表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/231

出会い

M360リボルバー用の38スペシャル弾は

リムドカートリッジなので、

リム(弾薬の底部)が出っ張っている。

よって、床に落ちた弾の大部分が

円を描くように転がり、

ヨッシーの所に戻ってきた



「ちょっと、にぃ、何やってんのよ!」



ヨッシーの隣に座るスミレも一緒になって

二人がかりで落ちた弾を拾った


なんとか全部拾い集めた...と思ったが、

空薬莢を含め数えると全部で24発だった


あと1発足りない!


ヨッシーは、上半身を屈めてあたふたと

バスの床を探っている。

すると、透き通った鐘のような声が言った



「あの、38スペシャル弾を落としましたよ」



ヨッシーが顔を上げると、

流れるような長い黒髪に

眼鏡を掛けた美少女の顔があった


SS団の団長だ


そして、団長は

ヨッシーと顔を合わせたとたんに

ビクッと身を引いてしまった


まあ、無理もないだろう。

こすからい鋭い目をした犯罪者チックな外見に、

みすぼらしい身なり、

そして片手に実銃を持っているのだ



「あの、すみません、ありがとうございます」



ヨッシーは、そう言うと、団長に向けて

恐る恐る手のひらを差し出した。

団長は、指でつまんだ38スペシャル弾を

ヨッシーの手の平にポトリと落としたのだった



////////////////////////////////////////////



・・・数十年後、核シェルター内にて・・・



「全く持って、ロマンチックとは言い難い

 出会いだなぁ...

 ちんかわ氏と十文字氏の印象が強すぎたのも

 原因だが、ピストルの弾を落として

 それを拾ってくれたってのが

 二人の馴れ初めとか。

 肩透かしもいいところだぞ!

 もっと、前の二人のようなインパクトが

 欲しかったぜ」



老人は、ボソボソと独り言を呟きながら、

言った言葉をそっくりそのまま、クラシカルな

キーボードに打ち込んだ


老人の目の前にある、

やはりクラシカルな液晶モニターに

打ち込んだ文字が表示される


すぐに、返答が帰ってきた



「仕方ねえだろ、ちんかわ氏と十文字氏は

 キャラが濃すぎんだよ!

 でも、言うなれば

 この”普通さ”が彼女の魅力でもあるんだよ


 確かに、弾を拾ってもらったってだけだが、

 その時に

 俺を見て少し怯えていた彼女の眼差しは、

 俺の心を見事に撃ち抜いたんだよ。

 まさに運命の出会いってやつだった


 大体、お前ときたら

 運命の相手と出会うこともなく、

 ずっと独りでこうして

 最後の一人になるまで引き籠りやがって!」



小言を言われて眉をしかめながらも、

老人は返した



「俺は、”彼女”の性格を受け継いだんだろう

 

 引き籠り体質なんだよ。

 でも、おかげで最後の一人になることが

 出来たんだ


 でも、まあ、

 今日でとうとうそれもおしまいだけどな。

 俺の目の前には、

 最後の食事に取っておいた缶詰と、

 最後の紅茶の一杯がある

 

 それらを味わった後は」



キーボードの横に並べられた”それら”を

眺める老人。

振り向くと、ベッドの上に

弾を装填した銃器が並べてあった


マカロフPMという小型の自動拳銃に、

コルト・パイソンの6インチ銃身のリボルバー、

さらに、AK74アサルトライフル



「やっぱり、パイソンの357マグナムで

 頭を撃ち抜くのが一番確実かな?


 AKは長すぎて、自分に向けて保持するのが

 難しそうだ」



老人は独り言を呟いたが、それをキーボードに

打つことはしなかった


しかし、液晶モニターに返信が表示される



「おいおいおい、もう少し俺の話を聞けって!

 これじゃあ、まるで、

 ”物語の打ち切りラスト”じゃねえか!!」



老人はため息をついて、長く伸びた白い顎鬚を

片手で梳かすような動作をした



「前置きがクソ長かったけど

 もう、二人の馴れ初めの話は聞いたぜ、

 これで十分だろ?


 ....分かったよ親父、

 もう少し付き合ってやるよ」



そして、独り言をそのまま、キーボードに

打ち込んだのだった



 



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