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SS団

ヨッシーは、こちらへ向かってくるバスを

見つめた


一般的な形状の市営バスで、胴体には

デカデカと『チョコボール』の宣伝ペイントが

描かれている。

車体前の上部と、入り口横の電光行先表示には

何も出ていない


やがてバスは、バス停の前に止まり、

車体中央部の入り口がプシュッと開いた



「漁港町と同じく、ここでもやはり森〇製菓の

 猛プッシュが行われていたのか」



そう呟きながら、バスに乗り込むヨッシー。

自分達以外は、客は誰も乗っていないみたいだ


先頭のウメさんが言った



「あ、バスは無料で乗れるから。

 整理券とか通貨スマホは必要ないよ」



一行は、最後尾の横一列の座席に座った


ヨッシー、スミレ、ウメさん、リナ、リサ


の順に座る


と、ケツに固形物感を感じたヨッシーは

気が付いた。

忘れていたが、ズボンのケツポケットに

M360リボルバーをすっぽりと納めていたのだ


とりあえず、ポケットから拳銃と

弾の入ったプラケースを取り出して

膝の上に置く


3人の少女たちは

ハイテンションでおしゃべりを始め、

ウメさんも相手をしてあげている


窓際に座るヨッシーは、とりあえずボンヤリと

窓の外を眺めていた



「普通すぎて気が付かなかったけど、

 道沿いに電柱があって、

 ちゃんと電線も張っているな。

 電気は使えて、車を走らせる燃料もあるのか、

 改めてすげえな」



ヨッシーの独り言をウメさんはちゃんと拾った



「ええ、車や火力発電所の燃料はね、

 石油をバイオマス燃料で代用してるのよ


 この市には有機化学工場があって、

 その設備を転用して植物から作ってるの。

 さすがに、備蓄していた石油は枯渇してるし、

 バイオマス燃料は豊富ではないから、

 車の使用は、ほぼ、

 公共交通や運搬や工事車両などに

 限定されているんだけど。


 ちなみに、石油を代用できる

 バイオマス燃料の作り方は、

 ビーグル社がウェブで公開しているわよ」



さらにウメさんは続けて言った



「そういえば、あなたたちのお爺さん。

 十文字さんとヤキタコと一緒に、

 車に乗ろうとしている所を

 チラリと拝見したんだけどさ。


 長身で精悍でなかなかいい男....

 じゃなくて、左手が義手だったわよね。

 アレって、多分、ビーグル社の製品でしょ?


 だとしたら、”島”の人たちもビーグル社の

 お世話になっているってことよね」



ヨッシーは答えた



「ええ、お察しの通り、ジジイの左手は

 ビーグル社の義手ですよ。


 確か、造船所を始動させて初めて

 自分たちで船を作ったときに、

 ビーグル社からビーグルポイントを貰って

 それで購入したって聞きました。

 詳しくは知りませんがね」



ジジイが左手を失った経緯は、

ヨッシーにとってもトラウマだ。

そして、隣に座るスミレも、ヨッシーと同じく

俯いてしまった


そんな二人を見て、ウメさんはそれ以上は

聞いてこなかった



いつの間にか、バスの車窓から見える景色も

建物が多くなってきた。

漁港町や島にはない大きなマンションやら、

店舗群だったであろう建物、

さらに学校のようなものも見える。

道路の奥に緑色の木々が立ち並んでいる場所で

バスは停車した


そして、続々とバスに乗り込んでくる客たち


ヨッシーたちは目を見張った。

乗り込んできた客のほとんどが、

自分と同じくらいの年頃の若者たちなのだ


彼等は、男女とも小奇麗でお洒落に見える


ヨッシーの隣で、スミレがボソリと呟いた



「うう...私たちの恰好...

