD!! 破滅を呼ぶ悪魔

 

「すーみませーん!」

 ジュエルブレッドにかけられた準備中に看板を無視し、ひたすら呼びかける1つの影。

「お店開けて下さーい! ……やっぱりダメかぁ」

 影はニヤリと笑い、取り出したフラグメントからあるものを出現させる。

「じゃあ仕方ないね。予定通りやっちゃおうか」

「リョリョ……了解致しました」

 影、フローラの合図と共に、《キメラアトラム》は鞭の様な腕を振るい、扉ごと玄関を抉り飛ばした。

 通行人の悲鳴が上がる中、隣のアパートから灰簾と翡翠が飛び出す。

「うわっ、寝起きに襲撃ってマジ!?」

「あっ、ふっ、寝てる、場合じゃない!」


《《ゲート カイホウ!!》》


《水渦・カタラクト!! アクア・レイス!!》

《風迅・ストーム!! ヴェントス・スピリット!!》


《レイス・ウンディーネの方程式》

《スピリット・シルフィーネ理論!!》



 変身と同時に2人は地上へ降り立つ。そして、



《ゲート カイホウ!!》


《業火絢爛!! Re バースト!!! イグナイト・リーパー!!!》


《リーパー・サラマンダーの法則!! アペンド・フェニックス!!》


「準備中の文字も読めないのか」

 変身しながら店の外へ現れた《イグナイトリーパー》。

「3対1かぁ。いける?」

「問題ありません」

 しかしこの状況でもフローラの余裕は消えない。それどころか自分を戦力から除外しても問題ないとまで考えている。そしてそれは《キメラアトラム》も同様。

「舐めやがってぇ〜」

「……」


《E リアクション!!》


《ゲート カイホウ!!》


《アトリビュータム・フュージョン!! イグニス! アクア! テラ! ヴェントス! イコール! イコール!! エレメンタル・レイス!!!》


《レイス・ウンディーネの方程式 アディション・ウィザード》


 それを見た《レイス》は足を止め、形態を変化させる。

「灰簾ちゃん、最初から全力!?」

「あのアトラム、完全体より危険な気配がする!」

「はいっ!?」

 驚愕の叫びを上げる《スピリット》に構わず、《エレメンタルレイス》はフラグメントシェイカーを振るい、炎と水の斬撃を飛ばした。

 同時に《イグナイトリーパー》も駆け出し、炎を纏った旋風脚を突き刺す。

 爆発と煙が巻き上がる。それが晴れた時、

「っ!?」

「嘘……!?」

 《キメラアトラム》の身体に傷がつくことは愚か、ほんの僅かも仰け反った気配が無い。現れた時と変わらない姿で、変わらない位置に立っていた。

「もっと本気を出せ。フローララララ……フローラ様のデータ採取に役立たない」

「このまま長引かせるのはダメだ!」

 《イグナイトリーパー》は僅かに距離を取ると、今度はより苛烈な炎を纏った蹴りを見舞う。


《サモンリアクション イグニス・サラマンダー》


 《エレメンタルレイス》も炎の大蜥蜴を召喚。竜巻の様な炎を吐きつけ、《キメラアトラム》を焼き尽くさんとする。

 それだけではない。炎は《イグナイトリーパー》の足へ吸収され、大槍の様な苛烈さを伴う。

「一気に!」


《クリティカル リアクション!!》


「決める!!!」


《サラマンダー・フェニックス!! アルケミック・イグニッションブレイク!!》


 そのまま持てる力の全てを振り絞り、《キメラアトラム》を蹴り飛ばした。地面を抉りながら吹き飛ばされ、ガードレールへ叩きつける。

 だが、

「ココココ……これが属性の相乗効果による破壊力」

 爆炎の中から飛び出したエネルギー弾が《イグナイトリーパー》を撃ち抜く。

「ぐぁぁぁっ!?」

「ユナカ、くっ!?」

 助けに入ろうとした《エレメンタルレイス》を、同じく飛び出した鞭が縛り上げる。

「良いデータが取れた。その調子で頼むぞ」

 焼き尽くされた《キメラアトラム》の身体から炎が消えた瞬間、溶けた皮膚が再生していく。


「こんにゃろー!! 私は無視ってか!!」

 《スピリット》はホルダーからフラグメントを取り出す。それは珊瑚から渡された新たな力。

「これ使って、わっ!?」

 しかしそれを的確に弾き飛ばす光弾が飛来した。フラグメントは破壊されたジュエルブレッドの中へ消える。

「ちょっ、誰!?」


「次は逃がさねぇ、風の錬生術師」


 声の方へ視線を向ける。そこにはセレスタとガーデルの姿があった。

「さっすが。俺達のこと助けに来てくれたんだ」

「あっいや、モルオンがこっち行けって言ったから来ただけ」

「ぶっ潰してやる!!」

 フローラには目もくれず駆け出すセレスタに代わり、ガーデルが答える。


《《Mixing!》》


《Impurities Mix Mix Mix!! ヘセレスタイト・ピポグリフ!!》

《Impurities Mix Mix Mix!! ヘガーデンクォーツ・バフォメット!!》


 そして2人は変異。そのまま間髪入れず、


《《Mixing!》》


《Impurities Mix Mix Mix!! セレンディバイト・ロック!!》

《Impurities Mix Mix Mix!! ヘマタイト・ミノタウロス!!》


 更なる力を解放。《セレスタ》は空から、《ガーデル》は地上から襲いかかる。

「キッッッツ!!」

 突進を躱し、《セレスタ》をフラグメントマグナムとヴィトロガンの弾幕で遠ざけようとする。

「突進と見せかけて首振り!」

「おぁっ!!」

 しかし《ガーデル》は急停止、躱した直後の隙を突いて角で打ちのめす。

「邪魔してんじゃねぇガーデル!!」

「いったぁ!?」

「ちっ、この……!」

 転がった《スピリット》を、《ガーデル》を巻き込みながら光弾が降り掛かる。

「いてててて、ずりゃあ!!」

 光弾を浴びながらも斧を振り下ろす《ガーデル》。致命の一撃を前方へ飛び込んで回避する。

「貰ったぁ!!」

「あっ、しまっ!?」

 《セレスタ》の翼の先から放たれたビームがその隙を狙い撃つ。咄嗟にフラグメントマグナムを盾にするが、

「うわぁぁぁっ!!」

 それで防ぎ切れる筈もなく、弾くと同時に《スピリット》へ直撃。アパートの外壁に衝突し、衝撃でフラグメントが外れた事により変身が解除されてしまう。

(やらかした……!)



