大反撃作戦~ワクワクポート襲撃1
浮桟橋の鉄梯子にしがみついたヨッシーは、
頭をわずかに覗かせて、海賊船を注視していた。
すると、船首の船縁にジジイが現れ、
こちらに手を振ったのだった
ヨッシーは、すぐ隣のリナに言った
「よしっ、海賊船の見張りは倒したらしい。
ついに俺たちの出番だ!
リナ、行くぞ!!」
「了解!!」
武器の入った防水バッグを背負ったヨッシーは、
鉄梯子を登って浮桟橋に上陸した。
すぐに、火炎放射器のボンベを背負ったリナが
続く
時刻は午前4時45分くらいだった
予定よりも大分早く作戦を開始したのだが、
それでも、満点の星空から降り注ぐ星明りが
あった。
若いヨッシーとリナの目はすぐに慣れて、
かすかな光でも
ハッキリと物が見えるようになっていた
2人は、渡り廊下の真ん中で立ち止まった。
ちなみに、渡り廊下は手すりだけで屋根は無く、
ヨッシーたちの目の前には、ワクワクポートの
暗い入口が見えた。
この建物は、半分が海に突き出した立地だ。
渡り廊下は、海に突き出している面から
直接伸びている。
つまり、合計5人のワクワクポート襲撃班の内、
海側からは、ヨッシーとリナの2人が襲撃。
陸側からは、残りの3人が襲撃する手筈だった
渡り廊下の真ん中に立ち止まったヨッシーは、
防水バッグを背中から下ろして屈みこみ、
ジッパーを開けた
「レバーアクションライフルとリボルバー、
そしてサバイバルナイフ!
おおっと、一応、ポケットライトもあった」
小声で確認しながら、革製ホルスターに入った
『レバーアクション銃・アウトロー』を背負う。
そして、
『短銃身のリボルバー』と『ポケットライト』
を、ドライスーツの膝ポケットに入れる。
ビニール製シースに入ったサバイバルナイフは
防水バッグに残しておく
「次、サブマシンガンにマガジンを装填!!」
そして、ステンもどきサブマシンガンに、
11.5ミリ弾×30発の細長いマガジンを
装着する。
それを、リナに渡した
リナは、受け取ったサブマシンガンを一旦、
地面に置いた
「次、火炎放射器のノズルを接続する。
リナ、ボンベを!」
「了解」
バッグから、細長い筒状の火炎放射ノズルを
取り出す。
リナは、背負っていたボンベ類を
地面に下ろした。
それらは、
圧縮ガスと燃料タンクの2つのボンベだ。
ノズルからは、細いホースが伸びている。
ヨッシーは、ホースの先端のオス接手を、
ボンベのメス接手に接続した。
「接続完了、バルブを開ける前に動作確認だ」
そして、火炎放射器のノズルを構える。
ノズルには、拳銃のグリップのような取っ手が
ついており、引き金もあった。
ヨッシーは、その引き金を引いてみた
カチッ.....
約1秒後に、ノズルの先端から
ガスバーナーのような炎が吹き出た
それは、電気着火式のターボライターで、
あえて”遅延式”になっているのだ。
つまり、最初の一秒間は燃料だけが
吹き出るようになっている。
ちなみに、火炎放射器の燃料は、
『ポリスチレン』『ガソリン』『ベンゼン』を
混ぜ合わせた、
いわゆる『ナパームB』と呼ばれているものだ
「動作は正常、リナ、バルブを開けてくれ!」
リナが、燃料と圧縮ガスの2か所のバルブを
開けた。
グンッと、持っているノズルに圧が掛かるのが
感じられる
「よし、こちらは攻撃準備は完了したぞ」
左斜め前方を見ると、
マッシュルーム眼鏡とリサとスミレが居た。
3人は、岸壁に設置されていた鉄梯子を登って
上陸していたのだ。
そして、マッシュルーム眼鏡がこちらに
手を振った。
....彼等も攻撃準備を終えたらしい
ふと、3人の向こうに外灯のポールが見える。
そこに”吊り下げられているモノ”をちらりと
確認した後、ヨッシーは次の行動に移った。
脳裏に、日活スターのようなサブジジイの顔が
蘇る....
「絶対にお前等をぶち殺してやる!
待ってろ、もうすぐだ...
もうすぐ、お前等を地獄に叩き落としてやる
生きたまま炎に焼かれて苦しめ、
じっくりと苦しんで死ね、
このクソゴキブリどもが!」
ブツブツと呟きながら、
一旦、火炎放射器のノズルを地面に置く。
そして、ヨッシーは、単身でワクワクポートに
潜入を始めた
入り口の中は真っ暗だ.....
しかし、発動した”ニーチェ的超人モード”が、
建物の中の記憶を鮮明に蘇らせる
ヨッシーは、暗闇の中、壁を背にして
ゆっくりとカニ歩きで進んでいった
ブツブツと独り言を呟く
「いいな、壁際を進んだら、
売店と発券カウンターがあって、
その裏にバックヤードがある。
そこの搬出口のカギを開けるんだぞ」
真っ暗な中、手探りで売店の中を進み、
やがてドアにたどり着く。
ドアを開けてバックヤードに入ると、
ヨッシーはようやくポケットから
小さなライトを取り出した。
バックヤードは狭く、ポケットライトの光が
すぐ近くの金属製のドアを照らす。
それは、”業務用の出入り口”だ
表にある一般の広い出入り口は、
鉄格子状のシャッターで閉められている。
故に、この金属製ドアは、今の所、
唯一の外へ出る手段だった。
内側から施錠しているサムターンを回し、
ドアを開けるヨッシー
.........
