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第36話 天火一戦!! 死神対死神の行方

 

 夜の街を明るく照らす不死鳥の炎。それと相対した《ネクロリーパー》は黒炎を右腕に纏い、鎌に似た黒刃を幾重も出現させる。

「ウルアァァァ!!」

 そしてそれらを一気に《イグナイトリーパー》へ投擲。宙を裂き、周囲を取り囲むように飛来する。

「はぁっ!!」

 《イグナイトリーパー》の外套が炎の大翼へと変化。黒刃を全て焼き払うと同時に空へ飛び立つ。

「くっ、ぐぉぉ!?」

 そこから瞬時に急降下、蹴りを《ネクロリーパー》へと叩きつけ、再び飛翔。大きく旋回し、今度は更に速度を増した蹴りを叩き込んだ。

「ぅぐぅぅぅ……!!」


 そこから《ネクロリーパー》は予想だにしない行動に出る。

「イェヒヒヒ、ヒィン!?」

 炎の鎖を伸ばし、再生した《バンデットアトラム》を絡めとると、自らの体内に炎として吸収。右腕が《バンデットアトラム》の持つ銃へと変貌した。

「アトラムを吸収した、ぁっ!?」

「それもうれんせ、うぎゃっ!?」

 同時に《ネクロリーパー》は銃を手当たり次第に乱射。《レイス》と《スピリット》を黒い火炎弾で吹き飛ばし、続いて空を飛ぶ《イグナイトリーパー》を銃撃する。


《イグニスサラマンダー!!》

《ヘリオライトフェニックス!!》


《カンゼンネンショー!!!》


 手元へヴィトロサイズを出現させ、2つのフラグメント・Vを装填。展開した刃へ宿った炎は透き通る水晶のように純度の高い輝きを放つ。


《バーニングストライク!! ニセン!!!》


 袈裟斬り、そして逆袈裟で放たれた2羽の炎の鳥。それらは黒い火炎弾を掻き消しながら《ネクロリーパー》へ突進。

「おご、が、ぐぃぎぃぃぃ!!」

 撃ち落とそうとするが、鳥達は周囲を飛び回りながら炎の竜巻を発生させ、《ネクロリーパー》の身体を空へと打ち上げる。

「はぁぁぁっ!!!」

「ぬがぁぁぁ!?」

 そこへ大蜥蜴の炎爪と化したヴィトロサイズを振り下ろした。地面へ落ちた《ネクロリーパー》は地面を殴りつけると、

「お前も寄越せ!!」

「ハタラァ!?」

 更に《エンプロイヤーアトラム》を左手から放った炎の鎖で手繰り寄せ、その身に取り込む。左腕は太い鞭へ変化し、周囲を無茶苦茶に薙ぎ払う。

「うっ、うわっ!?」

 近くで伏していた《ファントム》も猛攻に巻き込まれ、電信柱へと吹き飛ばされへし折った。


「お前だけは、俺がぁぁぁ!!」

 鞭は《イグナイトリーパー》を打ちのめそうとするが、肩を掠めながらも突進は止まらない。ヴィトロサイズを投擲して鞭を斬り飛ばし、《イグナイトリーパー》と《ネクロリーパー》が組み合う。


「許さない、絶対に許さないぞ!!」

「……その通りだ。俺はこの先も、自分を許すことなんかしない」


 右腕の銃による殴打を蹴りで弾き、左腕の鞭打も蹴りで弾き、そして《イグナイトリーパー》の蹴りが《ネクロリーパー》の胸の中心を捉えた。


「ごっ!?」

「けど自分を罰することなんかより、やらなきゃならないことが俺にはある!!」

「うがぁっ!?」


 続く蹴りも再び中心を捉え、《ネクロリーパー》は大きく後ろへ吹き飛ばされる。

「ぅぅぅ……ぅおおおおぉぉぉ!!!」

 《ネクロリーパー》は絶叫。身体中から黒い炎を漏出させ、顎の装甲が展開。そこから煙を噴出する。


《クリティカル リアクション!!》


 フラグメントゲートが開閉される。《イグナイトリーパー》の眼と水晶へ、文字通り炎が燃え上がる。《ネクロリーパー》が纏うそれよりも、何倍も大きく。


 空へ飛び上がった《リーパー》はその炎の全てを右足へ集結させる。

「俺はほたるを……」



《サラマンダー・フェニックス!! アルケミック・イグニッションブレイク!!》



「必ず助け出す!!!」



 足に宿った炎はその輝きを保ったまま結晶のように生長、《ネクロリーパー》が突き出した黒炎の拳と真正面から衝突する。衝撃は周囲を伝わり、熱波が空間を震わせる。


 しかし拮抗はすぐに崩れ去った。


「ぅ、がぁ、ぁ、ぁぁぁぁああああ!!!?」


 《ネクロリーパー》の腕は崩壊。そのまま《イグナイトリーパー》の一撃が身体を捉え、無数の爆発を伴いながら吹き飛ばした。



「あーあ、せっかく上手くいくと思ったのになぁ」

 一部始終を見届けたフローラは深いため息を吐くと、音も無く姿を消した。

「でも、全くの無駄ではなかった、かな?」

 不穏な一言を残して。



「ぅぅ、ぐ、ぬぁぁぁ……!!」

 吹き飛ばされた先で《ネクロリーパー》は尚も立ち上がり、大量の火花を散らしながら《イグナイトリーパー》へと近づこうとする。だがその両腕は半ばから砕け、燻る程度の残火しか残っていない状態。勝敗は明白だった。