「翡翠ちゃん……!」

 《イグナイトリーパー》はすぐに立ち上がり、翡翠の元へ向かおうとする。

「検証はまだ終わっていない」

 それを《キメラアトラム》は長大な刃を持った腕を振るって妨害。更に黒い液体をもう1本の腕から噴出させる。

「あっ、がっ、ぐぅっ!?」

 黒い液体が《イグナイトリーパー》に降りかかった瞬間、身体から爆発が発生。その場に崩れ落ちる。

 以前とは違い、自らの腕を自在に操っている。更にその力は《イグナイトリーパー》と《エレメンタルレイス》、今持てる最高戦力の力を持ってしても届かない。

「ただアトラムを繋ぎ合わせただけで、こんな力……!」


《サモンリアクション テラ・ノーム》


 《エレメンタルレイス》は土の精霊を召喚。無防備な翡翠を守るべく強固な結界を形成する。

「チッ、邪魔しやがって!」

「壊すの手伝うか」

 しかしこれも、《セレスタ》と《ガーデル》の前では僅かな時間稼ぎにしかならないだろう。


《サモンリアクション ヴェントス・シルフィーネ》


 加えて《エレメンタルレイス》は拘束から逃れるべく風の妖精を召喚。大量の風の矢を放つが、《キメラアトラム》は微動だにしない。

「効くわけないじゃん」

 それを見たフローラは嘲笑う。

「だってその子……完全体アトラム4匹がくっついてる様なもんだもんね」

「完全体が、4匹……!?」

 《エレメンタルレイス》は思わず呻く。フローラの言葉だけにではない。完全体4体分の力を、ここまで安定させた状態で融合させていることに対してだ。

「でもすぐに倒しちゃったらデータが勿体無いし……手加減してあげてるんだから感謝してね」

 小さく笑った唇に舌を這わせるフローラ。それを《イグナイトリーパー》は膝を着きながら睨む。


(琥珀くんがいないと灰簾さんの切り札は使えない……俺があの技を使おうにも……それで奴を倒せなかったら……!)

 自爆すればしばらく変身は出来ず、復活したとしても戦力にはならない。それ以前にこの状況で戦力を減らせば、2人の命は無いだろう。

(八方塞がり、なのか……!!)


「ユナカ」


 その時、店の奥から声が響く。同時に何かが《イグナイトリーパー》へ投げ渡された。

「ザクロ……!」

「そいつを倒すには局所的にエネルギーを集中して攻撃するしかない。それを使え」

 ザクロの言葉に、《イグナイトリーパー》は渡されたものを見つめる。


 デーモンハート。ザクロが言っていた考え、最後に残された未知の切り札。


「……如何ガガガ、なさいますか、フローラ様」

「邪魔しないであげて」

 それを見ていたフローラは《キメラアトラム》に指示する。

(なんだあれ……?)

 未知のものに対する探究心がフローラの心を揺れ動かした為だ。



 デーモンハートに模られた悪魔と目が合う。まるで試すように、見定めるように、赤い瞳が輝く。



「……分かった」



 《イグナイトリーパー》はヘリオライトフェニックスを外す。そして手にしたデーモンハートを2つに分割した。


《デーモンハート!!》


 そしてデーモンハートを、挟み込むようにフラグメントゲートへ装填。天面に触れると、悪魔の両腕が中心の心臓に似た結晶を合体させる。


《オーバーリアクション!!》


 目の前に石門が出現。それは骨と蒼灰色の炎に包まれ、まるで閉じ込められた悪魔が怒号を上げるような装飾が刻まれている。

 フラグメントゲートの隙間からも炎が溢れ出す。


「変身!!」


 再度フラグメントゲートを押し込んだ瞬間、デーモンハートの顎と両腕が展開。心臓部から燐光が放たれた。



《ゲート ブレイク!!!》



 石門を開き、否、突き破り、破壊し、中から巨大な炎の悪魔が出現。死神と大蜥蜴を両手で捉え、丸呑みにすると同時に《イグナイトリーパー》へ同化する。


《Deadry!! Dangerous!! Destruction!! Discharge !! デーモンハート・オーバーバースト!!! メルトリーパー!!!》


《アンノウン・ジ・エナジー》



 深紅のボディの上から蒼灰色の装甲が纏わりつき、それを無理矢理繋ぎ止めるように黒い布が巻き付く。悪魔の牙が手の甲へ備わり、踵には湾曲した角に似た刃が生える。

 胸を浮き出たデーモンハートを守るように、悪魔の腕の形をした装甲が押さえつける。

 6つに増殖したアイレンズと身体の水晶、大きく開いた口元の装甲、そしてデーモンハートから、青白い燐光が零れ落ちる。


 デーモンハートの力を取り込んで生まれた新たな姿、《メルトリーパー》。

 その出立ちを見た《エレメンタルレイス》の心臓が跳ね上がった。


「何なの、あれ……!?」



続く

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