 まあ仕方ないけどさ」



改めて、スミレは、こすからい目に

無造作に後ろで結んだ長髪、

そして恰好はTシャツとショートパンツ


リナは切れ長の目にフワリとした

ミディアムロングの髪。

リサはパッチリとした目にフワリとした

ショートボブの髪


二人とも、風貌に関しては横浜出身だけあって

垢ぬけた都会風なのだが、その恰好は、

くたびれたTシャツとジャージのボトムだった


さらに、ヨッシーはまるでサバイバーのような

恰好だった。

おまけに、他の客からは見えにくいものの、

膝の上に拳銃と弾薬の入ったプラケースを

乗せている


と、乗り込んできた若者たちの中の

一人の女性が、ウメさんに挨拶した



「こんにちは、ウメ先生」



それだけ言うと、

ウメさんの両隣にいる見慣れない顔たちを

ザッと一瞥した。



「あら、こんにちは」



短く挨拶を返すウメさんと、下を向くヨッシー


その女性は、席を年寄りに譲って

自分は最後尾席のすぐ前の通路に立っている


ヨッシーは、チラチラとその女性を盗み見した


自分より少し年上くらいか?


身長は、平均か少し低いくらい。

流れるような美しい長い黒髪が印象的だ。

顔は、今は前方、つまり運転席側のほうを

向いているが、確か眼鏡を掛けていた


服装は、明るい色のシャツと、

くるぶしの上ほどの丈の黒いアンクルパンツ、

ちなみに、ちゃんとシャツインしている。

そして、ローヒール型の紐靴


パット見、おしゃれな春の着こなしなのだが、

違和感を感じる箇所が2か所ほど...


まずは、腰に巻いている”ホルスター”

のようなもの。

見るからにお手製で、

動物柄の可愛らしい布地で作られているが、

隙間から”拳銃のグリップの底”らしきものが

見えている


つぎに、腕には『SS団』と書かれた古い腕章を

着けている


ヨッシーは思った



(ホルスターの中に入ってるの、

 もしかして本物の拳銃なのか?

 それに、SSってナチスの親衛隊なのか?

 いやいや、そんなわけはないんだが

 確か、ちんかわ氏が、

 リバーサイド同盟内では武装しているほうが

 好ましいって言ってたな)



女性の前には、同じく通路に立った若者たちが

数人居て、よく見ると彼等も『SS団』の腕章を

着けていた


女性の声は、鐘のように透き通っていた



「うーん、映画撮影のロケ地ってあそこで

 いいのかな?

 あのラジオドラマの世界の映画化だからさ、

 人型の存在を一切感じさせないように

 しないといけないし...」



SS団の男が答えた



「あそこしかないと思いますよ、団長...

 街の風景なんかは、適当にネットから拾って

 加工しますけど、

 バトルシーンや歌の練習シーンなんかは、

 あの公園が一番撮りやすいっすよ多分」



恐らく、女性はSS団の団長なのだ....


その団長が言った



「いい、長年説得して、ようやくあの人が

 出演を承諾してくれたんだから!

 学園祭までの約半年の間に、

 絶対に絶対に、素晴らしい映画を作らないと

 いけないからね。

 ロケ地選びも適当じゃダメなんだからね」



ヨッシーは、黙ったまま

何気に膝に置いた拳銃を手に取った。

そして、シリンダー型の回転弾倉の中に

薬莢が入っていないのに気が付いた



「ああ、ちんかわ氏が俺にこいつを

 返したときに、弾を全部抜いていたんだな


 まあ、暴発する危険もあるし」



改めてプラケースを確認すると、

透明なプラスチック越しに

ズラリと立てて並べてある弾薬が見える。


その中に、弾頭が入ってない空薬莢が

6発あった


わくわくポートで撃った2発と、

橋の上で撃った4発だ


何気に、片手でプラケースを持ち上げて

目の前に掲げる


...と、バスが揺れた


ヨッシーの手から、プラケースが落ちる


そして、床に落ちた衝撃で

プラケースの蓋が開き、38スペシャル弾が

何発も、コロコロとバスの床を転がっていった


 

 

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