性犯罪者の物語12
ルミの言葉に、サトシはハッと顔を上げた
「ルミちゃん、今なんと?」
目の前には、前髪を切り揃えたポニーテールに
そばかすの跡が残る若い娘の顔
サトシと目が合って、ルミは慌てて
視線を反らせた
「い、い、いえ....あなたのような
お強い人に対して私、
大それたことを言ってしまいました。
すいません、生意気ですね」
「いや、そんなことはない!
まさか君の口からそんな言葉が聞けるなんて
思っても無かったからさ」
その後に思ったことは口にはしなかった
(俺がお強い人だと?
そんなことはないぜ、でも君の言葉は
俺に力をくれる。
俺を本当に強くさせてくれるのかもな)
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ルミの兄のケンタが運転するトラックは、
無事、目的地に到着した。
彼が言っていたほどには揺れなかったし、
精密機械用の荷台は快適だった。
しかし、荷台の中の12人には
外の景色は見ることができない
トラックが停止したのが分かり、
ガチャガチャと外からリアドアを
開けられたとき、全員が身構えた
しかし、彼らの目の前にはケンタが居た
「ルミ、そして皆さん、無事に到着しました!
改めて、妹を助けてくれて感謝します。
本当に、ありがとうございました
先ほどのお方は残念でしたが....」
ケンタは、顔に安堵の表情を浮かべていたが、
サトシは抜け目なく周囲を観察していた
ケンタの背後には、
彼と同じグレーの作業服を着た数人が居る。
そして、目の前には
閉められた大きなシャッター
そのシャッターは、横一列の等間隔に
いくつもあって、その全てが閉められていた。
側に、消火用の高圧放水ホースを構えた数人と、
数台のフォークリフトが見える
(多分、ここは工場の物流棟だな。
ビーグルマップで見たところ、
他に数棟の工場棟と建物があったはず。
この会社は確か、機械部品メーカーだったか)
そう、ここは結構名の知れた有名メーカーの
工場だった
トラックの荷台から
ゾロゾロと降りるサトシ一行。
すると、グレーの作業着軍団の中の一人、
白髪交じりの初老の男が言った。
「避難者の方々、ようこそ我々の工場へ
当社は、地域貢献の一環として、
この工場を避難所として開放いたします。
皆さまが快適にお過ごしになれるよう、
当方は最善を尽くすつもりでおりますので
どうぞご安心ください
しかしながら大変申し訳ないのですが、
皆さまには丸一日、この棟に居て頂きます
ご不自由だとは思いますが、
これは感染対策なのです、ご理解下さい」
サトシは、頷いて答えた
「うむ、賢明なご判断だと思いますよ
私が見たところ、感染した人間は
遅くとも数時間程度で発病していて、
若い者ほど、その時間は短いようです。
丸一日、隔離していれば十分でしょう
あ、遅ればせながら
我々を受け入れて下さって
誠にありがとうございます」
そして、深々と頭を下げた
初老の男も同じく頭を下げる
かつて、トップ営業マンだったサトシは
瞬時に理解した
(この初老の男が、ここのトップだろうな。
彼を真ん中にして、
他の社員たちが扇形に展開しているからね。
多分、工場長とか所長とか、そういう役職だ)
サトシの思った通りだった。
二人は自己紹介し合った後、しばらく情報を
交換しあった
「はい、私が最初に逃げ込んだ病院と、
その後の洋食屋で実際に見ました....
感染した人間が発病して、
まるでゾンビのように非感染者を襲うのをね
多分、人口が密集している場所は、
ここよりももっと酷いと思います」
サトシの言葉に、工場長である初老の男が
相槌を打って答えた
「そうでしょうね....
今のところ、名古屋市内の本社からの連絡が
途絶えております。
東京にある事業所とは連絡が取れていて、
どうやら、自衛隊が即急に出動して
都心に防衛線を張っているとか
何にせよ、情報が混乱していて
正確な状況は把握できていないのです」
工場長と話し終えた後、
サトシは皆を探しに行った
この棟は、サトシの予想通りに物流棟で、
要するに製品を出荷するための施設だ。
所々に、木箱が高く積まれて並んでおり、
鉄筋丸出しの天井には、
レールの上を動く天井クレーンがある
そして、この工場に逃げてきた避難者たちは
かなりの数が居た
人込みの中、サトシは仲間たちを見つけて
駆け寄った
「この工場は、広くて建物は堅固で
設備も整っている。
立て籠もるにはもってこいだろう。
何よりも、
組織がしっかりしていて安心できる
ただ、食料や生活物資に関しては、
口を濁していた気がする」
先生が答えた
「そうだね、それだけが心配だよね....
でも、ここは工場地帯だ。
近隣には、建設機械の修理工場と
食品メーカーの製造工場があるんだ。
少し離れているけど、病院もね
それらが団結して一帯を守れば、
なんとかやっていけるかもしれないよ
この工場にある豊富な材料と工作機械を
使って、武器を作る必要がある」
サトシが言った
「ああ、
ここの連中なら、それが出来るだろうが
でも、頭の中で計画を練るのと、
実際にそれを行うのは、別の能力だ
俺達は実際にゾンビと戦った経験があるが、
ここの連中には、まだそれがないらしい
生き残るために、
覚悟を決めて一歩踏み出すには、
まだまだ高い壁があるぜ」
.....と、外が何やら騒がしい
けたたましい車の”クラクション音”が
聞こえてきて、それが、どんどん近づいてくる
やがて、シャッターの外から、
下品なクラクション音に混じって
男達の怒鳴り声が聞こえてきた
サトシはうんざりした
「早速、来やがったな....
ここの連中の
覚悟を目覚めさせる試練となるか
それとも....」
先生とルミがじっと、こちらを見ている
(ゴンさん、あんたの遺言は
きっと成就させてみせるよ!見ててくれ)
サトシは2人を見返して言った
「それじゃあ、レッツパーリィだ、仲間たち」




