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最終決戦~棺桶の中から伸びた手

ヨッシーが救出される少し前.......


ジジイは、『漁船タイプ』の操舵室に居た。

今や操舵室内には煙が籠っており、

エンジン異常のアラーム音が鳴り続けている。

しかし、まだエンジンはくたばっておらず、

『水上交通船タイプ』との距離は

グングンと縮まってきていた。



「ヒヒヒ....海で地元の漁師と戦うってのはな、

 最大の愚行なんだぜ」



そう、ここの海域を熟知しているジジイは、

海流に乗りに乗っていた。

おおむね南東方面に流れる”帰り潮”は、

『漁船タイプ』の進みを力強く後押ししてくる。


対して『水上交通船タイプ』は、

海流に対して斜めに突っ切っていた。


このままでは、衝突コースまっしぐらだ!!


しかし、海賊共は船の進路を変更することは

出来なかった。

なぜなら、奴らの目の前には、

細長い『防波堤』があるからだ



「ヒヒヒ....この先は、

 島のかつての観光目玉、『海水浴場』だ!!」



ジジイは完全に酔っていた。

狂ったように独り言を呟き続ける



「ヒヒヒ....

長く美しい砂浜を持つビーチのおかげで、

 この島は『太平洋のハワイ』と

 呼ばれていた!!


 いやいや、太平洋のハワイって、

 普通のハワイじゃねえか!!

 本物のハワイも太平洋にあるっつ!!

 と、誰もが思うだろう?


 しかし、このネーミングの由来は、

 とある天然系・大物女優がロケで

 この島に訪れたときに.....」



ここまで言って、ジジイはバーボンの

最後の一口を飲み干した。



「ぐぷはぁーーーー!!!!」



なんと、ジジイは、この短時間で

『メーカーズマーク』を1瓶、飲み干したのだ。


結局、目の前の防波堤のおかげで、

『水上交通船タイプ』は

こちらにドテッ腹を見せている。

そして、どんどんと距離が縮まっていた



「あれほど美しかった砂浜も、

 今やイワシの加工場になっている.....


 一面に天日干しされたイワシが白い砂浜を

 覆い隠し、

 川のように流れる赤黒い体液が

 海の色を変えている。


 何よりも、常に漂い続ける耐えがたき悪臭


かつては、お子ちゃまやギャルの歓声に

 満ち溢れ、大物女優さえ来ていた海水浴場は、

 一体どこに行った?

 

 ちなみに、例の天然系・大物女優のサインを、

 俺は今でも大切に保管しておるのだ!!」



酔いが回ったとはいえ、

ジジイは無駄に”多弁”になっただけだった。

身体の他の機能は失われておらず、

判断力も冴えわたっている。


2隻の距離はもう目と鼻の先だ.....


ついに、『水上交通船タイプ』の

2階の解放デッキに、

銃を持った複数の人影が出現した



「ヒヒヒ、今更、どうしたところで

 衝突は避けられねえぜ!」



長身に禿頭に白い髭のジジイは、

口元をニヤリとさせて、持っていた空瓶を

投げ捨てる。

そして、床に置いていた手提げ袋を取った



ズダダダダンンッ!!!

ズダダンッ!!!

ズダァンッ、ズダァンッ!!!



けたたましい銃声が響き、操舵室の窓が割れる。


しかし、ジジイはすでにそこにはおらず、

後部ドアからリビングに降りていた。

部屋の中は煙が充満していたので、すぐさま

外部ドアを開けて、外に出る。


そして、身を屈めて衝撃に備えたのだった



「アアアアアアアーー逃跑!!!」

「疯狂的日本鬼子!!!!!」



ドオオオオオンッ!!!!


ベリベリベリベリベリベリ


バキバキバキバキ


ギュルギュルギュル....



ジジイの身が浮くほどの衝撃が走り.....


『漁船タイプ』の舳先は、

『水上交通船タイプ』の右舷に

突き刺さっていたのだった。



「ヒヒヒーーヒャッハハアアア!!!!

