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最終決戦~平和

島の西側にある『港』と、

島の南西側にある『海水浴場』の間には、

こじんまりとした岬があった。


そこには、

海神様を祀る小さな『神社』があって、

漁師たちが船上から手を合わせていたものだ。


ナツミは、その岬の神社にたどり着いた。


鳥居をくぐり拝殿の横を通り過ぎると、

目の前は、美しい海が広がる絶景....


しかし、そこは戦場だった



「ハア...ハア...一体、どうなっているの?」



とりあえず、周囲の光景を整理してみる


右後方の『港』では、

復讐心に燃える島民たちが海賊共を

追いつめているところだ。

でも、ナツミにとっては、

もはや海賊共の末路なぞどうでもいい。


真正面では、船が沈没した痕跡がある。

そう、『ボフォース船』だ。

海上には、オイルやら浮遊物やらが漂っている。


左の『海水浴場』では、

2隻の船が火に巻かれながら沈没している所だ。

その周囲には、味方の乗った数隻の小船が居る



「洋一.....洋一....ああああ」



ナツミは、ヘナヘナと地面に

へたり込んでしまった。


すると、遅れて”元巡査”がやってきた。

サブロウが、護衛として彼をつけてくれたのだ


片手には、海賊共から手に入れたAKを持ち、

もう片手にトランシーバーを持っている。


元巡査は、ナツミとヨッシーと同じく、

かつては漁港町の住民だった。

なので、お互いに昔からの顔見知りなのだ


そして、彼は、片手に持ったトランシーバー

で連絡をしながら走って来た。



「ナツミさん、今連絡が入った!!

 ヨッシー君は、ヨッシー君は無事だ、

 あの美月姉妹が彼を救出してくれたんだ」



元巡査の言葉に、ナツミは振り向いた



「えっ、リナちゃんとリサちゃんが?」



元巡査は、ニンマリと笑いながら続けた



「ああ、さすがは天才水泳姉妹だ!


 彼女らは、潜水してヨッシー君を

 海中から救い出しただけでなく、

 心臓マッサージと人工呼吸で

 彼を蘇生させたんだ!!!

 

 ふははは、ヨッシー君も、

 今後は、あの2人に頭が上がらないだろうな」



ナツミは、地面に座り込みながら呟いた



「ああ、神様...いや、美月姉妹ちゃん、

 本当にありがとう。


 阿呆ヨッシーにも、私から言っておくわ。

 今後は、2人に足を向けて寝ることは

 許されないってね。

 

 ええ、リナちゃんとリサちゃんを

 女神のように敬い、

 2人の誕生日には

 毎年、プレゼントをする事!


 ああ、ああ、本当によかった....」



しかし、ナツミはハッとしたように言った



「そういえば、ジジイは?

 もしかして、

 あの燃えてる船の中にジジイが.....

ここへ来る途中、爆発音が聞こえたし」



元巡査は、無言のまま頭を振っただけだった



//////////////////////////////////////////



その頃、『港』では・・・・・


生き残りの海賊共が、自分達の行為のツケを

払わされようとしていた。



バタンッ!!!



家屋から大きな音がした。


海賊の頭は、

両手に持った『コルト・パイソン』を

そちらに向けた。


しかし、

転がってきたのは”野球ボール”だった



ズダアァンッ!!



銃声が響き、頭の両手首が同時に撃ち抜かれる



「があああああああああ!!!」



6インチの長銃身リボルバーが地面に落ち、

頭の両手はメチャクチャになっていた。


右手は、手首から先がほぼ無くなり、

左手は、皮と少しの肉で辛うじて繋がって

ぶらんと垂れ下がっている。



「ちくしょおおおーくそがあああーーー

 俺たちをなぶり殺しにするつもりかあああ」



頭の絶叫に、側に居たタンクトップ金髪が

取り乱した



「ああああ、いやだあああ、いやだああーー」



そして、

両手に持った『ブローニング・ハイパワー』を

盲撃ちする



ダアァンッ、ダアァンッ、ダアァンッ、



しかし、島民たちの姿はどこにも見当たらない


ついに、タンクトップ金髪は、

拳銃を自らの頭部に突き付けた



ズダアァンッ!!



銃声が響く....


