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最終決戦~殺人鬼


「航海するってレベルじゃねえぞ、おい」



木造船の『つぎはぎ丸』は、

半壊して沈没しつつあった。


身体の左側の感覚がなく、床に倒れ伏した状態。

ニーチェ的超人モードも発動しない中、

ヨッシーは、とりあえず周囲の状況を

整理してみる....


ボフォース船が最後の根性でぶっ放した砲弾は、

狙いを外しながらも、近接信管によって

『つぎはぎ丸』の近くで炸裂。

無数のタングステン・ボールが、

ヨッシーの左半身を貫き、つぎはぎ丸の船底に

穴を開けた。


こちらの120ミリ艦載砲は、

発射の反動で大きく後退し、

今は操舵室にまでめり込んでいる。


船首部分は、発射時の爆炎によって

ブルワク部分が吹き飛んだ。

よって、床に倒れ伏したヨッシーには、

こちらに泳いで来る3人の海賊共が見える



「ヒヒヒ...俺って、性格悪いよな....」



右手に持ったリボルバーを、

連中に見えないように隠すヨッシーだった



「まあ、奴らに見えているのは、怪我をして

 倒れている無力なクソガキなのだろう。


 島民に殺されるか、おぼれ死ぬ前に、

 せめて目の前のクソガキに

 怒りをぶつけたい気分なんだろうが。


 ククク....

 お前等は、俺にたどり着くまでに、

 38スペシャル弾を突破しないと

 いけないぜ!」



ヨッシーのつぶやきに応えてくれる金髪美女は

もはや居ない....

死への旅というのは、”孤独な戦い”なのだ。


....と、こちらに泳いで来る3人の内、

早速、先頭の1人がすぐ近くまでやってきた



「狗屎孩子、日本鬼子!!」



憤怒に顔を歪め、母国語で怒声を張り上げ、

バシャバシャと水を跳ねてやってくる。



「やけに泳ぎが上手いゴキブリだなぁ」



ヨッシーは、どこか他人事のように

そんな光景をボンヤリと眺めていた。


やがて、先頭の男は、

ブルワクが無くなって平坦になった船首部分に

取りついた。

「ハアッハアッ」と荒い息を付きながら

顔を上げる。


そして、目の前には、

”リボルバー”の銃口が突き付けられていた



「啊?」



心底、意外そうな顔で『M360J SAKURA』の

銃口を見つめる。


...まあ、なんで相手が武器を持っていないと

思っていたのかは不明だが、

まったくもって出鼻をくじかれた感じだ



「ほいっ、まずはゴキブリを1匹駆除だ」



倒れたままのヨッシーは、

右手に持ったリボルバーの引き金を引いた



スダンッ!!



男の顔のど真ん中に小さな穴が空き、

大きく後ろにのけ反った。

ブシャーっと、小さな噴水のような血を

吹き出しながら、男は海へ滑り落ちた。



「ぐくっ...痛ぇ」



ヨッシーは顔をしかめた。


発射の反動で、拳銃を持つ右手を通じて

全身に痛みが走ったからだ。


そして、1番目の男が海中に没すると同時に、

すぐ後ろに迫っていた2番目の男が

両手を上げた



「おおっ、動きを止めてくれたおかげで

 狙いやすいな....」



ヨッシーは、全く躊躇することはなかった。

海中で両手を上げて降伏する男に銃を向ける


短銃身リボルバーのハンマーを親指で起こし、

照準の先には、恐怖の表情で両手を上げる男



スダンッ!!



しかし、弾は外れた。


小柄なチーフ・リボルバーがやけに重く、

手が震えて保持するのも難しい....

そして、発射の反動で再び身体中に激痛が走る



「アアアアァーーーアアアアアーー」



発砲された男が悲鳴を上げた。

海中でクルリと身体を翻して、

逃げようとしている。


身体中の痛みにイライラしたヨッシーは、

再び親指でリボルバーのハンマーを起しながら

毒づいた



「クソが、ゴキブリの分際でとっとと死ねよ!」



うつ伏せの状態で、

突き出した右手にリボルバーを構え、

海中でこちらに背を向ける男に狙いを定める


ヨッシーの口元はニヤリと口角が上がっていた



「ヒヒヒ....俺もジジイも狂ってんだよ!

 

 まさか、この島に、

 こんなに狂ってる奴らが居るとは

 思わなかっただろ?


 俺たちに手を出したお前等は馬鹿だ....

せいぜい、後悔しながら死ねや」



ズダンッ!!



今度は、男の背中に命中した


男の身体は、まるで空気が抜けたかのように

ダランと海面に浮かぶ。

そして、『つぎはぎ丸』の横を流れていった。


こちらに泳いできた3人の内、2人は殺した。

しかし、最後の1人がまだ向かってくる



「我杀你、我杀你、日本鬼子!!!!」



相手が銃を持っていることは

分かっているだろうに、

ヤケクソで叫び散らしながら向かってくる


髭面のその男は、ボフォース船の船長だった。



”自分の船を沈めたこのクソガキを絶対に殺す”



まさに、その思いだけでヨッシーに向かって

必死に泳いでいるのだ。


ヨッシーの持つリボルバーには、

まだ弾が2発残っている。

水しぶきを上げてこちらに向かってくる髭面に

銃口を向けようとするが....



「ダメだ、手が....手が震える....」



もう、拳銃を持っていられない....



「あちゃっ、なんてこったい!!」



『スミス&ウェッソン M360J SAKURA』は、

ヨッシーの手からスルリと滑り落ちた。


伸ばした右手に持った拳銃は、丁度、

ブルワクが無くなった舳先に落下した。

そして、波が被る縁に当たり、

そのまま海面へと消えていった。



ボチャンッ・・・・



こうして、良き相棒だった警察用リボルバーは

海中に没してしまった。


ボフォース船の船長が、

すぐそこまで迫っている


こすからい鋭い目でその髭面を睨みながら、

ヨッシーは毒づいた



「さっきから....なぜか、ちょくちょく

 小さな幸運を手に入れやがって....


 気に食わねえ....」



船長は、髭面で、

顔に斜めに走る醜い傷跡があった。

いかにもヤクザ者といった感じの強面だ


憤怒の表情で

『つぎはぎ丸』の船首に取りつき、

海中から半身を乗り出す。


そして、

うつ伏せでこちらを見据えるヨッシーの首に

両手を回した



「他妈的、慢慢地玩死你们」



ニヤリと笑いながら、

両手で締めたヨッシーの首をグイっと乱暴に

持ち上げる。


しかし、ヨッシーも同じくニヤリと笑っていた



「やっぱり.....持つべきは....武器だよね」



首を絞められながらも、ヨッシーは、

密かに右手を腰のベルトにやっていた


そして、

ベルトに差したナイロン製のシースから、

黒刃の『サバイバルナイフ』を取り出した。


そのナイフは、

リバーサイド同盟のマーケットで

購入したヤツだ。

刃渡りは15センチ程で、炭素鋼なので

よく切れる。


・・・まあ、今まで使ったシーンと言えば、

神社で犬太郎の為に穴を開けたくらいだが


ヨッシーは、右手にサバイバルナイフを

握り締めながら、首を絞められながら、

呟いた



「ググ....結局、俺は死ぬんだろうがな.....


ググ....お前のようなオッサンに.....

殺されてたまるかってんだ」



こすからい鋭い目に殺意を灯した少年は、

髭面&顔面傷の船長よりもよっぽど

”殺人鬼”に見えた




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