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第50話 瞬光合身!! 光刃の錬生術師

 

「お前と遊んでいる暇なんかない!!」

 《フローラ》の言葉に対するユナカの返答は、フラグメントを装填する動作。そして、

「こいつが……ほたるちゃんを食って生まれたアトラム……!」

 それは琥珀も同じだった。

「冷静に……冷静に、ぶっ飛ばす!」

 2人はフラグメントゲートを躊躇いなく開いた。

「「変身!!」」


《《ゲート カイホウ!!》》


《業火絢爛!! Re バースト!!! イグナイト・リーパー!!!》

《土涛・クラッキング!! テラ・ファントム!!》


《リーパー・サラマンダーの法則!! アペンド・フェニックス!!》

《ファントム・ノーム結合!!》


「2対1なんて酷いよぉ……ってわけで」

 一気に距離を詰める2人に対し、《フローラ》は自らの指から赤い糸を垂らし、地面へそれらを張る。

「こっちもそれなりの数を揃えさせてもらうよ」

 《フローラ》が糸を引いた瞬間、地面を割って大量のバデック達が出現。そしてそれらは瞬く間に絡み合い、融合し、

「カ、カ、カ、カリィ……」

「ゴザ、ルゥゥゥ……」

 2体のアトラムへと姿を変える。以前に《リーパー》が倒した《カリグラフィアトラム》と《サムライアトラム》だった。

「よっし、これで互角だね! 俺は戦わないから後はよろ ──」


「いいや、お前の相手は!!」

 《イグナイトリーパー》はヴィトロサイズで2体のアトラムを斬りつける。その隙に《ファントム》が飛び出し、《フローラ》へ拳を振るった。

「僕だ!!」

「嘘ぉ!? 荒事は苦手なんだけど!!」

 しかし《フローラ》は《ファントム》の拳を束ねた赤い糸で防御。

「こっちにも戦力割かなきゃダメとかめんどい!」

 飛び退いた《フローラ》は地面へ砕いたフラグメントをばら撒く。植物のように強化バデック達が現れ、《ファントム》の行手を阻む。

「時間稼ぎのつもりか!」


《ニコラウム・アラクネー!! 強靭、粘着、ヘビィな織糸!!》


 《ファントム》はニコラウム・アラクネーのフラグメントを装填。金属糸を放ち、強化バデック達を拘束する。そして今度はその糸を《フローラ》へと射出。

「束縛が激しい男は嫌われるよ!」

 《フローラ》はそれを、蜘蛛の巣状に張った赤い糸の結界で防御。金属糸を逆に絡めとる。

「上等だ!」


《マグネシウム・ケルベロス!! 爆音……フラァァァァァァッッッシュ!!!》


 《ファントム》はマグネシウム・ケルベロスを装填。頭、両腕へ3つの狼の装甲が装着され、赤い糸の結界を拳で打ち破った。

「っ、やるじゃん」

 空中に張った糸の上へ飛び乗り、《フローラ》は更に地面へ赤い糸を突き立てる。

「本気出さなきゃいけないか」

 地面から引きずり出したのは《バンデットアトラム》と《エンプロイヤーアトラム》。しかしそれらは人形の様にピクリとも動かない。

「何をするつもりだ!」

「こうするつもりだよ」

 その2体へ大量の強化バデックが群がる。2つの抜け殻は強化バデックを繋ぎとして融合していき、

「ハタ、ラ……キヒ、カ、ネ……ハタラ、カネ……」


 銃の右腕、鞭の左腕、石臼のような頭にめり込んだ金貨の目玉。パッチワークのように不恰好な縫合を施された歪な存在、《キメラアトラム・タイプA》へ変化した。


「なっ!?」

「良い結果が出たねー! これもお兄ちゃんのアトラムが生まれたおかげだよ。ありがとうね?」

「……」

 《カリグラフィアトラム》と《サムライアトラム》を吹き飛ばした《イグナイトリーパー》は、《フローラ》へ鋭い視線を向けた。



「寄り道になっちゃうけどいいかな?」

 ジュエルブレッドへ向かう途中、光結と共にある場所へ寄ることとなった。

 それは金識町の端、晶が通う小学校の学区から離れた場所。そこには小さな施設が建っていた。

「ここって、もしかして……」

「私がいた施設。晶くんたちに助けてもらってからまた戻って来たんだけど……」

 すると光結はバッグの中から1枚の紙を取り出す。何が書いているのか晶には分からなかったが、それはすぐに光結自身の口から語られる。

「新しい学校に行くこと、今日決まったから伝えないといけないの」

「別の中学校に、ですか?」

「隣町のね。せっかく進学校に行かせてもらったのに、ちょっと申し訳ないけど」

「でもそれは光結さんの所為じゃ……」

 そう言いかけた晶の口へ、光結は人差し指を当てて塞ぐ。

「でも後悔はしてない。それに、みんなは責める人達じゃないのは分かってるから」

 小さく笑った光結の顔を見て、晶は言葉の先を飲み込んだ。

「一緒に入ってくれる? みんなに晶くんを紹介したいし」

 光結は扉の取手に手をかけ、晶と共に中へ入った。

「みんな、ただい……」


「おかえりなさい」


 それを出迎えたのは、黒い刃で四肢を貫かれた子供達、強化バデックに取り押さえられた施設職員、そして子供達の頭を優しく撫でる《マーダーアトラム》だった。