ブローニング・ハイパワーが

タンクトップ金髪の手から弾かれ、

バラバラになって吹っ飛んだ。


海賊の頭は、両手を失って地面に転がり

もがき苦しんでいる。


タンクトップ金髪は、自殺することも叶わず、

そのまま逃げ出そうとした


しかし、その足を一本の矢が貫き、

文字通り地面に繋ぎとめた。



「我讨厌疼痛,请帮助我!!!」



屋根の上からヒョイっと飛び降りてきたのは、

コンパウンドボウを持ったサブロウだった



「他人は楽しんで痛めつけるくせに、

 自分が痛いのは嫌なんだな」



片足に刺さった矢によって地面に繋ぎ留められ、

泣き叫ぶタンクトップ金髪に、冷たく言い放つ


やがて、家屋の影から、ゾロゾロと島民たちが

出現した。


その中の一人は、

手にサコー社製の猟銃を持っている。

立派なスコープを載せた

ボルトアクション式ライフルだ


他の者たちも、海賊共から奪ったAK-47で

武装していた。


サブロウは、岸のほうにあるクレーンを

指さした。

そこに吊るされていた山崎氏は、

仲間たちの手によって

降ろされようとしている。



「山崎氏を死ぬまで吊るしやがって.....

どれだけ苦しかったか....


それに、お前達は村長をなぶり殺しにした」



そう、倉庫の中に閉じ込められていた村長は、

結局、死亡していたのだ。


彼の身体には、拷問を受けたような跡があった


怒りに身を震わせる島民たちに囲まれ、

タンクトップ金髪はブルブルと震えている


しかし、両手を失った海賊の頭は、

島民たちを睨みつけた。

ロン毛は乱れ、サングラスが外れた目には

憎悪をたぎらせている



「肮脏的日本鬼子该受诅咒」



サブロウは、頭の呪詛の言葉を鼻で笑った



「何を言っているのか分からぬが、

 不満そうなのは理解できるぜ。 


 だが、安心しな、

 お前たちが欲しかった石油をたっぷりと

 やるからよ!!」



すると、金属製のジェリカンを持った島民が

進み出た。

他の島民たちは、そそくさと後ずさる・・・・


2人の海賊共に浴びせられたのは、

”ガソリン”だった



「よーし、皆、十分に離れるんだ!!!

 

 その前に、このかっこいいリボルバーは

 拾っておこう....


 さて、井之上、田上、こいつらの脚を撃って

 動けなくしろ。

 もしかしたら、

 そのまま発火するかもしれんから、十分に

 距離を取って気を付けて撃つんだぞ」



サブロウの指示通りに事が行われた。

数発の銃声が響き、とたんに火柱が上がる


海賊2人の断末魔の悲鳴は、港中に響き渡った


・・・・・・・・・・・


こうして、『島』を襲撃した海賊共は、

41名全員が死亡したのだった。



/////////////////////////////////////////



『海水浴場』の奥には、

島民たちの住宅街が広がっている。


その一角に、『診療所』があった


ちなみに、住宅街は簡易ではあるものの

グルリと”塀”に囲まれていた。

診療所もその中にある


そして、塀の中には”田舎派”が暮らしている


リナとリサが所属する”都会派”は、

塀の外、島の南東辺りに固まっていた。


2人が暮らしているのは、まるで

江戸時代の『長屋』のような建物群だった。


....別に、表立った差別があるわけではない


しかし、田舎派と都会派の間には、未だに

心理的にも物理的にも壁があるのは事実だった



さて、『診療所』は、四角い平屋造りの建物で、

その中の待合室に2人は居た。


競泳水着の上にTシャツを羽織っただけの姿で、

リナとリサは長椅子に座っていた



「あっ、おばさん...」



息を切らして入ってきたのは、

ヨッシーの母親のナツミだった。


恰好は、茶色のパーカーに

灰色のコットンパンツにトレッキングシューズ。

ぱっと見、娘のスミレによく似ている



「ハア、ハア、リナちゃん、リサちゃん」



双子姉妹は同時に立ち上がった


リサがおずおずと言った



「あの、今、先生がヨッシーの応急処置を。

 呼吸も心拍も問題なくて、

 これから輸血をするから大丈夫だろうって」



リナが続ける



「で、でも、ジジイを救うことは出来なかった。

 私達、あれだけ良くしてもらってたのに....

す、すみませんでした」



しかし、ナツミは、

両手を広げて姉妹の所に来ると、リナとリサを

しっかりと抱きしめたのだった


そして、泣きながら言った



「ううん、いいの、

 ジジイは自分の意志でやったのだから。


 それより2人とも、うちの阿呆ヨッシーを

 助けてくれたんだってね!

 本当にありがとう、私からも、

 ヨッシーにきつく言っとくから!」



ナツミに抱きしめられ、リナとリサも泣いた


姉妹の頭をなでながら、ナツミは言った



「大丈夫、海賊共は居なくなったわ!


 これから、いい事が沢山起こるから」



ヨッシーを連れてきた漁師たちと、元巡査は、

そんな3人の姿を見て

盛大にもらい泣きをしていたのだった


 



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