外には、マッシュルーム眼鏡とリサとスミレが
待ち構えていた。
マッシュルーム眼鏡は、火炎放射器の
ノズルを持っている。
リサは、ステンもどきサブマシンガンを
持っていて、スミレも何やら小型の拳銃を
持っていた。
ふと、微風がかすかな悪臭を運んでくる
ヨッシーは、目の前のマッシュルーム眼鏡に
小声で言った
「お待たせしました!
マッシュさん、このドアの先には
細いバックヤードがあります。
いいですか、
ここから入って”左手にあるドア”が、
発券カウンターに続いています。
ちなみに、右手のドアは売店に続いてます
でも、発券カウンターの目の前には
2階への階段があるので、
そこへ行ったほうがいいですね」
マッシュルーム眼鏡が答える
「了解した!入って左手のドアだね。
火炎放射器で2階を攻撃後、僕はすぐに
そのドアから発券カウンターに向かうよ」
ヨッシーが言った
「了解です、俺は今から、一階の待合室を
一応確認してみます。
誰も居なかったら、計画通り、一斉に2階を
攻撃ですね。
では、お互いに頑張りましょう!」
マッシュルーム眼鏡の後ろで、リサとスミレが
ヨッシーに向けてガッツポーズを作った。
ヨッシーもガッツポーズを返した
そして、再びドアを閉めると、
左手にポケットライトを持ちながら
右手で膝ポケットを探った
取り出したのは、短銃身の警察用リボルバー
ポケットライトを照らしながら、ヨッシーは
バックヤードを出た
「海賊どもは、2階でドンちゃん騒ぎを
していた。
そのまま、居心地のいい2階に居るはずだ
わざわざ、寒い1階で寝ることはなかろう」
そう、2階には、食堂と
畳部屋の休憩所付きのスタッフルームがある
皆の予想では、奴らはそこでスヤスヤと寝ている
はずだ.....
店を通り過ぎて、広い待合室を照らす
隅っこに積み上げられた長椅子、ポスターの
張ってある柱、2階への階段....
やはり、誰も居なかった
ヨッシーは、ニヤリと口角を上げた
そして、
リボルバーを再び膝ポケットに仕舞うと
独り言を呟いた
「よしっ、計画通りに事を運べる。
最高の殺し方が出来るぞ!」
禁断の喜びがヨッシーを包み込む....
”ドライオーガズム”がすぐそこに待っている
渡り廊下に戻ると、
サブマシンガンを持ったリナが言った
「ちょっとヨッシー、
その壮絶なニヤニヤ顔、超気持ち悪いってば!
....それで、これからヤルの?」
ヨッシーは、あわてて真顔に戻って頷いた
地面に置いている火炎放射器のノズルを取る
そして言った
「それじゃあ、始めてくれリナ、
的を外すなよ!」
ついに、
『ワクワクポート襲撃』が開始されたのだった
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リナは、2階の大きな窓に向けて
サブマシンガンを掃射した
ズダダダンッ!!!
即座に、陸側のほうからも
同じ斉射音が聞こえる
ガシャーーーンッ!!
2階の窓は粉々に砕け散って、
大きな穴が開いた
11.5ミリの弱装&ダムダム弾は、
窓ガラスを割るのに最適な弾だ。
これが、もっと高初速で小口径のライフル弾や
9ミリパラペラムだとこうはいかない。
窓に衝撃を与える前に、貫通してしまうのだ。
つまり、
周囲にヒビを入れた小さな穴が空くだけなのだ
しかし、低初速で大口径、
しかも着弾と共に弾頭が広がるダムダム弾は、
まさに窓に連続して撃ちこまれるハンマーだ
こいつで強化ガラスを割ることができるのは、
ムケチン作戦本部でも実験して証明されていた。
海側では、展望デッキの窓ガラスを
割ることに成功した!
陸側でも、スタッフルームの窓ガラスが
粉々に砕け散ったのだった
ヨッシーは、
2階の割れた窓ガラスの大穴に向けて
火炎放射器のノズルを構えた
自然に雄叫びが出る
「行くぜ、レッツパーリィーーーー!!!」
引き金を引くと、『ナパームB』の
粘着性のある液体が勢いよく飛び出した
その奔流は、割れた窓ガラスの大穴から
中に向けて飛びこんでいった
そして1秒後......
燃え盛る炎が一直線に伸びていき.....
ワクワクポートは、ふいに真っ赤に光り輝いた
「最高です....」
赤く照らされたヨッシーの顔は、
恍惚に満ちていた。
目前の炎の熱気でこちらも燃え尽きそうだ......
ヨッシーの後ろでは、リナがあまりもの熱さに
両手で顔を覆っている
しかし、ヨッシーは違った
彼が感じているのは、神社の時と同じく、
全身の細胞が1万倍の射○を行っているような、
最強の”ドライオーガズム”だった