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タロサン6

到着した『トレーラー』は、巨大で異様だった。


そのヘッド部分は、日本では見られない、

ボンネットが突き出たタイプだ。

そして、まるで装甲車のようになっていた


最前部には楔型の分厚いバンパーが装着され、

本来ならフロントガラスがある場所には、

横長の小さなのぞき窓と、

数々のセンサーが取り付けられている


さらに、荷台部分は2連結なので、

全体的に見て列車のように見える。

ちなみに、

荷台の1番目は『発電機』が入ったコンテナで、

2番目は燃料と物資が入ったコンテナだった


まあ、要するに、

装甲列車のような外見のトレーラーが、

ブルーノのすぐ後ろまで迫っているのだった



「ブルーノ―ー、後ろ―後ろ―ー」



パオオオオオオンッ!!



2名の呼びかけ&クラクションによって、

ブルーノは、

ビア樽のような巨体を横にジャンプさせた


地面にゴロゴロと転がるオペラ野郎のすぐ隣を、

凄まじい勢いで通り過ぎるトレーラー


さらに、アタウルフとメイシンも、急いで

横に飛びのいた


トレーラーの目の前には、

迫りくる”人型の群れ”だ



「You mother fu○ker-------

-----Son of a b○tch-----」



タロサンの怒声と共に、楔型バンパーによって

次々と撥ね飛ばされる人型ども



ドンッ、バシッ、グシャッ、



強烈な質量攻撃によって、

人型の身体のパーツがバラバラに分離して

吹っ飛ぶ。

地面に倒れていた多数の人型も、

グシャグシャと踏み潰され続ける



バキバキッ、ブシャッ、ドスンッ、バンッ



「Oh yeah, S○ck my di○k baby!!!」



タロサンの怒声と共に、トレーラーは

タービン建屋の崩れた外壁に突っ込んだ


そして、そのまま建屋の中に消えていった


..............


固まるボーイズ1


しかし、タロサンの声が皆のヘルメット内に

響いた



「お待たせしたな皆、ついに到着したぜ!!

 

 ボーイズ1,見ての通り、

 トレーラーはタービン建屋の内部に止めた。

 君らは、残った人型の掃討を継続してくれ!」



すると、ボーイズ2のグルカ傭兵たちからの

連絡が来た



「こちらボーイズ2、

 ついに制御室にたどり着いた!!


 繰り返す、原子炉建屋の

 屋上から制御室までの安全を確保した!!


 制御室には、原発職員と

 その家族らしき人々が立て籠もっている。

 数はおおよそ80名程....」



タロサンとボーイズ2は、

しばらく会話を続けた。


その間に、アタウルフとメイシンは、

ブルーノからようやく補充弾倉を

受け取ったのだった



/////////////////////////////////////////



ズダンッ、ズダンッ、ズダンッ......



ボーイズ1の3名は、それぞれのライフルで

人型の掃討を行っている。


おびただしい数の人型が地面に転がって、

一部はトレーラーによって潰されていた。

今や彼らが撃っているのは、

タービン建屋から散発的に出現する個体と、

身体を欠損して地面を這っている個体だ


一息ついたアタウルフは、

先程自分が倒した”新型”のほうに目をやった



「相変わらず、跡形もなく消えるんだな...

 まるで、人生燃え尽きたみたいだぜ」



彼が言った通り、

”コア”を撃ち抜かれた新型は、今まさに

消滅しようとしていた


それはまるで、”糸くず”をより集めて

人間の形にしたようだった。


その糸が、まるで

燃え尽きて灰になったかのごとく、

風に煽られて飛散してゆく....


モジュール式のアサルトライフルを撃ちながら、

メイシンが相槌を打った



「人型以上に訳の分からない物体だよね。

 これからは、こいつらが増えていく一方だし


 もう、残された人類に勝ち目はないわね」



「ああ、数少ない生存圏を守るだけで

 手一杯だろうな.....


輝かしき人間の世は去った


 目の前の原発を見てみろよ、

 俺たちに残されたのは負の遺産だけだ」



「ええ、原発なんて

 ”社会が発展し続けることが前提”で

 造られた代物だからね。


 核廃棄物の問題、老朽化した原子炉の後始末、

 

 それらは、後世の人間たちに丸投げだったし


 ....そう、今より発展しているはずの未来が

 解決してくれるハズだってね」



凄まじい腐敗臭が漂う中、

アタウルフとメイシンは悲しい会話を続ける


しかし、タービン建屋の崩れた外壁の内部から、

彼らにとって『唯一の希望』が出現した


メイシンは、アサルトライフルの

マグニファイア(望遠レンズ)を覗いて

ソレを確認した


そして、彼女はジト目になった



「タロサン....ビデオ通話した時はもっと

 イケメンだったはずだよね?」



アタウルフも、同じようにマグニファイアで

ソレを確認してから、一応突っ込んだ



「あのイケメン姿は、フォトショ加工でも

 していたのか?

 ....というか、そういう次元じゃねえよな」



タロサンは、情けなく地面を這いずっていた


毛むくじゃらの長い手と短い脚、

ひょうたんのような胴体....


全体的に茶色っぽい毛に覆われているのだが、

顔の部分だけ白く、

目の周りにはハの字型の黒ぶちがある。


茶色の目玉はまん丸でパッチリしており、

口の部分はまるで笑っているかのようだ


とてつもないスローな動きで、ノソノソと

地面を這っている


それは、紛れもなく

哺乳綱有毛目ナマケモノ亜目と呼ばれる動物、


『ミユビナマケモノ』


そのものだった



・・・・・・・・・・・・・・・・・



改めて、今の状況を客観的に見てみよう


ボーイズ1の3人の目の前には、

地面を覆い尽くすほどの人型の残骸....


そして、それらを避けるように、かつ、

とてつもないスローな動作で地面を這う

ナマケモノ.....


アサルトライフルを背中に担いで

アタウルフが言った



「もう、今更、何事にも驚かないけどよ...


 タロサン、もっとマシなデザインは

 無かったのかね?」



先程ジト目だったメイシンは、今は笑顔だった



「ちょっと可愛い気もする。

 まあ、いいんじゃないの?」



アタウルフとメイシンとブルーノは、

”ナマケモノ”のほうへ走った


やがて3人は、

地面にペタリと張り付くナマケモノを

見下ろす恰好になった


ナマケモノ...いや、タロサンは

ゆっくりと頭をあげて3人を見上げた



「すまないね、いかにビーグル社と言えど、

 これが現時点での技術の限界というか....


 高速で動くことも叶わず、力も弱い


 しかし、この外見はピッタリだと思うよ。

 初めて目にする人間にも敵意を持たれにくい」



朗々たるテノールボイスで話すナマケモノが

そこには居た





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