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威嚇


「ま、ヒーコーやツースイーには

 かなわないけどさ....

 確かに、このトーポーのドンウーも

 まあまあだったよな」



そう言うと、プリンスは

窓から顔を背けて室内のほうを

向いてしまった。


ヨッシーには、ちらりと見えたその表情が

少し悲し気に見えた。


窓から見える景色には、

彼が受け継ぐはずだった

水産加工場の廃墟も見えてしまうのだ


窓から外の廃墟を見ていると、辛い現実に

押しつぶされそうになる


ヨッシーも窓から顔を背けて

室内のほうを見渡した。

眼前にあるのは、

お世辞にもおしゃれとは言えない食堂



「漁港うどん....350円」


「白身フライ定食....680円」


「おにぎり(3個)....250円」



メニュー表を見ているだけで

涎が出てきそうだ


ふと、ユッキーが言った。

彼女は16歳でふくよかな体型の少女だ



「そういえばリナちゃんとリサちゃん、

 あなたたち、かなり刺激的な恰好じゃない?

 ヨッシーの視線が嫌らしくなかった?」



ハッとしてメニュー表から目を反らし

自分たちの恰好を確認する双子姉妹


即座にプリンスが同調した



「そうだ、ヨッシーの犯罪匂漂う目つきで

 ねめまわすように見つめられていたに

 違いない!

 なんと、許されざることよ」



今更だが、リナとリサは、競泳水着の上に

Tシャツ一枚だけを羽織った姿だった。

2人は、今のところ子供たちの中で唯一の

潜水漁の継承者なのだ


ふくよかな体型のユッキーと、ウェーブした

ロン毛のプリンスに厳しい視線を向けられる

ヨッシー


そして、実際に後ろめたさがあるヨッシーは、

ただただたじろぐばかりで反論ができずにいた


しかし、意外なことに

リナがヨッシーの前に立ち塞がって言った



「ちょっと、ヨッシーはね

 今日、取水場の人型を倒したのよ!

 一応、ちゃんと役に立ってるんだからね」



その言葉に、プリンスとユッキーの顔が曇った



「人型が?」


「あの取水場に人型が出現したの?」


 

と、リナの背後で、リサが小声で言った



「お姉ちゃん、船からジャージのズボンを

 取ってこようよ....

 多分これから冷え込むと思うし」



////////////////////////////////////



午後5時になると、日もだいぶ傾いてくる。

もはや照明も付かないこの場所では、

日没の後は完全な闇に包まれることだろう


わくわくポートから突き出した

浮桟橋には、4隻もの船が接岸していた


そのうちの3隻は、「つぎはぎ丸」を含め、

「島」で造られた木造の機帆船。

そして1隻は、小型のフィッシングボートだ。

オープンの操縦席に、

船尾にはガソリンエンジンの船外機を

付けている


ジジイは、子供たちを招集した


子供たちは全部で9人、

機帆船で大人たちから漁業を教わっている。

リナとリサの双子姉妹以外は、全員が

漁港町出身の顔見知り同士だった


彼らが居るのは、建物の2階の食堂の隣にある

スタッフルームだ。

パソコンや電気機器などは

「島」の連中が持ち去っていったために、

中はがらんどうとしている


そこには、連絡船や食堂のスタッフの

休憩のために広い畳部屋があった


その畳部屋の小さなちゃぶ台の上に

タブレットPCを置いて、それをジジイと

子供たちが囲んでいる


ジジイが言った



「あの3隻の不審船が動きを見せた...

 とりあえず皆、落ち着いてこの映像を

 見てくれ」



ジジイは、島から送られてきた動画ファイルを

再生した。

子供たちが、ちゃぶ台の上に寝かせて置かれた

タブレットPCの画面を一斉に覗き込んだ


まず最初の動画は、漁船と水上交通船が

徐々に島の近くににじり寄ってきている

映像だった


水色や黄色のツートンカラーの派手な船だ


映像編集によって、2隻の船の動きは

しばらく倍速再生され、

やがて、横を向いた漁船のアップになった


漁船の甲板に数人の人影が見える


そして、その人影はこれ見よがしに

手に持った銃らしきものを掲げていた



「この後、あの2隻は、しばらく島の周囲を

 巡回したそうだ。

 徐々に島との距離を縮めながらな。

 おそらくは、我々の防衛能力を

 確認していたんだろう

 

 残念ながら、俺達には数キロ先の敵を

 攻撃できるような武器はない。

 島にあるのは、数丁の猟銃と、警察用の拳銃

 と、後はお手製の武器だけだ」



「ちなみに、連中が持っている銃は、

 AKとFN-FALとかいう

 軍用ライフルらしい。

 持っている武装と、日本には見られない

 船のカラーリングから察するに...

 多分、日本人じゃないだろう...

 遠目にはアジア系の外見に見えるが」



ジジイは、ため息をついて別の動画を再生した



「そして、俺達には反撃する手段がないと

 判断した奴らは、ついにやりやがったんだ」



それは、島の浜から手持ちのカメラで

撮影されているみたいで、映しているのは

遠くの沖に見える底曳網漁船だった


あの、ボフォース57ミリ砲を積んでいる船だ


船はこちらに船腹を見せている。

つまり、横向きになっていて、

本来はウィンチがある中心部分に

かすかに丸っこい砲塔のようなものが見える



ズバアアン!!!



唐突にすさまじい轟音が響いた


カメラが大きくブレて、映像は、しばらく

地面の砂浜を映した後、陸地のほうに向いた。


浜にポツンと建っていた木造の小屋が、

炎に包まれている....



「あれは、イワシで造った肥料を

 保管していた小屋だ。

 幸いにも、小屋の中にも周囲にも

 人は居なかった


 今のボフォース57ミリ砲ってやつは、

 アレを分速200発、つまり1秒に3発くらいの

 連射速度で、17キロも飛ばせるらしい


 要するに、俺達を遠くから一方的に

 壊滅させる力を持っているってわけだ」



ついに、プリンスが口を開いた



「でも、小島さん、あいつらは

 何かを要求するために

 威嚇行為をしているんでしょう?


 島を壊滅させるのが目的だとは思えません!

 おそらくは、武力を背景に

 我々から物資などを

 差し出させるつもりでしょう

 

 あいつらから、何かメッセージを

 受け取ってないんですか?」



ジジイが答えた



「当然そうだろう。ああ、威嚇砲撃の直後、

 島の『観光ホームページ』の掲示板に

 書き込みがあったんだ


 それも、恐ろしいほど酷い”日本語”でな」







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