 これで、お前等もおしまいだああ。


 もう、この海域から逃げ出すことは出来ぬ


 これから、俺がお前等を

 じっくりと料理してやるぜ!!!」



ジジイの持つ麻製の手下げ袋からは、

『120ミリ砲弾』の弾頭部分が

ニョキっと出ている。


まずは、手提げ袋を床に置いて、

弾頭のキャップを外す。



「砲弾の安全装置解除!」



次に、ロングコートのポケットから

『コントローラー』を取り出し、

2つのボタンを同時に押す。

すると、緑と赤のランプが同時点滅した



「起爆方法を手動操作に切り替え!」



声に出して確認してから、

再びポケットにコントローラーを仕舞った。


この状態では、もしも転んだり

何かが当たったりして

コントローラーのボタンが押された場合、

手提げ袋の中の砲弾は爆発することになる。


しかし、ジジイは全く構わなかった


例え、不本意ながら銃撃で即死したとしても、

ほぼ確実に”自爆”が出来るからだ。



「今の俺は、身体にダイナマイトを

 巻き付けているようなもんだ」



ジジイは、ニヤリと笑ってそう言いつつ、

ベルトに挟んだ自動拳銃を取り出した。


『コルト M1911』


それは、長い間、アメリカ軍の制式拳銃であり、

なんと、ジジイよりも年寄りだ。

オーソドックスながらも完成されたフォルム、

とっておきは45口径のバカでかい銃口。


おおむね、

第二次大戦~ベトナム戦争~冷戦時代を

舞台にした戦争映画では、

必ず目にする拳銃である。


ジジイは、コルト・M1911のスライドを引いて

弾を装填した。



「それでも、それでもなあ!!!!

 

 『島』は俺にとっての全てだ。


 あの愚かな内戦を止められず、

 誰も望まぬ血が流れ、

 悪臭の中で惨めに生き延びようと.....


 島には、俺の愛する全てがある」



『漁船タイプ』の船首デッキから、

『水上交通船タイプ』の2階の解放デッキまで、

そのまま乗り移れそうだ。



「ヒヒヒ、敵船に乗り移るとかよ。

まるで、”海賊”になった気分だぜ


 ヒャッホーーーーーーイッ!!!」



ジジイは、少し傾いた船首デッキを

全力疾走した。

それは、孫のヨッシーやスミレにも

見せたことのない姿だ。


ジジイは、まるで少年のように

無邪気にジャンプして敵船に乗り移った。



「ヤッホ、殺しに来たよーん」



乗り移った先は、

滅茶苦茶になった解放デッキエリアだった。


『漁船タイプ』の船首がめり込み、

床がひび割れ盛り上がり、

ドラム缶やら木箱やらが乱雑に転がっている


そして、逃げ遅れたっぽい海賊が一人居た


衝撃で転んで、ドラム缶にでも潰されたのか?

ぶっ倒れ、弱々しく足を引きずりながら

逃げようとしている.....



「アアアアァ....请不要杀」



男は、床に這いつくばりながら、両手を上げて

命乞いをした。

その額からは血が流れ、すぐ側に『AK-47』が

落ちている。


ジジイは、左手に手提げ袋を持ち、

右手に持ったコルト・M1911を男に向けていた



「命乞いとか、つれないことをするなよ」


 

そして、発砲した



バアァァンッ!!!



45ACPのガツンッと来る強力な反動、

飛び出す空薬莢...


『コルト・M1911』という拳銃は、

一般的な日本人には

大きすぎて合わないと言われている。

しかし、長身でガタイのいいジジイにとっては、

よく手に馴染む。


撃たれた男は、床につっぷしたまま

動かなくなった。


ジジイは、如才なく周囲を観察した


右側には、操舵室&乗組員エリアの『ブリッジ』

左側には、1階へと降りる『階段』


ならば、自分は左側の船尾に行かなければ!!



「今の俺はな、棺桶の中に片足を突っ込んでる

 ......なんてレベルじゃねえ、

 ”棺桶の中から伸びた手”なんだよ!

 

 お前等を

 中に引きずり込みたくて仕方がないんだ」



言いながら、ジジイは左手に持った手提げ袋を、

階段に向けて投げた。

『120ミリ砲弾』は、ドスンッと音を立てて

階段を転げ落ちていった。


次に、死んだ男の側から、『AK-47』を拾う


左手で拾ったソレを、とりあえず左側の船尾に

向けて投げる。

右側のブリッジのほうを向くと、

四角い窓とドアがあった。


....と、窓ごしに、

立ち上がろうとする人影が見えた



バアァァンッ!!!


バアァァンッ!!!



窓に向かって拳銃を撃ちながら、

後ずさって船尾に向かう。


窓ガラスにヒビが入り、人影が消えた


倒したのか、それとも屈んだだけか?


すると、窓の横にあるドアの端から、

『AK-47』を構えた”手”だけが出現した



ズダダダダダダンッ!!!!



ブリッジの中の海賊は、盲撃ちで

船尾に向けて撃っていた



「ぐがっ、ちくしょう!!!」



なんと、ヤケクソでぶっ放された弾の一発が、

ジジイに命中したのだった




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