 対する《イグナイトリーパー》は変身を解く。自分自身の心、その半身でもある《ネクロリーパー》を見据えながら、ユナカは呟いた。


「お前の怒りも、想いも受け取った。あとは俺に任せてくれ」

「っ!」


 《ネクロリーパー》は歩みを止める。同時に身体から大量の灰が溢れ、風に乗って行く。


「……ぁぁ…………必、ず……やり、とげ……」


 そんな言葉を遺し、《ネクロリーパー》だったものは全て灰となって消えた。



「まったく君という奴は……」

「あぁ、本当に迷惑をかけた。みんなも」

 呆れ笑いを浮かべるザクロ、そして駆け寄って来た3人へ、ユナカは憑き物が落ちた顔で言葉を掛ける。

「でももう迷わない」

「えー本当すかー?」

「ちょっと!?」

 わざとらしく目を細める翡翠を灰簾が諌めようとしたが、それを見たユナカと琥珀は笑っていた。

 だがそれも束の間、あることに気づいたユナカの顔に焦りが浮かぶ。

「……皆がここにいるってことは」

「あぁ、晶くんなら心配いらないよ」

 言葉の先を読んでいたようにザクロが遮る。いつも通りの不的な笑みを浮かべつつも、困った様に眉を顰めた奇妙な表情をしながら。

「信頼出来る人間に見張りを頼んでいる。高い代金を支払うことになったが」



「良かったぁ……」

 カラスからの映像でユナカの勝利を目にした晶は、安堵の息を吐くと共に椅子にもたれかかった。

 店のカウンターに隠れている状態。迂闊に声を出さないように言われている為、息を潜めた状態で見守っていたのだ。

(やっぱりユナカさんって凄い人だな……)

 自身の心の一部であるアトラムと真正面から対峙し、打ち勝つことの難しさは晶も理解している。ユナカへの憧れが強まる一方で、自身の不甲斐無さを痛感してしまう。

(あぁもう、勝手にヘコんでたってダメなのに……僕には僕の、出来る事をやらないと!)

 すぐに皆は戻って来る。彼等を出迎える準備をしようとカウンターから顔を出した時だった。

「ぁ……」

 招かれざる客が、店のドア1枚を隔てて立っていた。


「随分と手間をかけさせたものだ」


 同時にドアを砕け、向こう側にいた人物が踏み入る。

「ぁ、アン、フィス……!?」

「あの炎の若造も少しは役に立った」

「ぅ、ぅ……」

 晶の身体は蛇に睨まれた蛙の様に動けなくなる。力を抑える布があるにも関わらず、晶の右眼は沸騰するかの様に熱くなり、内側から何かが溢れ出そうとする。

 対するアンフィスは歩みを進めながらも周囲に目を光らせていた。

(何故今になって守りを薄くした……優先順位が変わったのか。だが構わん)

 今のアンフィスは極力変身を避けたい状況。この状況が最大のチャンスなのだ。

 アンフィスの左眼の輝きが増すと、晶の布が塵となって消える。そうして紋章が浮かび上がった右眼と左眼が向かい合う。

「ようやく、私の本当の力が……」

「い、やだ……絶対、絶対ぃ……」

 晶の固い意志とは裏腹に、身体から何かが抜き取られていく感覚に支配される。床に膝を突き、それでも右眼はアンフィスの左眼に釘付けとなっている。


 だからこそだろう。飛来したエネルギー弾をアンフィスは躱す事が出来なかった。

「うっ!?」

「うわっ!?」

 アンフィスが床に転がると同時に、晶も何か強い力に反発され吹き飛ぶ。そのまま衝撃で気絶してしまったが、アンフィスは右胸と脇腹に刻まれた焼け跡を凝視する。

「誰だ!!」

 アンフィスは自らへ攻撃を加え、目の前に立ち塞がる影に向かって叫ぶ。


 ヴィトロガンを構えた人物の顔には、時計を模した仮面があった。


「アンフィス、こうして姿を見るのは久しぶりだな」

「……貴様のことなど知らん」

「構わない。だがこの状況でまだ戦う選択肢を取るのか?」

「知れた、こと、ぐぅっ!?」

 立ち上がり、ミッシングゲートを出現させようとしたアンフィスだったが、突如呻きながら膝をついた。

 口の端から血が流れ、加えて鼻や目からも溢れ始める。

「その少女の体は最早限界だ。変身する事すらままならない状態で何が出来る」

「ぐ、くぅぅぅ……こんな軟弱な童共が継承者でなければ……」

 アンフィスは揺めきながら立ち上がると、一瞬の光と共に姿を消した。それを見届けた仮面の人物はヴィトロガンをしまい、懐から数本のフラグメント・Vを取り出し、見つめる。

「だが奴がここまで追い詰められた以上、何をして来るか分からないぞ、錬生術師達」



「ぅぅ!? はぁ、はぁ、はぁぁぁ……!」

 無様に逃げおおせたアンフィスは路地裏のゴミ捨て場へ転がり込む。あの仮面の人物が言うことは全て真実だ。アンフィスが乗っ取った少女の肉体は既に死へ向かいつつある。光の錬生術師の正式な継承者ではあるが、アンフィスにより酷使された故の結果だった。

「もう、時間がない……!」

 白いワイシャツを崩壊する身体から流れ出る血に染めながら、アンフィスは立ち上がった。


「最早手段は……選ばない!!!」



続く

Next Fragment……


《ルクスドラゴン・ライト》

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