「そん、な!? なんでお前がここに!?」

「……どうしてみんなを」

 光結は晶を下がらせ、自身は一歩前へ出る。

「前から目はつけていたんだ。ただその時はこんな便利な身体じゃなくてさ。で、色んな人に聞いて回ったら」

 《マーダーアトラム》は頭を撫でていた女の子の足元にあるウサギのぬいぐるみを拾い上げる。

「君がここ出身だって聞いたんだ。来なかったらこっちから連絡しようと思ってたんだけど」

「みんなを離して。私に用があるなら関係ないでしょ」

「あ、もしかして子供達の心配してる? 大丈夫だよ。これ痛そうに見えるけど、ちょっとピリピリするくらい。泣いてるのは……僕が怖いからか」

「何が目的なんだ! 人質なんか取って!」

 晶の言葉に、《マーダーアトラム》は何かを思い出したように視線を向けた。

「そうだった。なんだっけあれ……あぁそう、フラグメント。光のやつ。あれちょうだい」

「……」

「出来ないなら、うーん、そうだなぁ」

 《マーダーアトラム》はウサギのぬいぐるみの頭を、黒い刃で切り落として見せた。鮮血の代わりに綿が溢れ出し、それを見た子供達が泣き喚く。

「これは……救いだからなぁ……じゃあ大人の身体をちょっとずつ切り落していこうかな。こっちはちゃんと痛くして、ね」

 それを聞いた職員の表情が青ざめる。中には老齢の職員もいるが、《マーダーアトラム》は何の躊躇いもなくやるだろう。

「っ、この……!」

「……分かった」

「光結さん!?」

 光結は取り出したフラグメントを地面へ転がす。それを見た晶は声を上げた。

「変身しても……みんなを連れ出して脱出は出来ない」

「でも、あの人が約束を守るわけが!」

「失礼だなぁ。約束は守るよ」

 《マーダーアトラム》はフラグメントを拾い上げる。

「はい、じゃあ君の分」

「……」

「ん? 君の分は?」

 晶は口を噤む。


 自分のフラグメントが何処にあるのかなど知らない。そもそも自分の中にあるのか知らない。

 知っていたとしても。


「……さない」

「ん?」


 自分がよく知る錬生術師達なら、フラグメントを渡さずに、皆を救う筈だ。


「渡さない!!」


 刹那、晶の右眼が強い輝きを放つ。そしてそこから光球が飛び出した。

「うわっ!?」

 光球は《マーダーアトラム》を吹き飛ばすだけでなく、黒い刃と強化バデックをその輝きで消滅させてしまった。

「なんっだよもう、あ、ちょっ!?」

 それだけではない。光球に導かれるように光結のフラグメントが《マーダーアトラム》の手を離れ、光結の手へ戻ったのだ。

 そして光球は晶の手へ戻り、

「これ……!」


《ルクスドラゴン ライト》


 フラグメントへと姿を変えたのだ。

「晶くん……やっぱり君は、私の……」

 光結はフラグメントを握り締めると、バッグの中から何かを取り出した。

「晶くん!」

 そしてそれを晶へ差し出す。


 光結がつけているものとは対称の向きとなった、もう1つのフラグメントゲート。


「私は君を信じてる。あとは……君が私を信じて欲しい」

「……言われなくても!」

 晶は躊躇うことなくフラグメントゲートを取り、自らの右手へ装着。そしてフラグメントゲートに模られた竜の手へ

 フラグメントを装填する。

 すると、

「えっ、うわぁっ!?」


 晶の体がフラグメントゲートへ吸い込まれる。そしてそのまま、光結のフラグメントゲートへ合体。

 フラグメントを抱いた2匹の竜が向き合い、その眼が眩い光を放つ。

「ありがとう晶くん」

 同じ様に光を放つ光結の両眼には、紋章が浮かび上がっていた。


《ルクスドラゴン レフト》

《ルクスドラゴン ライト》


《アナライズリアクション レフトサイド》


 フラグメントゲートから飛び出した2匹の光竜。それらは《マーダーアトラム》を突き飛ばし、そして巨大な光の門へ姿を変える。


「変身!!」


 光結がフラグメントゲートを叩き、光の門を両手で押し開ける。フラグメントゲートの2匹の竜は、刺々しい姿の双頭竜へ姿を変えた。


《ゲート カイホウ》


《Blink the Shining!! ルクスドラゴン・ルーメン!! キラキラキラーン!!》


 その姿は、《アンフィス》が変身した時とはまるで異なる姿をしていた。


 竜の頭を模した頭の装甲、開いた顎の隙間から鋭い白色のアイレンズが覗く。左肩には竜の鈎爪の様な3本のブレード、右肩には竜の尾に似た3本の棘が突き出す。竜の翼はスカートアーマーへ変化し、両足の白い装甲には黄金のモールドが刻みつけられる。

 胸部には羽ばたく竜のクレストが浮かび、背には背鰭のように並ぶ4本のスタビライザーが突出する。


「はぁ……? なにその格好……?」

「私の名前は初めて会った時に名乗った」


 純白と黄金の輝きを放ち、両腕から光の刃を出した《ウィスプ》は言い放つ。


「2度目はない」



続く

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