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大反撃作戦~ワクワクポート襲撃3

ヨッシーは、ワクワクポート内から一度、

浮桟橋のほうへ戻った



「リナ、すまないが俺の代わりに警戒を頼む。

 俺は今から弾を装填するから。


 リサ、弾を装填している銃は、

 しっかりと保持するんだ!

 絶対に、俺たちには銃口を向けないでくれ」



天才水泳姉妹はどこか呆然としていた。


炎に照らされ、リナの頬が濡れているのが

分かる。


彼女の側を通り過ぎて、ヨッシーは

”防水バッグ”の側に跪いた。


レバーアクション銃を地面に置いて、

膝ポケットからリボルバーを取り出す。

素早くシリンダーをスイングアウトさせて、

銃口を上向きにしてからエジェクターロッドを

押した。

発射で膨張して張り付いていた5つの空薬莢が、

一斉に落ちた。

そして、防水バッグの中から38スペシャル弾を

取り出して弾込めをする


5発の装填を終えたリボルバーを再び

ドライスーツの膝ポケットに仕舞うと、

今度はレバーアクション銃を手に取った


銃のハンマーをハーフコック状態にして、

側面の給弾ポ―トから11.5ミリ弾を装填する


ふと、サブマシンガンを構えて

前方を見つめたままのリナが言った



「ね、ねえ...ヨッシーは平気なの?」



「ん?」



まあ、変な質問なのだが、ヨッシーには

その意味がよく分かっていた。


ワクワクポートの中に目をやると、

未だに炎に包まれた海賊どもの死体が見える


...ガソリンと、生肉が焼ける匂いも漂っている


レバーアクション銃に弾を装填しながら、

ヨッシーはブツブツと呟いた



「まあ、色々な感情が押し寄せて来るのは、

 安全が確保されてからだろうな。


 今の俺の中には、戦闘に必要のない要素は

 一切、排除されているんだ」



そう、これこそが”ニーチェ的超人モード”の

正体なのだ。

必用な回路だけを生かし、無駄な処理を止める


ヨッシーは、防水バッグの中から11.5ミリ弾を

取り出してさらに続けた



「今だと、むけぞうさんの言葉の意味が

 良く理解できる。


 ”才能が目覚めない世界”のほうがどれほど

 良かったか.....と、あの人は言った


 人間を殺す感触、人間が殺される場面。


 それらを知らないで生きるほうが、

 よっぽどいいに決まっているんだ」



先程、自分に向けられた憎悪の表情....


今は全く何も感じないが、

酷く焼けただれたその顔を、

生涯忘れることはないだろう


リナが、こちらに背を向けたまま言った



「でも、ヨッシーが冷静だったおかげで

 本当に助かったよ。


 実は私、攻撃開始の時から頭が真っ白に

 なっててさ....

 結局、敵に対して一発も撃てなかったし....」



弾込めを終えたヨッシーが言う



「....さて、装填は終わった。

 リナは後ろに下がって待機してくれ


 それと、リサは外に戻って

 スミレの側に居てやってくれ


 マッシュさんに言われた通り、

 俺はここで警戒を続けているから」



すると、どこか”聞き覚えのある声”が聞こえ、

ヨッシーはハッとなったのだった



/////////////////////////////////////////////



人間が13人も居れば、

中には”運が良い者”が出てくる


それは、その者の特質うんぬんではなく、

単に”確率”の問題である。

母数が多ければ多い程、

ソレが出現する確率が増えるというだけの話だ


『火炎放射器』での攻撃が開始されたとき、

男は2階のトイレに居た.....


そして、ナパームBの炎は2方向から射出された


一つは、展望デッキから食堂までを一直線に

焼き払った。

もう一つは、間仕切りされたスタッフルームを

地獄に変えた。


大概の者がスタッフルームの畳部屋で寝ており、

一部の者が食堂で酔いつぶれていた。

その7人は、結局、炎に巻かれながら

階段で1階まで下りて、射撃されたのだ。


しかし、男は、

2階の階段奥の『トイレ』に居たのだ



「ヤバい...これはヤバいぞ」



ふいに、壁越しに異様な熱気が襲ってきて、

男は異変を感じた。


メインウェポンである『AK-47』は、

スタッフルームの畳部屋に置いたままだ。

持っているのは、

トイレのタンクに置いたLEDランタンと....



「うぎゃああああああああ、あああああああ」



凄まじい悲鳴と共に、大勢が階段を降りる音が

聞こえる



「ドアを開けたら絶対にダメだ!クソがっ!」



男は、便座の横の、”小さな窓”のほうを向いた


急いで便座の上に登って、

片開きの窓を開けて身を乗り出す


炎の赤い光に照らされて、

真下が”海”であるのが確認できた。


この建物は、半分が海に突き出した形状なのだ


命が助かる安心感と共に、凄まじい怒りが

爆発する



「信じられん、火を放ちやがったのか!!!

 火を放ちやがった!!

 なんて残忍な連中だ、ちくしょう!!!」



バアアァンッ!!・・・・・バアアァンッ!!


凄まじい悲鳴に混じって、銃撃の音が聞こえる


男は、狭い窓に無理やり身体を押し込み....



ドボーンッ!!



なんとか2階の窓から、下の海に着水したのだ。

1階の喧騒に紛れて、

着水音はかき消されただろう。


男が着水した場所は、岸のすぐ近くだった。

しかし、足がつかないほど海は深い。


水を掻き分け、岸壁にへばりつく



「なんて奴らだ...俺たちを炎で焼きやがった!


 日本鬼子め、クソ日本鬼子が!

 世界で最も残忍で汚らわしい民族だ!」



時刻的には満潮だったが、それでも岸壁は

2メートル近い高さがある。

立ち泳ぎをしながら岸壁沿いに移動すると、

なんとか上陸用の鉄梯子を見つけた


梯子を登って、

コンクリート地面に身を横たえる


横を向くと、建物の2階が燃えている....


その炎の光によって、

周囲に散乱したガラクタたちが分かる。

この場所は、

どうも”大洪水”に見舞われたらしく、

周囲には流されてきたガラクタが沢山あった。


その中の、壊れた車の残骸に身を隠しながら、

男は海のほうを観察した


浮桟橋に係留されている母船が見えて、

ブリッジの窓からは

普段の明かりが灯っているが...


しかし、船首の見張りも見えない



「弟弟.....弟弟.....」



そう、賭けに負けて、見張り役になった弟が

居るはずなのだ....


しかし、男は観念した



「まあ、この騒ぎに誰も出てこないってことは、

 船は制圧されたんだな....


ふざけるな....

 孤立して無力な連中なんじゃないのか?


 木造船で特攻するしか手段のない連中

 のはずだ...

 なぜ、こんな力を持ってるんだ?」



すぐに思いついたのが、

自分達は雇い主に”ハメられた”ということだ


男は、自分の懐をまさぐった


袖を破いたジャケットの懐には、

常にホルスターを装備している。

そして、その中には、

肌身離さず一丁の自動拳銃が収められていた


それは、『スミス&ウェッソン M5906』

 

古い型のダブルアクション・オートだ。


取り出した銀色の自動拳銃からは、

水がポタポタと滴り落ちている。

しかし、拳銃と、金属薬莢式の弾薬というのは、

水没した程度では撃てなくなることはない



「クソが、黒幕が誰だか知らねえが、

 絶対に許さねえ....せめて俺が」



せっかく助かった命だが、

こんな場所で生き延びる自信はない...


だとしたら、仲間の敵討ちを、弟の敵討ちを

やり遂げよう





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