大反撃作戦~ワクワクポート襲撃5
ふいに、聞き覚えのある2匹の鳴き声が聞こえ、
ヨッシーはハッとなった。
同時に、悲鳴と銃声も聞こえる
即座に、レバーアクション銃『アウトロー』を
肩のホルスターに仕舞って、
ドライスーツの膝ポケットから
ペンライトを取り出す。
右手に警察用リボルバー『M360J SAKURA』を
持ち、左手にペンライトを持ったヨッシーは、
渡り廊下からワクワクポートの中に
入って行った。
そして、彼のすぐ後に、
海賊船から出てきたジジイも続いたのだった
・・・・・・・・・・・・・・
陸側の業務用出入り口を開いたヨッシーは、
驚いて言った
「犬太郎と犬次郎、いや、チームデルタ!!!
来てくれたのか??」
彼の目の前には、興奮して走り回る2匹と、
ウェットスーツ姿で寄り添うリサとスミレ...
そして、地面に突っ伏して倒れている男に、
建物の角付近で立ち尽くすマッシュルーム眼鏡
マッシュルーム眼鏡が言った
「ヨッシー君、小島さん、
チームデルタが、僕の命を助けてくれた!
もしかしたら、スミレちゃんの命も」
ヨッシーの背後から、
リボルバーを持ったジジイが進み出た。
ズカズカと地面に倒れた男の側に行くと、
警察用リボルバー『ニューナンブM60』を、
うつ伏せ状態の男の背中に突き付ける
そして、ジジイは言った
「ヨッシー、海賊船の中には5人居たぞ。
それで、襲ってきた海賊共は
合計13人で間違いないぜ」
ヨッシーは、
リボルバーを膝ポケットに仕舞いながら答えた
「こちらは7人を倒して、今ここにプラス1人。
5+7+1で、13....
てことは、海賊どもは全員無力化したな。
ワクワクポートの制圧は完了ってことだ!」
ペンライトの明かりを、倒れた男に向ける。
スキンヘッドの後頭部が見え、
剥き出しの腕には『龍の刺青』を入れている。
さらに、腕には犬の噛み跡も付いていた。
かなり体格が良いが、
今はうつ伏せの身体の下から血が流れており、
母国語で何やら弱々しくつぶやいていた
「ワンワンワンッ」「キュイーンッ、キュウ」
ヨッシーの姿を認めた犬太郎と犬次郎が、
一直線にこちらに向かってくる。
「ああっ、いい犬だぜ!
なんていい犬なんだ!!」
「ワンワンワンワンッ!!」
ヨッシーは、ペンライトも膝ポケットに入れ、
両手を開いて2匹を待ち構えた
.....しかし、2匹の突進は阻止された
走ってきたスミレとリサが、
犬達をガッシリと抱きとめたのだった
「ほんとにありがとう、犬太郎、犬次郎!!」
「うんうん、スミレちゃんと私も、
ほんと危ないところだった!!」
2人の少女は、犬太郎と犬次郎をしっかりと
ホールドして、
身体を押し付けてスリスリしている。
「フン、フン、フーンッ」「キュウウウン」
そして、マッシュルーム眼鏡が、
銀色の自動拳銃を持ってやってきた。
マガジンを外し、スライドを引いて
薬室内の9ミリパラベラム弾を排出する。
「スミス&ウェッソンのオートだ....
チームデルタが来てくれなければ、
僕は、隠れていたこの男に
こいつで撃たれていただろう
まさに命の恩犬だ...」
そう言うと、地面に拳銃を置いて、
少女たちと共に
犬たちの抱擁に加わったのだった
「フガッ、フガッ、グルルル...」
「フンッ、フブンッ、フーン、ガルル...」
犬太郎と犬次郎は、
1人のおっさんと2人の少女たちの肉体に
押しつぶされている。
ヨッシーは、突っ立ったまま、そんな2匹を
眺めていた
大柄な胡麻毛の犬太郎と、白毛の犬次郎....
2匹はこの地方原産の猟犬で、
おおよその外見は柴犬に似ているが、
脚と口吻が長く精悍な印象だ
そして、ついに犬太郎の頭部が3人の肉壁を
突破してきた
「オゥェ...グボガ...ヒーン、ヒーン」
丁度、スミレの脇の部分をすり抜ける頭部
胡麻色の毛皮は引っ張られ、
目はまるで糸のように細くなり、
黒い唇から狂暴な牙を剥き出しにしている
「ちょっ、その顔」
ヨッシーは、
必死にこちらに向かう犬太郎の顔を見ながら、
神社での出来事を思い出していた
「....もう俺は、お前の側を離れないからな。
大切に飼ってやるから、ずっと一緒に居よう」
ヨッシーのこすからい鋭い目は、
愛おしそうに細められている。
そして、犬太郎の頭部に向けて手を差し出した
ガブリッ
即座に手に噛みつかれる
「なんでやねん!!」
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ジジイのマイ・スマホから、
ヤングジジイの声が聞こえる
「ああ、未だにヤングジジイ・チャンネルは
生きてて、こちらに映像を送っているぜ
本当に凄い光景だった。
もう、火は大分収まったみたいだな
それと、あの2匹の犬たちは、
いつの間にか居なくなっててな。
どこに消えたんだと思いきゃ、
まさか、お前さんたちの後を
追っていたとはな....
例の男の姿は、カメラ外だったんで
こちらも気が付かなかった。
いや、俺のチャンネル・パートナーも
命拾いをしたもんだ。
もしかしたら、
スミレも危なかったかもしれん
とにかく、ワクワクポートの奪還は
果たせたな!
おめでとう、おめでとう!!
とりあえず、こちらは鉄道橋にて待機中だ。
そちらの指示を待つ....以上」
リバーサイド同盟組の3人は、海賊船の中だ
マッシュルーム眼鏡は、倒れていた男を起して、
海賊船まで歩かせていった
そして、残っているのは、ジジイとヨッシーと
リナとリサとスミレ、
さらに犬太郎と犬次郎だった
ワクワクポートの火災はほとんど収まり、
炎の照り返しによる明かりは消えかけている
しかし、代わりにだんだんと夜が明けて
周囲が明るくなっていた。
廃墟の漁港町の奥、山々の背後の空が
ライトブルーに変わっている.....
ジジイは、ヨッシーのほうを見つめた
彼は、外灯に吊るされている死体を、
じっと見つめている
ジジイが言った
「皆、まずは”サブジジイ”を降ろしてやろう
.......
『つぎはぎ丸』から取り外した帆布が、
近くにまとめてあるはずだ。
ほら、あそこにあるぞ!」
少女たちは、すぐに動いた
片隅に積み上げられている帆布を、取りに向かう
しかし、ヨッシーは、サブジジイの姿を
見つめたままだ。
そして、ジジイに背中を見せたまま言った
「なあ、ジジイ....ずっと思っていたけど
ふいに想定外の事態に見舞われたけど、
これは俺たちにとって
逆にチャンスじゃないかね?
今の俺たちは、”海賊船”を手に入れている
そして、ホルガー・ダンスククラブだっけ?
よく分からないけど、
情報関係でも強力な助っ人を得た。
つまり、俺たちは、貴重な”大型漁船”を
戦闘に巻き込む必要が
無くなるんじゃないかな?」
ジジイは頷いた
.....全く同じ考えだったからだ
「まあ、そういう”運命”なんだろうな」